2011年6月19日日曜日

和漢三才図会 タイトゴメ マンネングサ

寺島良安『和漢三才図会』(1713頃)に「たいとうこめ」の項があるのに気がつき,以下の書を参考にしながら,原文に当たり,「たいとうこめ」と「いちぐさ」及び「いつまでくさ」の書き下し文を記す.タイトゴメは,その葉が,質のよくない赤い米「大唐米」に似ているので,名づけられ,また枕草子の「いつまでくさ」はマンネングサの類の可能性が高い様に思われる.
谷川 健一/編集委員代表『日本庶民生活史料集成 第29巻 和漢三才図会(ニ)』(1980)三一書房

秈(たいとうこめ)
占稲 早稲
俗云 大唐米 又云 野稲

本綱 秈は粳に似て粒小なり。始め閩(ミン)の人より種を占城(チャハン)国より得、宋真宗使を遣して閩に就かせ、三万斛を取りて諸道に分け給し種と為す。故に今皆之れ有りて高仰の処倶に種うべし。其の熟最も早し。六七月に収むべし。赤白の二色有り。粳と大に同じくして少し異なり。
△按ずるに、本は此れ天竺の種にして、宋の時始めて中華(モロコシ)に種ゑて本朝に傳ふ。故に呼びて大唐米と日ふ。今も亦た西国に多く之れを種う。能く繁茂して早く熟す。凡そ粳米にも亦た赤白の二種有り。特に此の米は赤き者多く白き者少なし。故に通じて●(米+罪)(アカゴメ 音催、赤米)と称す。苅り収めて籾を鍋に盛り、水少し許りを入れて蒸し熬り晒し乾し、礱(スリウスニ)磨(ヒキテ)以って稃を去り米と為す。もし蒸さざれば則ち舂(ツクトキニ)に砕け易く、是れ一異なり。日向の産は烏赤色にして良し。薩摩の産は鮮赤色にして之れに次ぐ。凡そ赤米は能く舂きて糠を去れば乃ち白色に微かに紅文を帯ぶ。飯と為すに能く倍殖(フ)えて粘らず。温かなる時、香気有りて甚だ佳し。冷れば則ち風味疎にして、之れを食ひて飢ゑ易く、以って賤民の食と為す。亦た秈糯有り、之れを大唐糯と謂ふ。而して赤白の二種有り、共に稍粘る。

以知草(いちぐさ)
△按ずるに、以知草は景天草に似て極めて小なる者なり。又爪蓮華の苗に似て高さ三四寸、茎枝弱く、蔓の如く繁茂り、五月に小さき黄花を開く。人家の庭園に栽ゑて茂り易し。

壁生草(いつまでくさ)
△按ずるに、壁生草は即ち以知草の類にして、葉略(チト)開き、色微かに濃く、性水を好みて深き湿を悪む。極めて生じ易し。或は細かに茎を切りて地に挿せば則ち活く。石壁の上と雖ども、初め湿り、土を以って之れを栽ゑれば則ち又死(カ)れず。五月に五弁の尖、小さき黄花を開き、以知草の花に似たり。
堀川百首
壁に生るいつまて草のいつまてかかれず問へき篠原のさと  --- 藤原公実

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