
この標本を基にしたミクェルの『日本植物試論』(以下『試論』)の TRICTRTIS JAPONICA の項には,その内一点の標本に貼付されている別のラベル (2nd label) に流麗な筆跡で記されている採集地 In ripis lacus Oots iuxta Miako ins Nippon(本州,都の近く,大津の川の堤)が記載されている.
一方,ミクェルが,“Rijksherbarium” 収蔵の日本植物のすべての標本2,000種以上を調べて同定して記録した,『ライデン植物標本館標本目録1,日本植物』 ”Catalogus Musei Botanici Lugduno-Batavi 1,Flora Japonica” (1870) (以下 『目録』) のホトトギス (Tricyrtis japonica, T. hirta の synonym ) の項には,採集者のリストにピエローの名はなく,代わりにビュルガー (Burger) が採集者として記載されている.
この標本(ピエロー・コレクション)は,
1844 年にビショップから標本館が購入したことが分かっている.
標本館のデータベース(BioPotal)で,ピエローが collector とされている日本産の標本は 1,167 点に上り,このピエロー・コレクションの内,164
点については,良好な解像度で,画像を見ることができる.この
164 点の内,流麗な筆跡のラベル( 2nd label )が貼付されているのは,109 点で,採集地は九州 (Kiu-siu) が 79 点,本州が 30 点である.
2nd label
で,Nippon, Hondo, Honsyu と記されている本州での採集地を見ると,下関,室,大阪,大津,桑名,岡崎,矢作川,浜松,富士山麓,箱根,六郷川,川崎など,出島から江戸への道中の沿道の地名が多く,オランダ商館長の江戸参府に伴って,これらの標本が採集されたと思われる(添付地図,赤マーク).
また,九州が採集地とされる標本には,長崎近辺(例えば野茂岬)や北九州地方(例えば雲仙)が多いが,参府行程上の諫早,彼杵,嬉野,牛津,飯塚,木屋瀬(こやのせ),小倉などの地名が確認できる(添付地図,青マーク).
矢田純子『オランダ商館長の江戸参府と鞆の浦』比較日本学教育研究センター研究年報第6号 (2010) 掲載の地図に採集地をマーク
ピエロー・コレクションの実際の採集者,また採集地などを記した流麗な筆跡の 2nd ラベルの筆者については幾つかの説がある.
Source
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Collector
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Writer of the 2nd label
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Miquel, F. A. W.
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『試論』1)
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Pierot
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『目録』2)
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Bürger
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M. J. van Steenis Kruseman
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Flora
Malesiana 3)
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Bürger
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Bürger
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牧野標本館
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シーボルト・コレクション ヒシ4)
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Pierot
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Pierot
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加藤僖重
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『シーボルトコレクション中にあるピエロー作製の標本について』5)
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Bürger
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Biss(c)hop
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J. Lautenbach
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Lautenbach
- Vier eeuwen familiegeschiedenis 6)
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Villeneuve?
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Hanamoriyashiki
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Following
blog article
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Villeneuve
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Villeneuve
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1) Plolusio Florae
Japonicae, (1865 – 67)
2) Catalogus Musei Botanici
Lugduno-Batavi 1. Flora Japonica, (1870)
3) Flora Malesiana Ser. I, vol. 8 (1973)
4) http://ameba.i.hosei.ac.jp/sbweb/Prep/004/MAKS0427.html
5) https://www.dokkyo.ac.jp/shiencenter/pdf/25/02.pdf
6) https://www.lautenbach.name/pierdetail.asp?Id=%20352
それぞれの説の内容,典拠,Hanamoriyashiki
説の根拠については,次記事以降に詳説するが,次記事には,採集者・2nd ラベルの筆記者の候補の一人とされるフィルヌーヴ(ウィルヌーヴ,フィレニューフェ,フィレネウフェ),Villeneuve, Karel Hubert de (Charles Hubert de, Carel Hubert de), (1800
– 1874) について述べる.
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