Redoute "Nouveau Duhamel" (1800) Japan Calycant |
Amoenitates Exoticae |
約 50 年後,長崎・出島の医師として来日したケンペルが,著書『廻国奇観』(Amoenitates Exoticae, 1712)に,長崎で見た花を日本名 “Obai” として図(左図)とともに「蠟梅」の漢字入りで記述した.
この記述と図を元に,リンネが「日本に生育している潅木で,”Abai”, “Robai” と呼ばれている」(右下図)として,米国原産の「クロバナロウバイ属」に分類し, Calycanthus praecox と学名をつけた("Species Plantarum”, Edition 2, p718).
Species Plantarum”, Edition 2, p718 |
また,この Flora Japonica を元に,和名と学名の対応表を記載した伊藤圭介訳述『泰西本草名疏』(1829)においても,「ロウバイ」も “Calycanthus praecox” もない.ツンベルクは記載する予定はあったものの,書き忘れたのであろうか.
現在の属名は 1819 年に著名な英国の植物学者リンドレイが Chimon (winter) と anthos (flower) から名づけた.
西欧においても,日本・中国と同様,或はそれ以上に,冬季に咲くつややかな花とよい香が歓迎された.
Gift from Kate-san |
Curtis BM, 1800, 銅版手彩色 |
Loundonはこれを「この木のない庭など考えられないぐらい,欠かせない木であり,・・・ロンドンの北にある全ての庭において,少なくとも得られる喜びから判断するに,他の同様に壁に這わせる果樹と同等の価値がある (it deserves a wall as much as any fruit-tree)」とみなした.これ以降,違いが分かる鼻を持った庭師たちから,この賛辞は何度も繰り返された.E. A. Bowles はさらに,「二本の植物を植えられる広さのある庭ではロウバイとカンザキアヤメ(寒咲きアヤメ Iris unguicularis)を育てるべきである.」とまで云った.Haworth-Booth氏は,「純心な若いときにこの花の香を嗅いだ鼻は,非常な高齢になってもこれを忘れることはない」と云った.
(中略)
中国においては基本種のほかに少なくとも宋王朝時代 (A.D. 960-1279) に園芸化された五種の品種があり(注:ソシンロウバイ,トウロウバイなどか),11世紀には多くのこの花を詠った詩の内の最初のものが現れた.
温暖な地方では,この花は中国の新年の祝賀儀式のころに咲き,中国の婦人の間ではこの香のよい花を髪に飾るのが伝統であった.材自身も芳香をもつので,中国と日本の主婦は箪笥や衣装部屋に枝や小枝を束ねて入れて,移り香を楽しんだと言われている.
ノート:米国においてもロウバイは,長いこと待ち望まれていた冬季の花の咲く灌木である.不運にも,この植物は挿し木などの無性生殖で繁殖させるのは難しかった.日本においては,11月にロウバイの気持ちのいい香の花を咲かせる専門家がいる.マンゲツ(満月)と呼ばれる変種は八重咲きの大きな花を多数つける.米国国立樹木園はこの植物を 1976 年に日本から購入したが,挿し木や接ぎ木が困難なため,まだ流通していない.」(原文,英語)とある.
最初にリンネがクロバナロウバイ属に帰属させたように,中国原産のロウバイ属と米国原産のクロバナロウバイ属(一例,右下図)には類似点が多々ある.
ハーバード大学の Asa Gray 教授 (1810-1888) は,ペリーが日本来航の際に採集した植物標本の解析とともに,この二つの類似した属が太平洋を挟んで分布している事も根拠の一つとして, 1859 年に「東アジア・北米隔離分布」を提唱した.
Botanical Register V6 (1880) Tab.481 Calycanthus Laevigatus. |
“Calycanthace consist of three species of Calycanthus in the United States east of the Alleghany Mountains, one in California, and one, Chimonanthus, in Japan.” (Memoirs of the American Academy of Arts and Sciences, New Series, Vol. 6, No. 2(1859), pp. 377-452)
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