Anethum graveolens = strong smell
香り,草姿ともフェンネルに良く似ているが,一年草である点が異なる.種子や葉を香味料や生薬として用いる.
原産地は西南アジアから中央アジア,薬草として古くからヨーロッパ・北アフリカ・アジアで栽培されてきた.5000年前にはエジプトの医師に使用されておりアメンホテプ二世の墓から枝が発見されている (https://en.wikipedia.org/wiki/Dill).またイギリスにあるローマ時代の廃墟からもその痕跡が見つかっている(https://www.english-heritage.org.uk/learn/story-of-england/romans/food-and-health/).
新約聖書「マタイによる福音書」23章23節にはパリサイ人がイノンドで税を支払っていたことが分かる場面がある.
イエスの言葉として「律法学者たちとファリサイ派の人々、あなたたち偽善者は不幸だ。薄荷、
いのんど、茴香の十分の一は献げるが、律法の中で最も重要な正義、慈悲、誠実はないがしろにしているからだ。これこそ行うべきことである。もとより、十分の一の献げ物もないがしろにしてはならないが。23 “Woe to you, teachers of the law and Pharisees, you hypocrites! You give a tenth of your spices—mint,
dill and cumin. But you have neglected the more important matters of the law—justice, mercy and faithfulness. You should have practiced the latter, without neglecting the former.”」.また,中世には魔術を防ぐ効果があるとも考えられていた.
日本では,江戸時代には薬草として導入・栽培され,貝原益軒『大和本草』 (1709)で「蒔蘿」は小茴香と同じでフェンネルとディルを含めて言っていたようであるが,一年草の方を特にイノンドとしている(左図).
また寺島良安『和漢三才図会』(1713頃)では,蒔蘿は小茴香(= フェンネル)とし,伊乃牟止(いのんど= ディル)と分けている.双方とも種は蛇牀(ヤブジラミ)のそれに似ていて,薬用として用いられ,特に伊乃牟止の種から得られた油は消炎・鎮痛などに効果があるとしている(右図).
さらに,小野蘭山『本草綱目啓蒙』 (1803-1806) 巻之二十二では「蒔蘿 詳ナラズ。〔一名〕時美中 蒔蘆 イノンドサウヲ蒔蘿二充ル説ハ穏ナラズ。イノンドハ八月二種ヲ下シテ翌年夏二至り苗根共ニ枯。形状甚茴香二似タリ。只高サ二三尺二過ズ。葉花共二同シテ、臭気アリ。茴香ノ香気アルニ異ナリ。子ノ形茴香ヨリ短クシテ薄シ。油ヲ採、薬ニ入。腫ヲ消シ、痛ヲ止ム。漢名詳ナラズ。」とある.
家内が買ってきた鉢植えから落ちた種が成長.開花した.ミントや香菜などのハーブを良く買ってくるが利用することはほとんどない.これもどうかな.
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