『万葉集』にはナデシコを詠った歌が26首収載され,その多くは大伴家持の作.如何に彼がこの花に愛着していたが分かる.彼の「吾屋外尓 蒔之瞿麦何時毛 花尓咲奈武 名蘇経乍見武 我がやどに蒔きしなでしこいつしかも花に咲きなむなそへつつ見む」は観賞用草花を種から育てた最初の記録として残っている.
有名な山上憶良の秋の七草の歌「芽之花 乎花葛花 瞿麦之花 姫部志 又藤袴 朝皃之花 萩の花、尾花(をばな)、葛花(くずはな)、なでしこの花、をみなへし、また藤袴(ふぢはかま)、朝顔の花」でも知られる.
また 1001年 長保3年頃に成立した『枕草子』にはからなでしこ(石竹)と共に名が出て,「やまとのもいとめでたし」と,その可憐で繊細な美しさが賞されている.
(四二段) (前略) 少し日たけたるほどに、三位中將とは關白殿をぞ聞えし、(中略)細塗骨など、骨はかはれど、ただ赤き紙を同じなみにうちつかひ持ち給へるは、瞿麥のいみじう咲きたるにぞ、いとよく似たる。(後略)
(七〇段) 草の花は 嬰麥(なでしこ)、唐(から)のは更(さら)なり、やまとのもいとめでたし。(後略)
(一一九段) 繪にかきておとるもの 瞿麥(なでしこ)。さくら。山吹。物語にめでたしといひたる男女のかたち。(後略)
(一五五段) うつくしきもの (中略) かりの子。舎利の壺。瞿麥の花。
おまけはカワラナデシコの母種,エゾカワラナデシコ Dianthus Surperbus の図譜
W Curtis “Botanical Magazine” (英)1795年 銅版手彩色
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