2010年10月16日土曜日

アマクリナム’ドロシーハンニバル’

X Amacrinum ’Dorothy Hannibal’南アフリカ原産の「アマリリス・ベラドンナ (Amaryllis belladonna) ホンアマリリス」と「クリヌム・ムーレイ (Crinum moorei ) ハマユウを含むハマオモト属」との属間交雑種なので名前もアマクリナム.その園芸種の一つ.
9月から110月ごろ,70センチほどの花茎を伸ばして散形花序をつける.花序ははじめ苞に包まれていて,開花時にはこの苞は紐の様に下に垂れ,花には芳香がある.ヒガンバナと同様に花の咲く時期には葉が見られないので,この類の“Naked lady”の別称もうなずける.花後,根元につやつやとした幅広い剣状の束生する葉を伸ばす.

色に品がないので家内にはあまり評判が良くないが,花の少ない季節に咲き,花期は長く,密植すると花束のように華やかで人目を引く.



おまけは米国 Indiana 州 Seymour の Dan-san から送ってもらった,彼の家の花壇に咲くナデシコの仲間.多分ビジョナデシコ(Dianthus barbatus 英名 'Sweet William')の品種,他にピンクの剣咲きのバラも咲いているようだ. 秋の Seymour もいいだろうな.


2010年10月14日木曜日

コスモス "イエローキャンパス"

Cosmos bipinnatus cv. ‘Yellow Campus'
心中をせんとて泣ける雨の日の白きこすもす紅きこすもす  与謝野晶子

コスモス(オオハルシャギク)はメキシコを中心とした中南米及び北米南部原産.図譜(銅版手彩色)を左下に示した Curtis “Botanical Magazine 1813” によれば,欧州では 1789年の10-11月にマドリッドの王立植物園で開花,1791年に A.J.Cavanilles によって記載された.また1812年にメキシコから英国にもたらされた種子からボイトンで咲いた花を元にこの絵が描かれた.
日本では,文久二年(1862)12月遣欧使節が持ち帰った250種に及ぶ種子類の1つにあった.

コスモスの花色といえば,栽培が開始されてから約150年間は,野生原種の花色である桃色,白色に加えて深紅色,およびそれらの組み合わせ模様からなる発色に限られてきた.ところが一人の日本人の遺伝・育種学者による変異体の発見,および根気強い育種学的研究と農学教育の継続が,世界で初めての黄色コスモスをわが国において誕生させることになった.その人が佐俣淑彦(よしひこ)博士(1919-1984)である.

1957年,当時研究に使用していた東京大学田無農場において,紅色の八重咲きではあるが花弁の一部が黄色である1株の変異体を発見し,この黄色を,一重咲きコスモスへと取り込む実験に着手した.佐俣博士は1984年6月に逝去したものの,その遺志は教授を勤めていた玉川学園の研究者に受け継がれ,30年後(春と秋の選抜で,約60世代後)にあたる1987年に,世界初の黄色コスモスが「イエローガーデン」の品種名で登録された.しかし,次第に形質の退化が見られるようになり改良した結果,1998年にはさらにはっきりとした黄色の品種として「イエローキャンパス」が作られた.他にも玉川大学では,オレンジがかった「オレンジキャンパス」,クリムゾンと黄色の色素が重なった「イエロークリムゾンキャンパス」,濃い赤色の「ディープレッドキャンパス」が開発されている.

なお,黄橙色,鮮黄色,濃赤色等の花を咲かせるキバナコスモス(Cosmos sulphureus )は葉の形が異なる別種で,Cosmos bipinnatus との間では種を作らない.最近はチョコレートコスモス (Cosmos atrosanguineus) や,属が異なるウィンターコスモス(Bidens laevis センダングサ属)も園芸店で入手できるが,これらには秋桜の別名が似合う Cosmos bipinnatus の優雅さがない.

昭和記念公園などの花畑がまだ有名でない10年ほど前に一度,サカタから購入した種から育てて,道行く人に珍しがられた.画像の花は,昨秋近くの花壇の種をいただいて今春播いて育てた.猛暑で水切れのせいかあまり勢いはよくないが,花の色はきれい.

2010年10月12日火曜日

アオマツムシ(メス)

Truljalia hibinonis 8月下旬から現れ,オスは木の上で「リー・リー」と高い声で鳴く.一生を木の上で送る.中国南部が原産地といわれる外来種.日本での初記録は1898年(明治31年)とも,1917年に東京で発見されたとも言われる.その後戦災で樹が減ったためか,アメリカシロヒトリ防除のための殺虫剤散布のせいか,一時減少したが,その後自動車のただ乗りを利用して,どんどん棲息範囲を広げている.

原産地中国の「王朝網絡 (http://tc.wangchao.net.cn/bbs/detail_636434.html)」によると
アオマツムシの中国名は「梨片蟋」又は「金鍾、天蛉、綠蛣蛉、銀琵琶」.主要分布地は中国南部,インド、フィリピン、日本、ベトナムで,

此昆蟲是一種森林性蟲類,喜棲息于高大的樹木上,常停留在樹枝上高聲鳴叫,不論白天、黑夜其鳴聲都婉轉動聽,叫聲如“句—句、句、句,句.....”一般是4聲一組,第一聲教長,後3聲短促,常常不停的重複著這種調門鳴叫著。其鳴聲高亢清脆,音色比蟋蟀美。

と樹上に住み夜に鳴き,鳴き声はコオロギと肩を並べるほど美しいとしている.“句—句、句、句,句.....”は ” りーり,り,り,り ”と読むべきか.


庭から家に入りこんで壁に留まっていた.背中の網目模様(翅脈)を見ると、かなり規則的なのでこれは雌.道理で鳴かなかった.
アオマツムシの存在に最初に気がついたのは都心近くの街路樹から聞こえてくる鳴き声.頭上から降り注ぐようだった.茨城県南部の当地ではこの数年来.庭の下草からはコウロギの声がきこえ,住み分けているようだ.夜も更けて気温が下ると鳴かなくなる.熱帯産で寒いのは苦手か.

2010年10月9日土曜日

ミズヒキ

Antenoron filiforme
わが二十 町娘にてありし日の おもかげつくる水引の花   与謝野晶子

「考えてみれば,こんな小さな花を観賞栽培する国は,日本をおいて,まずない」(湯浅浩史).
ヒマラヤ,中国南部と朝鮮半島、そして日本列島へと分布している多年草。長さが四〇センチ以上にもなる花穂に、点々と長さ2-3㍉の濃紅色の小さな花がならぶ.花に花弁はなく,四枚の蕚片と四本の雄蕊に囲まれた二花柱の子房からなりたっている。蕚片は上の3枚が赤く,下の1枚が白く,花穂を上から見下ろすと赤く,下から見上げると白いので,紅白の水引に喩える.

室町時代以前の書籍でこの草ににふれたのは知られていないが、雪舟の弟子で十六世紀の始めに活躍した長谷川等春の代表作『花鳥人物図』には描かれているとのこと.
江戸時代には多くの文献に記述され

貝原益軒『大和本草』 (1709)  「海根」が「水引」にあたると記していて,種が出来ても落ちない蕚片を花と同一視している(左図,右).

寺島良安『和漢三才図会』(1713)(左図,左)

伊藤伊兵衛『広益地錦抄』(1719)巻之五 薬草五十七種 では
「海根」 田野に多く生ス葉毛蓼の葉に似大キく中に黒点少有花ほそながく二尺ばかりくれない穂のごとく也草花に水引草と云 とあり図(右図)も添えられている.

小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1803-1806) 巻之十二 草之五 では
「海根」  詳ナラズ。
ミヅヒキサウニ充ル古説ハ穏ナラズ。其水引草ハ一名ハイトリグサ、汝南圃史二載ル所ノ金線草、一名重陽柳ナリ。山野二多ク生ズ。春、旧根ヨリ苗ヲ発ス。葉互生ス。形土牛膝ノ葉二似テ、長大ナリ。面背トモニ短毛アリ。苗高サ一尺許、秋二至テ茎頭及葉間二一尺余ノ細紅茎ヲ抽テ、極小ノ深紅花、稀二綴リ、ミヅヒキノ状ノ如シ。又白花モアリ、ギンミヅヒキ卜云。紅白雑ルヲ、ゴシヨミヅヒキ卜云。一種葉ノ中間黒斑相対シテ墨記草(イヌタデ)ノ如ク、八ノ字ノ形二似タルモノアリ。八幡水引卜云。又一種長葉ノモノアリ。又チャボミヅヒキアリ。矮茎短穂、地ニッキテ生ズ。

と何れも本草の「海根」がミズヒキに当たるとしている.

しかし現代の中国では「海根」とは言わないようで,金線草 九龍盤 水引草と呼び,乾燥した全草は根が赤くなることから「朱砂七」として薬用に用いている.

庭に野趣を与えるが,根を張り大株になる困り者になった.また思わぬ所から芽生えるので不思議に思っていたら,ミズヒキの戦略に乗って私たちが種を拡げていた.

長田武正著『野草図鑑 8 はこべの巻』 に
果実の柄には関節があり,さわるとここで切れて果実がぴんぴんととぶ。さらに花柱の先はかぎ形に曲がるので,動物体にひっかかって運ばれる。
とある.

2010年10月7日木曜日

アオジソ

Perilla frutescens var. crispa f. viridis
青紫蘇の花に蜜蜂集ひ来てつぶらむらさきほろほろ散るかも 中 勘助


日本では生食や天ぷらにアオジソを使うので,「オオバ」の名で野菜としてスーパーなどで売られているが,韓国や,紫蘇の原産地の中国では紫のシソが主流.中国ではシソを以下の様に細かく分類し,日本では青紫蘇が刺身などに添えられていることを特筆している(維基百科,自由的百科全書).
· 回回蘇(カイカイソ,huihuisu)Perilla frutescens var. crispa
  · 紅皺紫蘇 Perilla frutescens var. crispa f. atropurpurea
  · 皺紫蘇 Perilla frutescens var. crispa f. crispa
  · 斑紫蘇 Perilla frutescens var. crispa f. rosea
  · 紅紫蘇 Perilla frutescens var. crispa f. purpurea
  · 青紫蘇 Perilla frutescens var. crispa f. viridis
  · 青皺紫蘇 Perilla frutescens var. crispa f. viridi-crispa

江戸時代の本草書には紫のシソだけしか記載されていない.その内容はほぼ同じでたとえば『広益地錦抄』 巻之五 薬草五十七種の「紫蘇」では
若葉はへ出てより料理にす葉おもてむらさきうらうす白くしらけたる悪敷両面共に紫紅にしてあつくちりめんのごとくにしぼあるを上とす葉茎實共に薬種に用
とあり,葉の両面が紫のものを上品としている.

紫のシソの主な色素は、アントシアニンでその70%程度がマロニルシソニン.アオジソにはその色素はほとんど含まれない.東京生薬協会のHP 『常用和漢薬集』 の ソヨウ(蘇葉)[紫蘇葉] には
漢方処方用薬:去痰・鎮咳・健胃・発汗・解熱・解毒(抗アレルギー)作用があり、感冒、気管支炎、神経痛、不眠、魚蟹中毒の嘔吐腹痛の薬方に配合される。通例、アオジソ、チリメンアオジソは使用しない。 とある.

アオジソは戦後に岡山近辺から出荷されてから一般的になって,西日本の一部では「青蘇(せいそ)」とも言われている.確かに青蘇は黒白鳥の様に矛盾している.

庭ではこぼれ種で毎年生えてくるが,抜くのを忘れるとかなり大きく頑丈になり根を張る.そう大量に消費するものでもないので,ほんの数本を残して除去.

2010年10月5日火曜日

サルビア・コクシネア “Lady in red”

Salvia coccinea cv. “Lady in red”Salvia coccinea はメキシコ原産.そこから中央アメリカや合衆国南部に拡がった野草で,米国ではTexas sage, scarlet sage, tropical sage, blood sage と呼ばれている.Salvia coccinea の品種としてはLady in Red の他に白花の‘Snow Nymph’,花の上側が白に近い薄ピンクで下側がサンゴ色 (coral-pink) の‘Coral Nymph’ があるが,赤色の‘Lady in Red’ が原種に近そう.一般にサルビアといわれているサルビア・スプレンデンスとは異なり,ガクは小さく緑色で観賞価値はないが,花は繊細で女性的.一個一個の花の寿命は短いが下から順に咲きあがるので,美しい時期は長い.米国南部での野生種はハチドリの蜜源として知られ,また中国での名前はいかにも漢字の国らしく「朱唇」.


10年以上前,’Lady in Red’ , ‘Snow Nymph’ と ’Coral Nymph’ を種で購入して育てた.それから毎年数個体がこぼれ種で開花.現在では ’Lady in Red’ と ’Coral Nymph’ が細々と花をつける.
右は育種一年目の様子.手前の赤色の繁みは紅葉したコキア(ホウキグサ). 右の赤い小さな花はセンニチコウ”ストロベリー・フィールズ”





おまけはインディアナ州の友人 Dan-san の息子さん,Michael-kun の動画(YouTube)へのリンク.学校の環境クラブ(Habitat club)でオオカバマダラを育て,放蝶した場面("Freedom of a monarch".).ベースボールだけでなく,自然への興味を持っていてくれてうれしい.大きくなった.お父さんに似てハンサム.

2010年10月4日月曜日

タコノアシ

Penthorum chinense 日本のほか東アジア一帯に分布.湿地や沼,休耕田など湿った場所に生育していて,そう珍しいものではなかったが,生育区域の開発と,同じような環境を好むセイタカアワダチソウとの生存競争に負けたためか,多くの県で絶滅危惧2類に指定されている.国のレッドデータブックによると総個体数約6万で,100年後の絶滅確率は約2%,約300年後には絶滅すると予測されているが,最近整備された湿地に一気に繁殖した光景もみられた.

草丈は1mほど,秋に放射状に数本に分かれた茎に薄緑色の丸い小さな花をつけ,上から見ると吸盤のついた蛸の足のよう.晩秋になるとさく果が熟しまた全草が紅葉し,ゆで蛸のようになる.中国では扯根菜 che gen cai と呼び,若葉を食用とするとの事.

里山として保存活動をしていた水田の水路に生育していた個体の種をバケツに播いたら発芽.順調に成長し,花も咲き,結実.落ちた種からの発芽率は良いようだ.
左:水路に成育している個体の花
右:晩秋の湿地でのゆでダコ