庭のフレンチマリーゴールドの茎に,体をいっぱい伸ばして着いていた.体色が,赤い茎とは大きく違うので,擬態にはならないのではと思ったが,色の感覚が人間と違う鳥類などの捕食者には見えにくいのかも知れない.
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この奇妙な行動は古くから人の目を引き,貝原益軒『大和本草』 (1709) 巻之14陸蟲シャクトリムシ には左図の様に記されている.
また,寺島良安『和漢三才図会』(1713頃)(島田・竹島・樋口訳注,平凡社-東洋文庫)には
蚇蠖(しゃくとりむし,チッポ)
蝍 虫+就(しょくしゅく), 歩屈(ほくつ)
[和名は乎岐無之(おきむし).俗に尺取虫という〕
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化工到処入微塵 自然の化工は到る処、微塵にまで入る。
蝍㊀眇形含気均 蝍㊀の眇形も気を含んで均(ひと)し。
一屈一伸知進退 一屈一伸して進退を知り
笑他直尺枉尋人 他の尺を直し、尋(尺も尋も長さの単位。一尋は八尺)を枉(ま)げる人を笑う
とある。(右図)
㊀=虫偏に就
•小野蘭山『重訂本草綱目啓蒙』(1803-1806)巻之三十五,虫之一 卵生類上
「ウイキヤウノムシ」の項の
〔集解〕に「尺蠖ハ、ヲキムシ シヤクトリムシ スソントリムシ タカハカリ」などの地方名をもち,また文献には「 屈伸虫 屈申虫 曲曲虫」などの名で記され,「此虫夏秋ノ候、草木上テ生ジテ葉ヲ食フ。形細長ク両頭ニ足アリ。腰ヲ屈シ首尾相就テ行。ソノ状人ノ両指ニテ寸尺ヲ度ルニ似クリ。故ニ、シヤクトリムシト名ク。易二尺㋥之屈、以求(レ)信也ト云、是ナリ。小ナル者ハ一寸ニ及バズ、大ナル者ハ二三寸二過。緑色ナルモノアリ、灰色ナル者アリ、褐色ナル者アリ。皆老スレバ羽化シテ蝶トナル。」とある. ㋥=虫偏に蒦
英国で,シャクガの一種,オオシモフリエダシャク Biston betularia の白い体色を持つ種 f. typica の数が工業化に伴って減少し,黒い体色を持つ f. carbonaria が増えた現象を,大気汚染に伴う樹木の幹がススで暗くなり,目立つ白い体色を持つ種が捕食者により多く食べられたからだとする「工業暗化」の概念が提出され,進化論の中の「自然選択」を強調して説明する時に引用された.詳しくは Wikipedia の「工業暗化」の項.
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