2016年3月22日火曜日

款冬,フキタンポポ-1/3 中国本草書,神農本草經,金匱要略,神農本草經,本草經集注,新修本草,本草圖經,周憲王救荒本草,本草綱目,三才圖會,植物名實圖考

Tussilago farfara
1978 June Berner Oberland
款冬(カントウ,クワンタウ)は,古代から中国・欧州では薬草,特に鎮咳剤として用いられていたが,日本には原産していなかった.そのため,中国の本草書に準拠した日本の本草では,これを「フキ(蕗)」と誤比定し,さらには,和名を「山に生える蕗-やまぶき」としたことから,ヤマブキ(山吹,Kerria japonica)=款冬が一般化し,特に歌人たちがこの字を用いた.また,冬に耐えて黄色い頭状花をつけるという記述から,ツワブキとされ,款冬の一名,橐吾が当てられたこともあった.

「款冬=蕗」は,江戸時代から本草学者の間では疑問とされていたが,牧野富太郎博士が,白井光太郎監修『頭註国訳本草綱目』(1929)の「款冬」の項で,この植物は Tussilago farfaraであると喝破し,和名を「フキタンポポ」とすることを提案した.博士はまた,黄色いこの花が極早春に葉を出さずに咲くことから,フクジュソウの代りに春を告げる鉢植えとして有用であると予言した(後続記事参照).1970年代にフランスから航空便で種が輸入されて,現在では年末からフキタンポポの鉢植えが新年を寿ぐ花として売られている.

中国の伝統医学は漢時代(206 B.C. – 23 A. D.)になり体系化され,基盤が確立され,三大古典とされているのが,『黄帝内経』『傷寒雑病論』『神農本草経』の医学書である.このような古典にも「款冬」は収載されているので,紀元前の相当古代から,呼吸器系の疾病・症状,特に咳に對する有効な薬草としての価値が認められていたと思われる.

神農本草經3卷 魏呉晉等撰[
(江戸寫) NDL
『神農本草經』は,後漢から三国の頃に成立した中国の本草書であり,神農氏の後人の作とされるが,実際の撰者は不詳である.一年の日数に合わせた365種の薬物を上品・中品・下品の三品に分類して記述している.上品は無毒で長期服用が可能な養命薬,中品は毒にもなり得る養性薬,下品は毒が強く長期服用が不可能な治病薬としている.中国正統の本草書の位置を占めるようになったが,現在みることができるのは敦煌写本の残巻や『太平御覧』への引用などにすぎない.それらを元に復元を図ったものとしては,明代の盧復,清朝の孫星衍,日本の森立之によるものなどがある.
★魏呉晉等撰,清孫星衍孫馮翼輯『神農本草經 卷二 中經 草 中品 には,「款冬花
味辛,溫。主咳逆上氣,善喘、喉痺,諸驚癇,寒熱邪氣。一名橐吾(《御覽》作石),一名顆東(《御覽》作顆冬),一名虎須,一名免奚。生山谷。
普》曰款冬,十二月花黃白(《藝文類聚》)。
《名醫》曰一名氏冬,生常山及目常水傍。十一月採花,陰乾。
《廣雅》云:苦萃,款 也。《爾雅》云:菟奚,顆 。郭璞云:款冬也。紫赤,生水中。《西京雜記》云:款冬,花于嚴冬。傳咸《款冬賦》序曰仲冬之月,冰凌積雪,款冬獨敷花艷。」とあり,花が氷雪に耐えて咲き麗しい事を記している.

★張仲景『傷寒雑病論』一部と考えられている『金匱要略』(東漢,170-219)にも「肺痿肺癰咳嗽上気病脈証并治第七
咳而上気,喉中水鶏声,射干麻黄湯主之。
射干麻黄湯方: 射干十三枚(一法三両) 麻黄四両 生姜四両 細辛 紫苑 款冬花各三両 五味子半升 大棗七枚 半夏(大者洗)八枚(一法半升)
 上九味,以水一斗二升,先煮麻黄両沸,去上沫,内諸薬,煮取三升,分温三服。」と款冬の花の処方が収められている.

『神農本草經』に改定・注釈を加えて成立した,★南朝 陶弘景(456-536)『神農本草經 卷二 中經 草 中品 には「款冬花
味辛,溫。主咳逆上氣,善喘、喉痺,諸驚癇,寒熱邪氣。一名橐吾(《御覽》作石),一名顆東(《御覽》作顆冬),一名虎須,一名免奚。生山谷。
普》曰款冬,十二月花黃白(《藝文類聚》)。
《名醫》曰一名氏冬,生常山及目常水傍。十一月採花,陰乾。
《廣雅》云:苦萃,款 也。《爾雅》云:菟奚,顆 。郭璞云:款冬也。紫赤,生水中。《西京雜記》云:款冬,花于嚴冬。傳咸《款冬賦》序曰仲冬之月,冰凌積雪,款冬獨敷花艷。」

★南朝 陶弘景『本草經集注 - 草木下品 にも,「款冬
味辛、甘,溫,無毒。主治咳逆上氣善喘,喉痺,諸驚癇,寒熱,邪氣。消渴,喘息呼吸。一名橐吾,一名顆東,一名虎須,一名菟奚,一名氐冬。生常山山谷及上黨水傍。十一月採花,陰乾。(杏仁為之使,得紫菀良,惡皂莢、硝石、玄參,畏貝母、辛夷、麻黃、黃、黃芩、黃連、青葙。)
第一出河北,其形如宿 未舒者佳,其腹裡有絲。次出高麗、百濟,其花乃似大菊花」とあり,花はキクに似ているとある.

奈良時代に日本に渡来して,宮廷で基本となる本草書として認められた★唐蘇敬等『新修本草 卷第九(659)には,「款冬
味辛、甘,溫,無毒。主咳逆上氣善喘,喉痺,諸驚癇,寒熱,邪氣。消渴,喘息呼吸。一名橐吾,一名顆東,一名虎須,一名菟奚,一名氐冬。生常山山谷及上黨水旁。
十一月採花,陰乾。
杏仁為之使,得紫菀良,惡皂莢、硝石、玄參,畏貝母、辛荑、麻黃、黃耆、黃芩、黃連、青葙。 第一出河北,其形如宿 未舒者佳,其腹裡有絲。次出高麗百濟,其花乃似大菊花。次亦出蜀北部宕昌,而並不如。其冬月在冰下生,十二月、正月旦取之。
〔謹案〕今出雍州南山溪水及華州山谷澗間。葉似葵而大,叢生,花出根下。」とある.

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★宋蘇頌『本草圖經』草部中品之下卷第七(1061)には,「款冬花
出常山山谷及上黨水旁,今關中亦有之。根紫色,莖青紫,葉似萆薢;十二月開黃花,青紫萼,去土一、二寸,初出如菊花萼,通直而肥;實無子。則陶隱居所謂出高麗百濟者,近此類也。又有紅花者,葉如荷而斗直,大者容一升,小者容數合,俗呼為蜂斗葉,又名水斗葉。則唐注所謂大如葵而叢生者是也。十一月採花陰乾,或云花生於冰下,正月旦採之。郭璞注《爾雅》顆凍云紫赤花,生水中。冰,水字近,疑一有誤。而傅咸《款冬賦序》曰余曾逐禽,登于北山,于時仲冬之月也,冰凌盈谷,積雪被崖,顧見款冬煒然,始敷華艷,當是生於冰下為正焉。
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《本經》主咳逆,古今方用之,為治嗽之最。崔知悌療久嗽熏法每旦取款冬花如雞子許,少蜜拌花使潤,一升鐵鐺中。又用一瓦碗鑽一孔,孔安一小竹筒筆管,亦得其筒稍長,作碗鐺相合及插筒處,皆面泥之,勿令漏氣。鐺下著炭火,少時款冬煙自從筒出,則口含筒,吸取煙咽之,如胸中少悶,須舉頭,即將指頭捻筒頭,勿使漏煙氣,吸煙使盡止。凡如是五日一為之。待至六日,則飽食羊肉一頓,永瘥。」とあり,数種の「款冬」の図が添えられているが,一つを除いては,カントウ(フキタンポポ)とは,認めがたい.一方,燻蒸してその煙を細管で吸引して咳を鎮めるという,新たな投与法が記載されている.

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この植物は薬用としてだけではなく,飢饉時の救荒植物ともされていて,★徐光啓輯『周憲王救荒本草』巻一1406図は和刻,茨城多左衞門等1716刊 には,「款冬花
一名橐吾,一名顆凍,一名虎須,一名菟奚,一名氐冬。生常山山穀及上黨水傍,關中蜀北宕昌秦州雄州皆有,今鈞州密縣山穀間亦有之。莖青,微帶紫色。葉似葵葉,甚大而叢生;又似石葫蘆葉頗團。開黃花。根紫色。《圖經》雲:葉如荷而鬥直。大者,容一升
小者,容數合。俗呼為蜂鬥葉,又名水鬥葉。此物不避冰雪,最先春前生,雪中出花,世謂之鑽凍。又雲:有葉似萆薢。開黃花,青紫萼,去土一二寸;初出如菊花,萼通直而肥實無子。陶隱居所謂“出高麗百濟”者,近此類也。其葉味苦,花味辛甘。性溫無毒。杏仁為之使,得紫菀良,惡皂莢、硝石、玄參;畏貝母、辛夷、麻黃、黃芩、黃連、青葙。
救饑:嫩葉煠熟,水浸淘去苦味,油鹽調食。」とある.若葉を熱して水に浸して苦味を取り,塩・油で調理すると食べられるとある.
注:鬥=鬭,鬪,闘,たたかうこと・あらそうこと

日本の本草学に大きな影響を及ぼし,本草書の金字塔とも称される★李時珍『本草綱目』草之五 隰草類下(1596)には,「款冬花 (《本經》中品)
釋名 款凍(郭璞)、顆凍(《爾 雅》)、氐冬(《別錄》)、鑽凍(《衍義》)、菟奚(《爾雅》)、橐吾(《本經》)、虎須(《本經》)。
時珍曰按《述征記》云洛水至末凝厲時,款冬生於草冰之中,則顆凍之,名以此而得。後人訛為款冬,乃款凍爾。款者至也,至冬而花也。
宗奭曰百草中,惟此罔顧冰雪,最先春也,故世謂之鑽凍。雖在冰雪之下,至時亦生芽,春時人采以代蔬。入藥須微見花者良。如已芬芳,則都無氣力。今人多使如箸頭者,恐未有花也。
集解 《別錄》曰款冬生常山山谷及上黨水旁,十一月採花,陰乾。
弘景曰第一出河北,其形如宿 未舒者佳,其腹裡有絲。次出高麗百濟,其花乃似大菊花。次亦出蜀北部宕昌,而並不如。其冬月在冰下生,十二月、正月旦取之。
恭曰今出雍州南山溪水,及華州山谷澗間。葉似葵而大,叢生,花出根下。
頌曰今關中亦有之。根紫色,葉似萆 ,十二月開黃花,青紫萼,去土一二寸,初出如菊花萼,通直而肥實無子。則陶氏所謂出高麗百濟者,近此類也。又有紅花者,葉如荷而斗直,大者容一升,小者容數合,俗呼為蜂斗葉,又名水斗葉。則蘇氏所謂大如葵而叢生者,是也。敷咸《款冬賦》序云予曾逐禽,登於北山,於時仲冬之月,冰凌盈谷,積雪被崖,顧見款冬煒然,始敷華艷,是也。
修治 凡采得,須去向裡裹花蕊殼,並向裡實如栗零殼者。並枝葉,以甘草水浸一宿,卻取款冬葉相拌 一夜,晒乾去葉用。
氣味 辛,溫,無毒。《別錄》曰甘。
好古曰純陽,入手太陰經。
之才曰杏仁為之使,得紫菀良,惡皂莢、硝石、玄參,畏貝母、辛夷、麻黃、黃 、黃芩、黃連、青葙。
主治 咳逆上氣善喘,喉痺,諸驚癇寒熱邪氣。(《本經》)
消渴,喘息呼吸(《別錄》)。療肺氣心促急,熱乏勞咳,連連不,涕唾稠粘,肺痿肺癰,吐膿血(甄權)。潤心肺,益五臟,除煩消痰,洗肝明目,及中風等疾(大明)。
發明 頌曰《本經》主咳逆,古今方用為溫肺治嗽之最。崔知悌療久咳熏法每旦取款冬花如雞子許,少蜜拌花使潤,納一升鐵鐺中。又用一瓦碗鑽一孔,孔安一小筆管,以面泥縫,勿令漏氣。鐺下著炭火,少時煙從筒出,以口含吸,咽之。如胸中少悶,須舉頭,即將指頭按住筒口,勿使漏。至煙盡乃止。如是五日一為之。待至六日,飽食羊肉 一頓,永瘥。
宗奭曰有人病嗽多日,或教然款冬花三兩,於無風處以筆管吸其煙,滿口則咽之,數日果效。
附方 新二。
痰嗽帶血款冬花、百合(蒸焙)等分為末,蜜丸龍眼大。每臥時嚼一丸,薑湯下。(《濟生方》)
口中疳瘡款冬花、黃連等分,為細末,用唾津調成餅子。先以蛇牀子煎湯漱口,乃以餅子敷之,少頃確住,其瘡立消也。(楊誠《經驗方》)

以下和訳は★『頭註国訳本草綱目』白井光太郎(監修),鈴木真海(翻訳),牧野富太郎(考定)(1929),春陽堂 による.
釋名 款凍(郭璞)、顆凍(爾雅)、氐冬(別錄)、鑽凍(衍義)、菟奚(爾雅)、橐吾(本經)、虎須(本經)。
時珍曰く、按ずるに、述征記に『洛水が歳末の甚しい寒氣で氷り詰めた時、款冬が凍つた草原の中に生えた』とある。そこで顆凍なる名称は此から来たのだが、後世になって款冬と訛ったのだ。すなわち款凍だ。款の意味は至であつて、冬の至れる時期に花がさくといふ意味である。
宗奭曰く、あらゆる草のうちで、この草だけは氷雪を顧みずして、最も春に先んずる。故に世にこれ鑽凍(さんとう)といふ。たとひ氷雪の下にあっても、時が来れば芽が生えるものだ。春季になると世人は採つて蔬菜に代へて食ふ。藥に入れるには、微し花が現れたばかりのものを用ゐるが良い。已に咲き切つては全く氣力がなくなる。今は一般に、多くは箸の先ほどのものを用ゐているが、果してまだ花が咲かなかつたものか否かが氣遣われる。
集解 別錄に曰く、款冬は生常山の山谷、及べ上黨の川の邉りに生ずる。十二月花を採つて、陰乾する。
弘景曰く第一位のものは河北に産する。その形が舊い蓴(じゅん)のまだ舒(の)びないもののやうなものが佳い。その内部には絲があるものだ。次位のものは高麗、百濟に産する、その花は大菊花に似たものだ。それに次くものは、蜀の北部、宕昌(たうしやう)にも産する、いづれも冬季氷の下に在るものの如くはないので、十二月、正月の早朝に取る。
恭曰く、今は雍州南山の溪水、及び華州山谷の谷間に出る。葉は葵に似て大きく、叢生するもので、花は根の下に出る。
頌曰く、今は關中にもある。根は紫色、葉は萆薢*(ひかい)に似てゐる。十二月黃花を開き、萼は青紫色で、土から一二寸出たばかりには、菊花の萼のやうだ。通直で肥え實する。子は無い。陶氏の所謂『高麗・百濟に産する』といふものは、この類に近い。又、紅花のものもあって、葉は荷(か)のやうで、斗直の大なるは一升を容れ、小なるも數合を容れ得るものだ。俗に蜂斗葉(ほうとえふ)、又は水斗葉と呼ぶ。蘇氏の所謂る『大なるは葵のようで叢生する』者といふはこの物だ。傳咸(ふかん)の款冬賦の序に『予曾て禽を逐ふて、北山に登る。時に仲冬の月、冰凌谷に盈ち、積雪崖を被ふ。顧見すれば款冬煒然(ゐぜん)として始めて華艷敷く』とあるはこの物だ。  *萆薢:オニドコロ
修治 曰く、凡そこれを採取したならば、裏に向かつて花蘂を裹む殻、并に裏にある栗零殼(りつれいこく)のやうなもの、并に枝、葉を棄去らねばなるぬ。かくて甘草水に一夜浸してから、また款冬の葉を取つてみ纒ひ、一夜置いて晒し乾かし、葉を去つて用いる。
氣味 【辛し、溫にして毒なし】別錄に曰く甘し。好古曰く、純陽である。手の太陰の經に入る。之才曰く、杏仁が使となる。紫菀と配合するが良し。皂莢(さうけふ)、硝石、玄參を悪み、貝母、辛夷、麻黃、黃茋(わうぎ)、黃芩、黃連、青葙を畏る。
主治 【咳逆上氣で善く喘するもの、喉痺、諸驚癇、寒熱邪氣】(本經)。【消渴で呼吸に喘息するもの】(別錄)。【療肺氣心促の急熱、勞欬のえず續けざまに出て、涕唾(ていだ)の粘るもの、肺痿、肺癰で膿血を吐くものを療ず】(甄權)。【心、肺を潤ほし、五臟を益し、煩を除き痰を消し、肝を洗ひ、目を明にする。また中風等の疾】(大明)。
發明 頌曰本經には咳逆に主たるものとあり、古方には為肺を溫め嗽を治するに最要藥としてあつて、崔知悌の久咳を療する熏法では、每朝雞子ほどの款冬花を取り、少量の蜜を拌ぜて花を潤し、一升入りの鐵鍋に入れ、又一個の瓦碗に孔を一箇鑽(き)り明けて一本の小筆管を挿し、それを鍋に蓋(かぶ)せて氣の漏れぬやうに麪泥を縫い堅め、鍋の下へ火を入れ、少時して筒から出る烟を口に含にで吸い嚥む。若し胸中が少し悶えるときは、頭を舉げ、筒口おば手にて押さへて烟を漏さぬやうにする。煙が盡れば止める。此の如く五日間一定してこれを試み、六日目に、羊肉の餺飥(はくたく)一頓を飽食すれば永く瘥える』とある。
宗奭曰く、長い間嗽を病んだある人が、ある者から、款冬花三兩を燃やし、風の無い處で筆管でその烟を滿口に吸つて嚥むがよいと教へられ、それを試みて、數日にして果して效果があつた。
附方 新二。
【血を帶ぶる痰嗽】款冬花、百合を蒸し焙じて等分を末にし、蜜で龍眼大の丸にし、就寝時に一丸づつを嚼んで薑湯で服す。(《濟生方》)
【口中疳瘡款冬花、黃連等分を細末にし、唾で調へて餅にし、先づ蛇牀子*の煎湯で口を漱いでから、餅を傅けて少頃の間しかと押へ付けて置く。その瘡は立ろに消する。(楊誠《經驗方》)」とある. *蛇牀子:ハマゼリ


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百科事典として名高い★明王圻 (1592-1612) 纂集『三才圖會 全百六卷 巻之草木三』萬暦371609)序刊 には,「夏 款冬花
款冬花出常山山谷及上黨水傍今關中亦有之根紫色
莖青紫葉似萆薢十二月開黄花青紫萼去土一二寸初
出如菊花萼通直而肥實無子又有紅花者葉如荷而斗
直大右容一升小者容數合俗呼為蜂斗葉又名水斗葉
十一月採花陰乾或云花生於氷下正月旦採之一名橐
吾一名顆凍一名虎鬚一名菟奚一名氐冬味辛甘溫無
毒潤心肺益五藏除煩補勞消痰止嗽吐血心虚驚悸洗

肝明目及中風等疾」とある.


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清末★呉其濬(1789-1847)著の『植物名實圖考』三八巻(1848)と『同長編』二二巻(1880頃)は,薬草のみならず植物全般を対象とした中国初の本草書として名高い.『図考』には実物に接して描いた,かつて中国本草になかった写実的図もある.この書の隰草巻之十一には「款冬花」の記事があるが(右図),その図は★『頭註国訳本草綱目』(1929)第十六巻 草之五 隰草類 款冬花 に牧野富太郎が頭注に「植物名實図考巻ノ十一ニアル款冬ノ圖ハつわぶきヲ畫イタモノデ眞物デハナイ.」と指摘しているように,カントウではなく,ツワブキである.この頃は日本と中国の本草家・本草書の交流が盛んだったようなので,日本の「款冬=橐吾」の誤考定が影響を与えたのかもしれない.

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