2012年3月27日火曜日

シュンラン(2) - 和古本草・園芸書 花壇地錦抄,和漢三才図会,大和本草,絵本野山草,本草綱目啓蒙

Cymbidium goeringii今年のシュンランは多くの花をつけた.古くから,高潔さを秘めた渋い味わいが愛され,松・竹・梅と並べて四君子のひとつとされ,日本画や陶磁器・着物の柄として親しまれた.
根は手打ちうどんの様に太く,内部には菌類が住み着き,シュンランと栄養を交換し合って共同生活をしている.昔は民間薬としてこの根を蒸すか焼いてすりつぶし,ひびやあかぎれの手当てに使った.
花は茹でてお浸しなどにして食べたり,塩漬けにして吸い物や蘭茶として祝い事に用いた.塩漬にするときに,梅酢を少し加えると,唇弁の斑点(ほくろ)が赤紫色に発色して見栄えがよくなるとのこと.
日本中に広く分布し,花のつくりや花被の色や模様に特徴があるため,ジジババ・ゲンコツバサミ・テングバナ・オナツセイジュウロウ・ホクロ・ウグイス・ハックリなど方言名が多い.江戸時代から観賞用の栽培が始まり,花の色変わりや葉の変化には現在も愛好家も多く,斑点のない素心系や赤花系などがある.

○伊藤伊兵衛『花壇地錦抄』(1695)では,「春蘭 葉ハらんのちさき物にて花形もらんのごとし」とあり,同書の「草木植作様伊呂波分」の項には,「しゅんらん 植分二八月野土ニ合肥赤土等分日かげニ植べし」とある.

○寺島良安『和漢三才図会』(1713頃) の「第九十三巻 芳草類」に
春蘭(ほくり) △按ずるに、春蘭は蘭に似て細く短く、長さ七、八寸に過ぎず。春月に花を開き、亦た秋蘭に似て香稚浅し。冬月に其の根を採りて慈姑に似たり。能く皸瘡(あかがり)を治す。
現代語訳 島田・竹島・樋口,島田勇雄,竹島淳夫,樋口元巳訳注,平凡社-東洋文庫
春蘭(ほくり) 俗に保久利という △思うに、春蘭の葉は蘭に似ていて細短く、長さは七、八寸に過ぎない。春月に花が開くが、また秋蘭に似ていて、香りはやや浅い。冬月にその根を採る。慈姑(くわい)に似ている。よく皸瘡(あかぎれ)を治す。とある.

○貝原益軒『大和本草』 (1709) では「巻之八 草之四 芳草類」と「巻之九 草之五 雑草類」とに二回記述され,前者では,栽培法が,後者では「ハクリ」という名で「山ニ生ス幽蘭葉ニ似タリ茎ニミゾアリテ三角ナルカ如シ花モ幽蘭ニ似テ微香アリ山人其根ヲ取アブリテヘラニテヲセバノリノ如クニナルヲ用テアカガリノ口ニツクレバ能イエ又白及(シラン)ノ根モ同ジク治ス」とあかぎれに薬効があることが記載されている.

○橘保国『絵本野山草』(1755)の巻之二には二種の春蘭が記載されていて,「春蘭  一名 独頭蘭 葉、蘭に似て小し。春、白うす紅の花を開。蘭のごとし。二月、花。」(右図右)とあり,また「春蘭 山蘭 幽蘭 国香  花、一本に一りん有。花、香(にほう)こと蕙蘭(けいらん)にかはらす。色、少し黄也。又、葉も、けいらんと同し。又、花のさや、かつく有。さやの色、白うす黄青し。じく、うす青、紫色有。左伝ニ国香、鄭ノ文公ノ妾有。燕姞(えんきつ)といふに、蘭を与ふと。夢(ゆめこころ)、蘭に国香有。人眼(にんがん)をして、これに媚(こびらしむ)と也。三月、花。」(右図左)とある.前者は図で見ると花茎の途中に苞がある点や白うす紅の花色からアマナ(Amana edulis (Miq.) Honda)であり,後者がシュンランであろうと思われる.

○小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1803-1806) では,「巻之十 草之三 芳草類」の「蘭草 フヂバカマ」の項に〔正誤〕春蘭ハ一名報春先(秘伝花鏡)独頭蘭(蘭譜)ホクロハ比一種ナリ」とそっけない.いわゆる民間薬で,本草(薬用植物)としての扱いはされなかったのであろう.

シュンラン(1)はこちら.

2012年3月23日金曜日

Who tore the Crocus petal?

Crocus vernus cv. & Microscelis amaurotis (Brown-eared Bulbul)
Who tore the Crocus petal?
I said the Bulbul.

ヒヨドリ (Brown-eared Bulbul) の食欲には大いに迷惑をこうむっている.冬の初めからは,カントウベカナの葉が丸かじりされ,白菜やブロッコリーの新芽が食べられ,キンカンの実も盗まれ,遂には折角さいたクロッカスの花まで破られた.



去年あたりから,紫のクロッカスの花びらが,裂かれていたのには気がついていたが,それほど被害がなかったので気にしていなかった.しかし,今年の春は咲いた花の 50 %程度は何らかの被害を受けていた.ちぎれた花弁が 5 メートルほど離れた場所に落ちているので,鳥が元凶だろうと考えていたが,先日遂にヒヨドリのご夫婦が一生懸命花弁を裂いている現場を目撃した.

ヒヨドリが甘い蜜を求め,サクラの花を食いちぎるのは知っていたが,遂にクロッカスまでその文化が広がったかと,いささかショックを受けた.不思議な事に紫の花は被害を受けるが,白い花は全くと言っていいほど啄ばまれていない.蜜の多少によるものか,色に対する感受性が異なるのか,未だ白いクロッカスも蜜を持っているとの知識がないのか.早く野生の食物が多く出て,庭に来なくなることを期待したいが,ヤエベニシダレの木にじっくりと腰をすえているところを見ると,我が家の庭が気に入りのようで,ネコのデコイでも置こうかと思案中.



ヤエベニシダレの枝で,くつろぎながらキンカンの果実を賞味中のヒヨドリ.

2012年3月15日木曜日

トウキンセンカ (3/3) Pot-Marigold "Mistress Mary, quite contrary", 秘密の花園,The Oxford Dictionary of Nursery Rhymes,和訳色々

Calendula officinalis (A double-flowered cultivar (Shin-guro, Black-eyed))

"Mistress Mary, quite contrary,
How does your garden grow?
With silver bells, and cockle shells,
And marigolds all in a row."
from “The Secret Garden” by Frances Hodgson Burnett, Illustration; M B Kork (1911)

メアリー嬢様 あまんじゃく
お庭に植えたは どんな花
銀のスズラン ムギセンノウ
キンセンカまで ならんでる(私訳)

マザーグースの中でも良く知られた “MARY QUITE CONTRARY” の詩にはいくつかのバージョンがあり,F H バーネットの『秘密の花園』で,両親を亡くしてインドから英国に向かう船の中で,不器量でしかめっ面ばかりしていた主人公のメアリー・レノックスを悪童がからかうのに歌った詩には,上記の様にキンセンカが詠われる.

もっとも通常に歌われる詩は
Mary, Mary, quite contrary,
How does your garden grow?
With silver bells, and cockle shells,
And pretty maids all in a row
で『秘密の花園』のそれとは特に最後の行が異なる.この最終行は色々変化し,最も現存する一番古い詩(c. 1744)では,And so my garden grows. で,その他,Sing cuckolds all in a row,With lady bells all in a row.が記録されている(Opie, Peter; Opie, Iona Archibald “The Oxford Dictionary of Nursery Rhymes” (1952)).

2012年8月
Common Corncockle (ムギセンノウ)
この歌の由来には色々説があるが,“And pretty maids all in a row”のために,前行の“silver bells, cockle shells”の解釈が変わってくる.しかし,最終行がキンセンカを詠う『秘密の花園』の詩であれば,”silver bells” がスズラン,” cockle shell” がムギセンノウ(アグロステンマ)と素直に読めるので,残念ながら不条理の世界から抜け出してしまう.

ヨークシャーの荒涼たるムーアの中の館に引き取られたメアリーは,地元の人々や動物達とふれあい,そして閉ざされていた『秘密の花園』を手入れして花たちを美しく咲かせることによって,自分のみならず,叔父と従兄の体と心を健康な世界に取り戻す.

この本は特に日本では多くの支持を得て,翻訳書の数も多い.また,山本史郎著『名作英文学を読み直す』(2011年)第l章 隠されたテクスト―『秘密の花園』にはどんな花が咲いているのだろう? はこの物語の評論として非常に興味深い.また,金井美恵子著『噂の娘』 (2002) では主人公の少女がこの『秘密の花園』を読んで,メアリーと船に同乗していた若い士官のアーチバルド・ロックウッドが,メアリーを見て詩の対象として色々妄想にふける場面を空想している.

なお,『秘密の花園』のいくつかの翻訳からこの詩を引用する.

秘密の花園 岩波少年文庫 吉田勝江訳 (1958)
つむじまがりのメアリさん/おまえのお庭はどうなった?
銀鈴 かいがら キンセンカ/ならんだ ならんだ 一列に

秘密の花園 旺文社文庫 岡上鈴江訳 (1975)
メリーさんは 意地っぱり/あんたのお庭は,どんなです?
銀のつりがね どうかん草/きんせんかまで ひと並び

秘密の花園 福音館書店 猪熊葉子訳 (1979)
つむじ曲がりのメリーさん、/あんたのお庭にゃ何が咲く?
銀鈴花(ぎんれいか)に貝殻菊(かいがらぎく)、/ならんで咲いたは金蓋花

秘密の花園 西村書店 野沢佳織訳 (2000)
つむじまがりのメアリさん/お庭のようす、いかがです〜
銀のベルに、貝のから/それにきれいなキンセンカ/ずらりならんで、咲いてます

2012年3月12日月曜日

アマクリナム ドロシー・ハンニバル (2) 実と芽

X Amacrinum ’Dorothy Hannibal’
2011年の9月に咲いたアマクリナム ドロシー・ハンニバルに11月には実がついた.実は最大ので直径15mmほどのやや赤紫味を帯びた半透明な淡褐色の球形で,貴石の様に美しい.

アマリリス・ベラドンナと、クリナム・ムーレイとの属間交配種なので発芽しないかと思っていたが,山野草の土の上にばら撒いて,土間においておいたら,1月下旬3個から芽が出てきた.

まず,緑色の一本の芽が出て,それが下に向かい,地中にもぐり,その先は白色の根になる.屈曲した部分から緑色の細い葉が上に向かって伸びてきている.土から掘り起こし,根の写真を撮った後は培養土に移し植えた.

どのように成長するのか,どんな花が咲くのか,楽しみにしている






2012年3月3日土曜日

フクジュソウ 2 (2/2) 園芸種 三段咲き

Adonis multiflora cv. “Sandan-zaki”
撮影 いばらきフラワーパーク
(承前)
フクジュソウは,江戸時代の初めから正月の花として特に鉢植えで愛でられていたが,嘉永元年 (1848) 頃から変異品が増えたようで,幕末の泉本儀左衛門著『本草要正』 (1862序) には「フクジュソオ 獻歳菊 此品近年花重弁重々弁段咲花色紅白青絞リ等又重弁替リ茎替リ葉替リ猶多シ年々実生ニテ諸方ヨリ替リ多ク出ス挙ニ暇マアルヘカラス」とあり,「替リノ部」には「紅花類,白花類,八重咲類,段咲類,大輪類,細咲糸咲類,青軸打抜類,絞リ類,変化類,撫子咲類,葉替類,奇品類」に分けて131(一説には126)もの品種が記録されている.紅色系では青梅紅、秩父紅、酒依紅など,白色系では満月白,弁天白,車屋白,清明白など,花形では狂咲き段咲,撫子咲など.現在まで残っているのは少ないが,花弁の先が細かく裂けた「金采」や赤い「秩父紅」などの園芸種が栽培されている.

画像の「三段咲き」は『本草要正』の段咲類の項に「サンダンサキ」と記載されている珍しい品種で,黄金,緑,黄金と三段に咲き,花弁数85~120枚,花径5~6cm と大輪の花で,全開するのにひと月もかかるがその分長く楽しめる.

江戸時代のフクジュソウのモノグラフとしては,群芳園弥三郎ほか画『七福神草』嘉永元 (1848) 成や著者・成立年代不明の『福寿草写生図』(明治の写本?)の画像がネットで見られる(右上図)が,鉢や置台にも江戸の園芸文化の粋が感じられる.

また,英国の有名な植物雑誌,『カーチスのボタニカル・マガジン』の1896年刊には原種と共に,赤い筋が入った園芸種が描かれ(左図),これは『福寿草新(真?)図 Fu Ku Juso Schin Dsu 』というモノグラフからの転写であると記されている.この図譜には21の白,灰色,黄色,緑,紫,ばら色,緋色,八重やナデシコの様に花弁の先が割れた花が描かれている.と日本の園芸種の多様性には驚きながら,あまりの変異に,画家への信頼性に疑問を投げかけている. 失礼な!

Tab. 7490.
ADONIS AMURENSIS.
Native of Mancuria and Japan Adonis amurensis as discovered on or near the Bareya Mts.,on the right bank of the lower Amur river,Lat. 50 N., in what are now called the Amur Provinces of Russia;and it has since been found in Islands of Sachalin, Jesso,and in the north of Nippon.
(中略)
The Japanese work cited above (Fu Ku Juso Schin Dsu) consists of twenty-one figures of varieties, or more probably garden sports of A, amurensis,of all sizes,with single and double flowers, white, grey,yellow,green, purple,roose-colrd. and scarlet. Some are double like "bachelor's buttons; "others are have five laciniate petals, like a Dianthus. The sepals are often represented as ovate,acuminate,and very dark-colrd., and there are deviations from the type which might excite suspicion as the good faith of the artist.

2012年2月25日土曜日

フクジュソウ 2 (1/2) 江戸時代の文献,毛吹草,花壇綱目,花譜,花壇地錦抄,草花絵前集,大和本草,和漢三才図会,絵本福壽草

Adonis ramosa寒さが続いたせいか,例年より遅れていたが,ようやくフクジュソウが金色の花を開き始めた.
日本に原生していて,目立つ花にしては,文献に現れる時期は遅く江戸時代.その後多くの江戸園芸書に記述されるが,その薬効や毒性へ言及した本草書は見つけることが出来なかった.

江戸時代の俳諧論書,松江重頼『毛吹草』 (1645) の序に 「先春たてば福壽草の花、黄梅、白梅色香もあらたまりつつ」(左図)(読み,駒澤大学総合教育研究部日本文化部門 「情報言語学研究室」のHPより)とあるのが文献上の初出といわれている(磯野直秀).

日本最初の園芸書水野勝元『花壇綱目』 (1681) には「福壽草 花黄色小輪也正月初より花咲元日草とも朔日草(ついたちそう)とも福づく草とも云。右養土の事肥土に砂を少加て能まぜ合ふるいにて用て宜し、肥の事茶がらを干し成程こまかにして右の土に少宛交る也。分植事二月末より三月節迄八月末より九月節分植也。」(右図)

貝原益軒『花譜』 (1694) に「福壽草 又ふくづく草ともいふ.草のたかさ数寸にすぎす.その葉胡蘿蔔(なにんたん)に似たり.其花くさやまぶきに似て黄なり.春の初花ひらく.故に元日草という.盆にうへて,新春席上の清賞とす.平安城におおし.春秋わかくうふべし.
偏鄙(いなか)には移し植れども,おほくは生ぜず.但所によりてよろしき地あるべし.寒月は,北ふさがりたる暖所にうへて,其うへに,ぬかをおおふべし.且又霜おほいをすべし.夏月は,日かげよろし.五月には,茎はかれて根はかれず.九月に発生す.此ときほりてあたたかな所にうつしうふべし.又盆にうへてよし.湿をいむ.また糞(こえ)を用ゆべからず.」

伊藤伊兵衛『花壇地錦抄』 (1695)巻四・五「草花 春之部」に「福壽草 初中.花金色(こんしき),葩(はなひら)多ク菊のことし.葉こまかなる小草なり.花朝ニ開,夕にねむり,其花又朝にひらきて,盛久敷物なり.○元日草共ふくづくくさともいふ.祝儀の花也」

伊藤伊兵衛三之丞画・同政武編『草花絵前集』 (1699) に「○福壽草 花金色にて,葩(はなびら)たくさんに菊のごとく,朝に開(さく)花夕(ゆうべ)にねぶり,其花また朝に聞く,さかり久敷物なり,〇一名元日草,〇一名ふくつく草,陽春より花さく,植(うえ)やうにて冬より咲事あり.」(左図)

貝原益軒『大和本草』 (1709) に「福壽草 フクヅク草とも元日草とも云 春初めより黄花を開く 盆にうへて賞す 花は朝開き夕はねふる. 又明朝ひらく 葉は胡蘿蔔に似て花は草山吹の如し 寒をおそる 夏は陰地を忌み糞を畏る また白花あり.」

寺島良安『和漢三才図会』(1713頃)に「 元日草  福寿草 △思うに,福寿草は洛東の山渓の陰処に生えている.冬は枯れ,春に宿根から生え出る.茎は肥え,高さは二,三寸.葉は胡蘿蔔(にんじん)や石長生(かつべら)(石草類)の葉に似ていて小さく,歳旦に初めて黄花を開く.半開の菊花に似ていて,人は珍重し,盆に植えて元日草と称する.春・夏には長さ一尺余になり,枝条(えだ)が生え,花は綻び開く.そうなると観賞するに堪えなくなる.
『五雑組』に歳蘭(さいらん)というのが載っている.「花は蘭と同じで,葉はやや異なっている.必ず歳の初めに花が開くので歳蘭という」(物部二)とある.これも元日草と同類の異種であろうか.」(右図)現代語訳 島田勇雄,竹島淳夫,樋口元巳訳注,平凡社-東洋文庫.

大岡春卜『絵本福壽草』 (1737) は福寿草のモノグラフではないが,冒頭に福壽草を配したのは春一番に咲く「元日草」だからであろう.(左図)


橘保国『画本野山草』 (1755 初版) 巻之四 に「元日草 花,金色.葩(はなびら)多く菊のごとし.葉,胡蘿蔔(にんじん)に似たり.はな,一重八重あり.又,深黄或は浅黄,又白もありといふ.朝にひらき,夕にねぶる.其はな,又翌朝ひらく.久しくあり.高さ一寸より五寸,又春の末に至れば八九寸ばかりのぴる.茎をのばし,枝をのばす.葉ひらく.正月より二月まであり.山原,又谷そこに生ず.近江国北山よ.出せり.一名福壽草,又漢名報春草.漢にも立春よりさくと有.報春鳥(うくいす)と同じ.よって,報春草といふ.」(右図)

引用した文献にも,既に八重や浅黄・白花の変異種があることが記されているが,江戸時代後期には,多くの園芸品種が育種され,延宝,元禄の頃すでに迎春用の観賞植物として一定の地位を得ていた.その後日本各地の野性種の中から変異を求めたり,実生により変化を求めて品種数は増加し,愛好家により受継がれたと思われる.
(続く フクジュソウ 2 (2/2) 園芸種 三段咲き)

2012年2月19日日曜日

トウキンセンカ Pot-Marigold (2/3) Turner, Geralde, Parkinson, 薬効 Calendulae flos, 欧州薬局方, EMEA, WHO

Calendula officinalis (A double-flowered cultivar (Shin-guro, Black-eyed))Marigold (Calendula) は古くから,薬用としても用いられていたが,花びらから鮮やかな黄色い色素が浸出されるため,サフランの安価な代用品として人気があった.また,チーズやバターに黄色い色をつけるためにも使われた.

ターナーは「この花で髪の毛を黄色に染める人がいる.神様が与えてくれた自然の色ほど満足のいく色ではないが」と書いている.

ジェラードは,オランダの薬屋には,「スープや水薬用に,また異なったいろいろな用途のために……スープは乾燥したマリゴールドがないとおいしくできないので」,樽一杯の大量の乾燥したマリゴールドの花びらが置いてあると記している(左図,ジェラード『本草あるいは一般の植物誌』より).

パーキンソンは,「この花は夏中咲いている.気候が温暖ならば冬でも咲く」といい,また園芸種の大花マリゴールドについて,「園芸種マリゴールドの茎は丸く,緑色で地面からたくさん分枝し,長い平たい葉をつける.葉は先の方が,一番広く,丸くなっているが,茎につく部分は細くなっている.花は花びら(舌状花)の数が実に多く(鱗片状のじとじとした頭から出てくるのだが),幾列にも並んでいて,それがぎっしりと重なり合っているものだから,真ん中のしべ(管状花)はほとんど見えないようなものもあり,花びらの数がもっと少なく,真ん中に茶色の小さなしべの集まりが見えるものもあり,花びらは二列か三列で,真ん中に大きな茶色のしべがあるものもある.花びらの一枚一枚は先の方がやや広がっていて,へりで二,三カ所切れ目が入っている.
花の色は,目もさめるような濃い金色のものもあるが,もっと薄い色のものもある.強い,上品な,よい香りがする.花が終わると,内側へ曲がった鈎形の種子が花頭にできるが,外側の種子がもっとも大きく,内側の種子がもっとも小さい.根は白く,地中に広がる.結実後,根が残ることもあるが,ふつう消えてしまい,出来た種子から発芽する.草も花も食用野菜として大変有益なものである.花は生のものも,乾燥したものもよく,ミルク,酒,肉や魚のスープ,飲み物に入れて用いられるが,心臓の働きをよくし,神経を柔わらげ,心臓や神経の方に集まった悪性の病気を追い払う働きをする.生の花から作ったシロップやジャムも,同じ用途に用いられ,同様の効果がある.」と書いている.(上図,パーキンソン『日当たりの良い楽園・地上の楽園』より)

花びらの殺菌作用や消炎作用は外傷の治療に役立つことがよく知られ,近代では第一次大戦の際,英国の有名な園芸家 Gertrude Jekyll (1843 – 1932) は彼女の土地でキンセンカを大々的に育て,その花を戦傷の治療のためにフランスに送った.

現在でも,欧州では乾燥した花は “Calendulae flos” として欧州薬局方 (EP 5) に “DEFINITION: Calendula flower consists of the whole or cut, dried, and fully opened flowers which have been detached from the receptacle of the cultivated, double-flowered varieties of Calendula officinalis L. It contains not less than 0.4 per cent of flavonoids, calculated as hyperoside (C21H20O12, m. wt. 464.4) with reference to the dried drug.” とあり,規格試験法が収載されている.

更に EMEA (European Medicines Evaluation Agency, 欧州医薬品審査庁) が発行したCOMMITTEE ON HERBAL MEDICINAL PRODUCTS (HMPC) の "MONOGRAPH ON CALENDULA OFFICINALIS L., FLOS” では,伝統的な使用法として,"for the symptomatic treatment of minor inflammations of the skin (such as sunburn) and as an aid in healing of minor wounds.” と “for the symptomatic treatment of minor inflammations in the mouth or the throat.” が挙げられている.

また,WHO (世界保健機構)の Monographs on Selected Medicinal Plants - Volume 2 の “Flos Calendulae”の項には,「薬効を支持する臨床データはないが,”Uses described in pharmacopoeias and in traditional systems of medicine” として “External treatment of superficial cuts, minor inflammations of the skin and oral mucosa, wounds and ulcus cruris”」と記載されている.(続く)