「チャタレイ夫人の恋人- Lady
Chatterley's Lover」に現れた植物 2024 のリストの,㉝.Honeysuckle.㉞.Guelder-rose.㉟.Foxglove.㊱.Eye-bright に関して,相応する学名,適切と思われる和名,下記5種の訳書における和名を記し,更に古典植物図譜の図版,コレクションからの写真・図を掲げる.古典植物図譜の図版は,plantillustrations.org 及び NDL のデジタル公開画像より引用した.各植物の詳しい情報は学名から Wikipedia で得る事が出来る.
❶伊藤整訳、新潮社、1964年(※性描写を削除した版)
❷伊藤整訳・伊藤礼補訳、新潮社、1996年(※完訳版)
❸永峰勝男訳、彩流社、1999年
❹武藤浩史訳、ちくま文庫、2004年
❺木村政則訳、光文社古典新訳文庫、2014年
Honeysuckle.1回,Lonicera
periclymenum, セイヨウスイカズラ:❶ - ,❷忍冬(すいかずら),❸スイカズラ,❹スイカズラ,❺スイカズラ
①Kops, J., Fl. Bat., vol. 1, t. 23 (1800)
②Oeder, G.C., Fl. Dan., vol. 6, t. 908 (1787-1792)
③Lindman, C.A.M., Bilder Nordens Fl., vol. 1, t. 66 (1922)
④スイカズラ(L. japonica),Ibaraki, Japan. 2020, April
⑤スイカズラ(L. japonica)Ibaraki, Japan. 2020, April
○英名も和名も子供たちが花の甘い蜜を吸う事に由来するのは,面白い.近所に両方が栽培されているが,花の時期の雰囲気は大分異なる.
Guelder-rose.1回,Viburnum
opulus, セイヨウカンボク:❶葎(むぐら),❷葎(むぐら),❸手毬灌木,❹テマリカンボク,❺テマリカンボク
①Bourdichon, J., Grandes Heures, p. 203 (1503-1508)
②Bessler, B., Hort. Eystett., vol. 1, t. 13, f. 1 (1620) ,花序全体が装飾花となった変種,手毬咲き
③Oeder, G.C., Fl. Dan., vol. 4, t. 661 (1771-1777)
④Esser, P.H.H., Giftpfl. Deutschl. (Esser), t. 106 (1910)
○北日本に自生のカンボク(肝木)に似るが,カンボクに比べて樹皮が薄くて割れ目が少ない点や,葯の色がカンボクは紫色なのに対しセイヨウカンボクは黄色である点などが異なる.
Foxglove.1回,Digitalis
purpurea, ジギタリス:❶ジギタリス,❷ジギタリス,❸ジギタリス,❹ジギタリス,❺ジギタリス
①Bourdichon, J., Grandes Heures., p. 146 (1503-1508)
②Dodoens., Stirp. Hist. Pempt., p. 169 f. 1 (1583)
③Curtis, W., Fl. Londin., vol. 1, t. 48, (1775)
④Laurent de Chazelles, Arbres et arbrisseaux, plantes, fleurs et fruits, peints pour être joints au Dictionnaire des jardinier, vol. 2, t. 347, f. a,b,c (1796)
⑤from a series of Postcards “British Wild Flowers”
○英名が “Foxglove” である事から,和名として「キツネノテブクロ」が使われることもあるが,”glove” は手袋由来ではなく,アングロ・サクソン語の “gleow” (小さな鐘をアーチ状の支柱に大きさの順番に並べた楽器)に喩えられたからとの事.(A. M. コーツ著,白幡洋三郎ら訳『花の西洋史 草花篇』)
Eye-bright.1回,Euphrasia
officinalis, アイブライト:❶小米草(こごめぐさ),❷ルリハコベ,❸コゴメ草,❹コゴメグサ,❺コゴメグサ
①Sturm, J., Sturm, J.W., Deutschl. Fl., vol. 1, t. 45 (1796)
②Palmstruch, J.W., Sv. Bot., vol. 4, t. 267 (1807)
③Baxter, W., Brit. Phaen. Bot., vol. 1, t. 72 (1834)
④Masclef, A., Atlas Pl. France vol. 3, t. 246 (1893)
⑤コヾメグサ (Euphrasia insigna ssp. iinumai, イブキコゴメグサ). 飯沼慾斎,『草木図説前編』,巻之十一(1852成稿).武田久吉博士 (1883 - 1972) によって,この『草木図説』を参考文献とし,コゴメグサ属の新種として,飯沼慾斎に獻名され Euphrasia Iinumae の学名がつけられた(Bull. Misc. Inform. Kew, 193 (1910))が,後にE. insigna(ミヤマコゴメグサ)の亜種とされた.
○ハエドクソウ科の半寄生草本.花の斑点がくっきりとした瞳孔のように見える種があるので,眼病に効果があると信じられ,Eye-bright(晴眼草)の名がある.植物の形状やその一部が人間の臓器に似ているのは,神がその臓器の疾患に薬効がある事を,人に知らしめるためだという考え(Doctrine of signatures(特徴説・象形薬能論))の一例.漢方にも「同類相補・以形補形」の考え方があるそうだ
0 件のコメント:
コメントを投稿