Curtis’s Botanical Magazine (1882) 石版手彩色 |
MOBAT |
また,マンサクの仲間は東アジア(中国・日本)と北米大陸東部に分布し,Asa Gray が提唱した「東アジア・北米隔離分布」を示す植物群の一つとして有名.
英国には米国産のアメリカマンサク(H. virginiana)が 1736 年に移入されたが,あまり花木としての評価は高くなかった.十八世紀の植物学者マーシャルは,その花は「まったく見栄えがしないが,咲きかけの頃には,人によっては欲しいと思うかもしれない.この灌木についてはそれ以上,庭師に対して言うことはない.マンサクという植物は,自然が植物学者の真面目な厳しいおめがねにかなうようにデザインしたもののようである」と述べている.
1862 年にヴィーチ商会が日本からマンサクを導入したが,この木は簡単に変異をおこす灌木とされ,ある栽培家などは,「種子を播くと,どんな種類でも手に入る」(ビーン)と嘆いているほどであった.
Enum. Pl. Jap. (1875) |
英国においてすべてのマンサク類の中で最も人気があるのは,シナマンサク(H. mollis)である.これは,ヴィーチ商会のために植物を収集していたチャールズ・マリーズが 1879 年に九江(江西省)で見つけた.しかし,マリーズがイギリスに送った株は,ヴィーチ商会のタームウッド種苗園で 20 年以上も放置されたままであった.というのは,変異をおこしやすいマンサクの一変異であろうと考えられていたからである.マンサクの花びらが,「まるで波打って縮んでいるリボン」(ストーカー “A Gardener’s Progress 『ある庭師の進歩』” (1938))のように見えるのに,シナマンサクの花びらが真っすぐである点が特徴的である.
'Ruby Glow' from RHS |
ヴァージニアへの入植が行われるかなり前から,アメリカ先住民は収斂作用をもっている各種のアメリカマンサクの内皮を,眼病や炎症やできものの外用薬として使用していて,今も治療薬として役に立っている.
一般にもよく知られている化粧品メーカー「ポンズ」が,最初に開発した「ポンドのエキス」("Pond’s extract" 右図)では,ハマメリスエキスがその効力の主成分である.日本で現在販売されている「ポンズ・クリームクレンジング」にも,コラーゲン,スクワランとともに,ハマメリスエキスが含まれていると記されている(http://www.ponds.jp/products/lifting_1.html).
ハマメリスは hama,「いっしょ」の意味,と melis,「リンゴ」の意味からできた言葉で,どのような植物であるか同定されていない植物についていた名前ではあるが,果実と花が同時に見られるこの類につけられた.
一方,英語名「魔女のハシバミ」(Witch-hazel)は,H. virginiana につけられたものであると考えられている.初期のアメリカの入植者は,水のありかを探すロッド・ダウジング(rod-dowsing)にハシバミの木の枝を使ったり,また H. virginiana の枝を用いたからである.しかし,この名前は「曲がりやすい」とか,「弾力性がある」という意味のアングロ・サクソン語の wice とか wic という言葉からでてきたものであるかもしれないとの説もあり,日本における「ねそ(綯麻)」との類似性が興味深い.
冒頭の図譜の説明:1, Bud (from “Gardeners’ Chronicle”); 2, portion or flower laid open; 3, petal; 4 and 5, front and side view of stamens; 6, rudimentary stamens; 7, carpels; 8, transverse section of a carpel
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