Davidia involucrate
2015年11月 |
庭のハンカチノキは,五月に 200 個程の花が咲き,観察に適した低い枝にも果実がついた.多数の果実が大きく成長し,大部分は台風の余波の強風で落果したが,現在でも初冬の空に丸い実を鈴のように掲げている.
5月に受粉した両性花は苞が落ちる前に子房を成長させる①.苞が落ちた後も花柱と花糸はしばらく残る②.果托には,二つの果実がついてもよいように,偏って実がついているように見えるが,見た限りではひとつ以上の果実がついている様子はない.花糸が落ちた後,花柱の尖端から糸状の付属物が出ている果実がある③.
6月には,ある程度,実は大きくなるが,まだ全体に柔らかく,内部の種子もカッターで,簡単に切れ,青リンゴのような匂いがする④.放置すると,果肉が黒く変色する⑤.塩水中に入れておくとこの変色の進行が抑えられることから,リンゴと同様に,ポリフェノール酸化酵素が,果肉や果汁の中に含まれていたポリフェノールと空気中の酸素と反応を触媒し,重合物を作ると考えられる.実際に損傷を受けた実の傷口が真っ黒になっていた⑥.
越前町立福井総合植物園プラントピアの園長さんは実際に食べてみたそうだが,その感想は「果肉は若いナツメの果実のような爽やかな臭いがします。ガブッとやると…味はまじいです。すっぱ渋い、イタドリの茎の味に似てますが、もっと我慢できない刺激があります。『この味は…シュウ酸では?』」とのこと.
10月には,種(核)は大きく硬くなり,果肉は薄くなる.硬くていかにもまずそうな果肉だが,園長さんのように勇敢な毛虫⑦がこの果肉をかじっていて,なかの種子(核)があらわになっていた⑧.このような損傷を受けた果実は少数で.ポリフェノールは十分にその防御の役目を果たしていたようだ.落ちた果実を集めると,大きな皿に山盛り一杯⑨.本当に食べる事ができればいいのに.
葉は,秋の終わりの強風で,殆んどは緑のうちに,少数が茶色になって落ちるが,ごく少数ながら紅色や黄色になって落ちる(左図).全数がこの色になれば見事だろうとは思うが.残念.
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