2017年5月11日木曜日

アマナ-(2) 古典文献上でアマナと呼ばれている植物は,必ずしも Amana edulis にあらず.

Amana edulis
2010年4月 茨城県南部
アマナは古くから食べられたとはいえ,文献上「アマナ」の呼ばれる植物が Amana edulis と同一かどうかの判別には注意が必要.単純な名前ゆえ,甘みが感じられて食べられる植物の名として記される場合も多い.
木村陽二郎監修『図説草木名彙辞典』柏書房 (1991) によれば「アマナ Amana edulis」以外に,アマドコロ,ギボウシ,サトウヂシャ(ビート),ツリガネニンジン,ナルコユリ,フナバラソウ,マオウが「アマナ」と呼ばれるとされる.
同書の「アマナ」の項に出典として記されている『本草和名,新撰字鏡,和名抄,伊呂波,下学集,三才図会,物類品隲,薬品手引草,本草綱目啓蒙』の内,記述からして確実に「アマナ」が「Amana edulis」と確認できたのは,『三才図会』『物類品隲』『本草綱目啓蒙』であり,それ以前の文書では他の植物であると考えられる.なお,『薬品手引草』では確認できなかった.
従って,「アマナ」と書かれている植物をAmana edulis」と考えていいのは 18 世紀以降の植物文献・図譜であって,それ以前のでは,十分の確認が必要である.
また,アマナの漢名として多く使われる「山慈姑(さんじこ)」「燈籠花(とうろうばな)」にも複数の植物が考定されている

古典文献上でアマナと呼ばれている植物の本体の漢名,現在の標準的な和名を,文献名と刊行年,その中の和名等を以下に表示し,各項の詳細は,次記事以降に示す.なお,空白のセルは存在を確認できなかったことである.
『多識編』以前の文献に「山慈姑」が無いのは,それまで参照していた中国から渡来していた本草書に「山慈姑」の記述がない事に由来する.(後述)


漢名
黄精
萎蕤・葳蕤
麻黄
山慈姑
出典
刊行年等
ナルコユリ
アマドコロ
マオウ
アマナ*
新撰字鏡
898-901
安万奈



本草和名
918
阿末奈
阿末袮
阿末奈

和名類聚抄
931 - 938
保恵美
安麻奈
阿萬奈

医心方
984
阿末奈
阿未尓
阿末奈

色葉字類抄
1146 - 1181

あまな


下学集
1444
ヲホヱミ・アウシ
アマナ


多識編
1649
於保恵美・阿宇之
恵美久佐
加久麻久礼
土宇呂宇波奈
貝原益軒
本草綱目
1673
ヲホヱミ
エビクサ
カクマクレ・
イヌトクサ
トウロウハナ
合類大節用集
1680
アマトコロ



和爾雅
1694
ナルコユリ
カラスユリ

トウロウバナ
大和本草
1709
アマドコロ
カラスユリ

(和名無)
用薬須知
1712
ナルコユリ
アマドコロ

甘菜・アマナ
東莠南畝讖
1713



南京水仙
和漢三才図会
1713
(和名無)
阿末奈
阿萬奈
阿末奈
稲生若水
本草綱目
1714
ナルコユリ
アマドコロ
カワラトクサ
アマナ
トウロウバナ
物類品隲
1763
ナルコユリ・
アマトコロ
カラスユリ
イヌトクサ・
カワラトクサ
アマナ
ムギグワヰ
本草綱目啓蒙
1803
ナルコユリ・
ササユリ 他
アマドコロ・
カラスユリ 他
カクマクレ・
イヌドクサ
アマナ
トウロウバナ・
ムギグワヰ

アマナ-(1) 学名 シーボルト,ミクェル,本田正次

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