2016年6月23日木曜日

マルバアサガオ-7 条斑点絞咲き,トランスポゾン,曜斑点咲き(ミルキー・ウェイ),花色の変化.

Ipomoea purpurea
2016年6月21日 同じ株から異なった模様の花が咲く
昨年の秋に,茨城県南部の廃屋と,千葉県のフラワー・パークの垣根から採取した種から成育した,マルバアサガオが咲きだした.前者は紺の条斑点絞咲き,後者はミルキー・ウェイという栽培種と思われる(下図,下側).成長速度は速く,草丈は2メートル以上になり,脇芽も多くでてよく茂る.グリーンカーテンとしてはよいが,葉の大きさの割には花が小さい.一つ一つの花は個性的で,特に曜斑点のあるミルキー・ウェイの花は可憐なので,もっと花が大きければと残念である.(葉:最長径 20 cm,花:径 6 cm 程度)

条斑点絞咲きの花の模様は,別株では勿論,同じ株の中でも,一つ一つ模様が異なる(上図).これは,トランスポゾン(動くDNA(あるいは動く遺伝子)と呼ばれる)の作用の結果であるとされている.即ち,花弁を発色させるアントシアンを合成する過程の一つの遺伝子にトランスポゾンが入っていると,発色に必要な酵素が生合成できず,花弁は白い地色になってしまう.そのトランスポゾンが飛び出す(脱離)と遺伝子は正常に戻り,酵素が合成され,色のついた細胞ができる.トランスポゾンが飛び出す時期により,色つき細胞の数が変わり,条斑模様の形や大きさが決まってくる.このような仕組みで,マルバアサガオに多様な条斑点絞模様が発現する.小さな条や斑点が鮮明に出るところが,マルバアサガオの条斑点絞り(flaked)の園芸価値が高い点だそうだ.

経時的花色の変化    上:紺の条斑点絞咲き, 下:ミルキー・ウェイ
マルバアサガオの花弁の青紫色は,経時的に赤紫色に変化する.これは紺の条斑点絞部分,ミルキー・ウェイの曜斑点でも同様である.前者でも,耀の部分から変色が始まる.アサガオの花色の「青→赤」の経時変化は,時間と共に色素を含む細胞の pH が酸性側に傾くためと説明されているが,代謝物の蓄積によるのか,空気中の炭酸ガスの作用なのかは,検索では確認できなかった.

吉田久美(椙山女学園大学生活科学部助手)さんの「アサガオの花はなぜ青くなるのか?」季刊誌「生命誌」通巻16号 には,
「ソライロアサガオ(Ipomoea tricolor )の一品種のヘブンリーブルー(cv.Heavenly blue)は,つぼみの時は赤紫色で開くと青色に変わり,数時間後にしぼむとまた赤紫色になる。そこで,細胞に直接刺し込んで測定する微小pH電極を用いて,1個の液胞のpHを測定したところ,空色の花びらの液胞pHは約7.7と異常に高く,赤紫色のつぼみの花びらのpH6.6とそれより低い.これにより,アサガオの花色は液胞pHの変化により移り変わることが実証できた。花びらが青色になるには,pHの変化以外にも重要なことがある アサガオの液胞pHの変化は,液胞膜を介した水素イオンやカリウムイオンなどさまざまなイオンの輸送により調節されているものと考えられる。」とある.https://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/016/ex_2.html

また久富恵世さん(総合研究大学院大学)の博士論文には,『絞り花を咲かせるアサガオとマルバアサガオの色素生合成系遺伝子と可動遺伝因子』 1997,(info:ndljp/pid/3142635)がある.

マルバアサガオ-6 蔓の巻き方.太陽の運行方向,グッドイヤー,パーキンソン,トーマス・ジョンソン,ダーウィン,方以智「蔓艸皆左旋」,貝原益軒「蔓草ハ皆左旋ス」 

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