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「鴗(立+鳥 かわせび)」別名「魚狗、天狗、水狗、魚虎、魚師、翡翠鳥、和名ソビあるいはショウビ」として、「中国の本草綱目*によれば、鴗は各地の水辺にいる。大きさは燕くらい。くちばしは尖って長く、足は紅で短い。背毛は翠色に碧を帯びている。翅毛は黒色に青が浮き立って見え、女人の首(かしら)の飾り物とする。本性、よく水上で魚を取る。この鳥は魚を害するために、狗とか虎とかの名がついた。」とあり、更に「肉は鹹(塩からい)、腸を除いて黒焼きにして食べれば咽に刺さった魚骨を除く事ができる」とする。「女人のかしらの飾り物」とは前節に述べた鳳冠のことであろう。(*李時珍撰 初版 金陵万暦 18年(1596)刊)
また、『大和本草』(貝原益軒 1709年刊)でも、「其肉は腥(なまぐさ)し食すべからず」としながら、「黒焼にて魚骨骾(骨+更 のどに刺さる硬い骨)を治す。煎服すべし」とある。
この薬効については、中国の本草書から得た知識をもとにして江戸時代初期につくられた『和歌食物本草』にも
○かはせみは魚の骨喉に立たるに 煮て食たるも黒焼も吉(食物和歌本草 二)
○ひすいこそのんどにほねの立たるに くろやきもよし煮て食も吉(食物和歌本草 七)
の二首があり、元は中国にせよ、日本でもかなり広く流布されていたと思われる。
カワセミの肉にこんな薬効があるとは思えないが、なぜこのように信じられたのか。それはカワセミの行動に原因があるのではないかと考えられる。
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当地で見られたカワセミがよく止まるコンクリートの水門に残されたペリットを崩してみると、赤色のアメリカザリガニの殻の破片が認められた。
-続く-
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