2022年7月21日木曜日

ウラシマソウ-10 江戸後期-2.毛利梅園『梅園草木花譜』-1

Arisaema urashima

★毛利梅園(1798 1851)『梅園草木花譜』(1825 序,図 1820 1849

梅園は江戸後期の博物家.名は元寿,号は梅園,楳園,写生斎,写真斎,攅華園など.江戸築地に旗本の子として生まれ,長じて鶏声ケ窪(文京区白山)に住み,御書院番を勤めた.20歳代から博物学に関心を抱き,『梅園草木花譜』『梅園禽譜』『梅園魚譜』『梅園介譜』『梅園虫譜』などに正確で美麗なスケッチを数多く残した.他人の絵の模写が多い江戸時代博物図譜のなかで,大半が実写であるのが特色.江戸の動植物相を知る好資料でもある.当時の博物家との交流が少なかったのか,名が知られたのは明治以降.(梅園については,次記事に述べる)

この『梅園草木花譜』の「春之部一」に「天南星」と題する写生図(冒頭図)があるが,これはウラシマソウの図である.なお写生した日,「甲申姑洗」とは 1824年三月の事である.記述文では和名を山蒟蒻とし,『本草和解』,『大和本草』,『本草綱目』,『和漢三才圖會』を参照し,梅園の考察を「元寿謹云」以下に述べている.(画像はNDLの公開デジタル資料よりの部分引用).当時の本草家との交流が少なかったからか,画像の植物の名称を「ウラシマソウ」とはしていない.

「本草和解

天南星(テンナンセウ)

異名 虎掌(コシヤウ) 虎膏(ココツ) 鬼蒟蒻(キコンニャク

和名 於於曽比(ヲ〃ソヒ)

○山蒟蒻 ヤマコンニヤク

本草ニハ虎掌ト云小ナル者由跋(ユハツ)ト云
其形菎蒻ノ如シ宿根ヨリ春生ス南
星ニ似テ莖極メテ二莖ニ三葉ヲ生ス半(ハン)
(ケ)ノ葉ニ似テ大イ也花ハ南星ニ似テ異
有鐙ニ如クナレハ和名武蔵鐙
ト云秋實至ツテ朱ノ如シト云
是ハ別物ナリ當草ハ一花
一莖掌ノ如ク葉ヲ生スヨク菎
蒻ニ似タリ南星ト云ヘリ 

大和本草曰
時珍云小者ナル爲由跋乃一種也、
今按ニ山中ニ似天南星而小ナル
者アリ此レ由跋ナルベシト云由跋
南星ノ一類ニナキコト明也
○本草綱目ニ五月開花似
黃色也ト其余ハ實根皆合
天南星ハ即本徑(?經)ノ虎掌也 小者名由跋
古方ニハ多用虎掌天南星
天南星之名始於唐時ヨリ 虎掌形似
也南星根圓形如ナルニ
老人星一名南星

○元寿謹云國俗天南星ト喚者即山菎
蒻也南星ハ花中ヨリ鼠尾ヲダサス小指ノ
大サノ如キ丸ク長キ珠ヲ出ス葉莖兩對シテ
其椏ヨリ花ヲ抽ス山菎蒻ハ一莖一花別物ナリ 

甲申姑洗下望五日
  山林枝折眞寫

異名 虎掌(コシヤウ) 虎膏(ココツ) 鬼蒟蒻(キコンニャク)
和名 於於曽比(ヲ〃ソヒ)

 和漢三才圖會按説虎掌本名也、倭名抄ニモ亦有
虎掌天南星今却虎掌識者、疑此從虎掌
出異品、名天南星、〈
一物異品異名也〉近頃亦
異品
歡喜草 武藏鐙〉之類是也、既虎掌天南星相似
各別也、又天南星ニモ二種、花房淺青色、而末如
尺、惟如
(サジ)及佛後光也、無鼠尾高二尺
許、是自一類二種也、三才圖會及本草必讀出
ト与天南星之、爲ルヲ二物明也焉」

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