マンゲツロウバイ (Chimonanthus praecox var. lutea cv. Mangetsu) 画像提供 つくば市 E.T.さん |
以下にいくつかの江戸時代の辞書・本草書の蠟梅の項を示す.渡来した時期が遅かったためか,記述は『本草綱目』の写しが多く,また方言名が殆んどないのが目に付く.源内は檀香梅の中国からの渡来は享保年間で,俗に唐蠟梅と呼ばれるとした.さらにこの花を一枝挿すと部屋中に馥郁たる香が満が,花瓶の水には猛毒が移ると記している.蘭山の『本草綱目啓蒙』には,近年,荷花梅という花被全体が黄色いもの(ソシンロウバイか)が渡来した.また『群芳譜』には臘月の時に開くので臘梅といっているが,この名は非であるとしている.
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蠟梅 ラフハイ 綱目(本草綱目)異名 黄梅花
蠟梅 和名ナンキンウメ
東璧(*本草綱目の編者,李時珍の字)曰 蠟梅種凡ソ三種 子種ヲ以出テ接経不者ノ臘月小花ヲ開而香淡シ 狗蝿梅ト名 接ヲ経テ花疎開ク時合口ナル者梅馨口梅ト名ヅク 花密ニシテ而香濃紫檀ノ如者ハ檀香梅ト名ヅク 最モ佳ナリ 實ヲ結コト垂鈴ノ如尖リ長寸余 子其中ニ在ト 今本邦狗蝿檀香ノ二種アリ
○狗蝿梅 江村如圭曰ク昔シ本邦之有コトヲ不聞(*きかず)
後水屋帝時朝鮮自(*より)来ルト今ハ處處多植
○檀香梅 ○漢種享保中種ヲ伝へテ官園ニ植 俗唐蠟梅ト云 花狗蠅梅ニ比スニ大ナルコト三倍 色琥珀ノゴトク 帯ニ近キ処深紫色ニシテ紫檀ノ色ノゴトシ 香甚濃ナリ 若シ一枝ヲ瓶中ニ挿メバ香馥室ニ満ツ ○本草ニ曰ク花瓶水之ヲ飲メハ人ヲ殺ス 蠟梅尤甚(*尤甚:ゆうじん 非常に.際立って.ひときわ)
★岡林清達・水谷豊文『物品識名』乾 (1809 跋) (左上図,右)
ラウバイ 通名ナンキンムメ 蠟梅 狗蝿梅 汝南国史
シンノラウバイ 檀香梅 蠟梅ノ條
★小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1803-1806) 巻之三十二 木之三 灌木類
蠟梅 ナンキンウメ カラウメ トウウメ ランウメ 今通名 〔一名〕奇友(事物紺珠)九英梅(汝南圃史)狗蝿花(汝南圃史)狗英(花史左編)狗櫻(群芳譜)
蠟梅ノ説一ナラズ。時珍ノ説ハ、困其与梅同時、香又相近、色似蜜蝋、故得此名ト云。群芳譜ニ、人言臘時開、故以臘名非也、為三色正似黄蠟耳ト云。又似女工撚蠟所成、故名ト云。彙苑詳註来其蠟国ト云。コノ木ハ百九代後水尾帝*ノ時、朝鮮ヨリ来ルト云伝。故ニ俗ニ、カラウメ等ノ名アレドモ、今二至テハ皆蠟梅ト称ス。ソノ木叢生ス。*(在位:慶長16年(1611) - 寛永6年(1629))
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