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寺島良安『和漢三才図会』(1713頃)の「瞿麦」の項には「藤瞿麦」として絵と共に「藤瞿麦 茎は太くて高さは一尺余。葉は厚く、形は匙首(さじのあたま)に似ていて深青色、節を抱えて二つずつが対生する。花は数朶(ふさ)から成って小さく、形は桔梗に似て、白く紫を帯びている。萼は長くて浅青色をしている。」(現代語訳,島田勇男ら,1987年)とあり,葉が厚く,花が総状についているとの特徴が記されている(左図).
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橘保国『絵本野山草』(1755)の第三巻には見事な挿絵が載せられ,「藤撫子 五六月,花有 葉、川柳のはに似て、あつく、つや有。花に、紫、白、二色有。花びら五つ、はのうへに、すゞなりにさく。又、浜なてしこといふ。」と,白い品種があることが添えられている(右図).
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学名をつけたのは,リンネの弟子で 1775 - 76 年に出島の医師として日本に滞在していたカール・ツンベルク(1743 - 1828)で,彼の『Flora Japonica (日本植物誌)』(1784)に絵と共に,「日本ではナデシコ或いはセキチクと呼ばれている」「花序は総状」と記し,Dianthus japonicus と命名した(左).
学名を直訳すれば日本ナデシコ.花の優雅さでは「カワラナデシコ(やまとなでしこ)」に劣るものの,その海浜の厳しい環境に負けない生命力とスタミナ,そして多く花が輝くところは,女子サッカーチーム「ナデシコ・Japan」の名にふさわしいかも知れない.
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