①. Dioscorides, P., “De materia medica”
(Codex Neapolitanus) (512)
②. Dioscorides, P., “De materia medica”
(Codex Vindobonensis) (?)
③. pseudo-Apuleius, “Herbarius” (Gonzaga,
Francesco) (15th century)
④. Pseudo-Apuleius, “De Herbarum
Medicaminibus.”, Pseudo-Antonius Musa, “De Herba Betonica.” (851/900) 9. Jh.,
2. Hälfte. Loire-Gegend. (15th century) “καλλιτριcον = lovely hair”
ドイツ人博物学者エンゲルベルト・ケンペルが,イチョウを Ginkgoとして,初めて西欧に紹介した際,その葉がホウライシダ類(Adiantum, 英名:Maiden hair fern)に似ている事を述べた.また彼は将軍謁見のための江戸参府の道中(1691年)で,箱根山中で薬効があると聞いて採取し,ハコネクサ(Fákkona Ksa)とその名を記したハコネシダ(現在有効な学名:Adiantum monochlamys D.C.Eaton)を,ホウライシダ屬のホウライシダ(A. capillus-veneris L.)と誤同定した.
ケンペル来日以前から,ハコネシダは,オランダ人がその婦人薬の薬効を認めたとして,「阿蘭陀草」の名が記録されている(前報).また,ホウライシダの古いラテン名で,その蘭語版が日本に伝えられたドドネウスの『Crŭÿde boeck(草木誌)』(初版 1554)にも記されている“Capillus-veneris”(ビーナスの髪)由来と思われる「カツテイラ」「ヘンネレス」「カツヘレサウ」「へねれんさう」が「蠻名」として記されている(前報).
ホウライシダ(A. capillus-veneris )は,ギリシャでは紀元前から薬草としてテオプクトスの本草書に,紀元後にはギリシャのディオスコリデスの本草書やローマのプリニウスの博物書に「黒いアディアンツム」として記載されている.
「アディアンツム」とは,ギリシャ語で「撥水性のある(Water-proof)」という意味で,草を水に漬けると葉が不思議な銀色の艶を帯び,水から出せば水をはじいて完全に乾いて見える事や,滝つぼや渓流の水しぶきのかかる所を好んで生育する事から来た名前のようだ.「ビーナスの髪」という名はローマ時代のイタリアが発祥らしいが,上記三書ではアフロディーテ(ギリシャ神話のビーナスに相当する女神)や,ビーナスの名に由来する名は記述されていない.
中世の本草書には,この“Capillus-veneris”の名は,イタリア地方の名で,初出は偽アプレイウスの書とあるが,確認はできなかった.
初期から,第一には脱毛防止,その後,腎臓結石,せき,黄疸,喘息などへの薬効が記されている.脱毛防止は
“Like cures like” の迷信で,茎がつややかな髪に似ているからであろうし,結石の破砕はこの植物が岩の割れ目にも生育する事から,岩や石を砕くと考えられたからであろう.また,通経や後産をスムーズに降ろすといった,江戸時代に日本に来た西欧人が,ハコネシダの薬効とした「産前後への著効」もこの時期から認められていた.
テオプラストス(Θεόφραστος, Theophrastos, Theophrastus,紀元前371年 – 紀元前287年)は古代ギリシャのレスボス島生まれの哲学者,博物学者,植物学者である.彼は植物学の祖とも呼ばれており,アリストテレスの同僚で,友人で,逍遙学派の主要人物の一人であった.厖大な著作を著したが,大半は失われた.現存するのはわずかであるが.『植物誌』および『植物原因論』(植物を体系的に論じた書.欠落もなく,ほぼ完全に伝わっている)が著名である.
★テオプラストス『
植物原因論』(
Enquiry
into plants, and minor works on odours and weather signs)(Sir Arthur Hort英訳,1916)には,
“BOOK
VII
OF HERBACEOUS PLANTS, OTHER THAN CORONARY PLANTS :
POT-HERBS
AND SIMILAR WILD HERBS.
Of certain properties and habits peculiar to certain herbaceous plants.
XIV. There are also the following
peculiarities in herbaceous plants, for instance that7 which we find
in ' wet-proof’ (maidenhair) ;8 the leaf does not even get wet when
it is watered, nor does it catch the dew,9 because the dew does not10
rest on it ; whence its name.11 There are two kinds, the white
‘wet-proof’ (English maidenhair), and the black (maidenhair) ; and both are
useful to prevent the falling off of the hair of the head, for which purpose
they are pounded up and mixed with olive-oil. They grow especially in damp
places. Some think that tirikhomanes1 (English maidenhair) is also
useful in cases of strangury. Its stem is like that of the black kind,, but it
has small leaves, which are close set and grow in opposite pairs ; there is no
root below, and the plant loves shady places.” とある.
(“Theophrastus: Enquiry into plants, and minor works on odours and
weather signs, with an English translation” by Sir Arthur Hort (1864-1935), The
Loeb Classical Library; London,G. P. Putnam's Sons (1916) による).
★小川洋子訳『テオブラストス 植物誌』 西洋古典叢書 京都大学学術出版会 (2015) の和訳には,
第七巻「花冠植物以外の草本植物-野菜類とそれに類した野生の草本類について」の第一四章「ある草本植物の特性と習性」で,
「草本植物にはまた次のような特性がある.例えば,アディアントンに見られるものがあげられる.すなわち,その葉は水に浸されても,露がおりても,湿ることがない.水分が葉に留まらないからである.そのことからこの名もつけられた.アディアントンには二種あって,一方は白く(チャセンシダ),他方は黒い(ホウライシダ).どちらも粉にしてオリーブ油に混ぜて用いると,脱毛症に効果がある.これらは主として湿ったところに生える.ある人々が考えているように,トリコマネス(チャセンシダ)は排尿困難にも効果がある.茎は黒いほうのアデイアントンに似ているが,葉は非常に小さく,密集し,向かい合ってついている.根は地中深くまでは生えていない.日陰を好む。」とあり,白・黒の二種のアディアントンがあり,どちらも育毛に効果がある.としている.黒がホウライシダで,白がチャセンシダと考定されている.
古代ギリシャのディオスコリデス(Pedanius Dioscorides, 40 – 90)は全5巻からなる『薬物誌 (Materia
madica)』(古希: Περὶ ὕλης
ἰατρικής)を母語であるギリシャ語で著した.『薬物誌』は,薬草図を付記されて1600年頃まで用いられ,薬草に関する歴史上もっとも影響を与えた書物となった.日本ではそのラテン語訳題 De Materia Medica libriquinque(逐語訳:「医薬の材料について」五書)を略して『マテリア・メディカ』とも通称される.多くの古代ギリシャの書物は中世盛期からルネサンス期に再発見されたものであるが,本書はそれらと異なり古代より途絶えることなく流布していた.『薬物誌』は何世紀もの間,何度も写本として書き写されたが,それらの写本にはしばしば注釈が書き加えられたり,アラビアやインドの文献に由来する若干の増補がなされた.特にアラビア由来の加筆部分はイスラム圏の薬草学の進歩を反映している.最も重要な写本群はアトス山の修道院群に伝えられて現在に残存している.
『薬物誌』は薬草学の歴史上重要な文献であるというだけでなく,古代のギリシャ人やローマ人やその他の文化における薬草の知識や使用法を知ることができるという点で貴重である.さらに,すでに失われたダキア人やトラキア人の言葉の植物の名前が記録されている.ぜんぶで600ほどの植物についての記述がある.
挿絵のついた写本が多く残っており(冒頭図),その一部は古く5世紀から7世紀にまで遡る.初期の写本の中で最も有名なものは Vienna Dioscorides (ウィーン写本)である.
英訳書
T. A. Osbaldeston ★“DIOSCORIDES DE MATERIA
MEDICA” Ibidis Press (2000) には,
”BOOK
FOUR: OTHER HERBS & ROOTS
4-136. ADIANTON
SUGGESTED: Adiantum foliis coriandri
[Bauhin],
Adiantum capillus veneris [Fuchs,
Linnaeus],
Herba capillorum-veneris — Maidenhair,
Venus’s Hair, Capillaire
Adiantum has little leaves similar to coriander, jagged on the top; and the
little stalks on which they grow are black, very thin, twenty centimetres long,
and glistening. The leaves are like filix [fern], very small. It bears no
[other] stalk, flower, or seed. The root is useless. A decoction of the herb
(taken as a drink) is able to help asthma, difficulty in breathing, jaundice,
the splenical, and frequent painful urination. Taken as a drink with wine, it
breaks stones [urinary, kidney], stops discharges of the intestines, and helps
those bitten by venomous creatures, and excessive discharges of the stomach. It draws out the menstrual flow and afterbirth. It
stops the spitting-up of blood. It is smeared on (raw) for venomous beast
bites, thickens the loss of hair [alopecia] and disperses
tumours [possibly goitre]. With lye it wipes off dandruff and scaly eruptions
of the scalp. With ladanum [1-128] and oil myrsinum [1-48] and inhalants (or
else oesypum [lanolin] and wine) it prevents falling
hair. A decoction of it (rubbed on with lye and wine) does the same. It makes cocks and quails more vicious, mixed with their
meat. It is planted for sheep around sheep enclosures [feed]. It grows in shady
marshy places, and around moist walls and fountains. It is also called polytrichon,
callitrichon, trichomanes, ebenotrichon, argion, or coriandrum aquaticum; the
Egyptians call it epiert, the Romans, cincinnalis, some, terrae capillus, or
supercilium terrae, and the Dacians, phithophthethela.” とある.
和訳の★鷲谷いづみ『ディオスコリデスの薬物誌』エンタプライズ
(1983/05 出版)には
136.ADIANTON Adiantum capillus-Veneris ホウライシダ(1)
Asplenium trichomanes チャセンシダ科チャセンシダ属の植物
アデイアントゥム(Adiantum)はポリュトリコン(Polytrichon)とも呼ばれるが,この植物の葉は,先端に鋸歯があって,コエンドロに似た小さいものであり,葉が出ている小さな茎は,ごく細く,1スパン〔約23cm〕ほどの長さで黒く輝いている.葉はフイリクス(Filix「プテリス」)(2)にも似ており非常に小さい.主茎も花も実もなく,根は薬用にはならない.
この草の煎じ汁を服用すれば,喘息,呼吸困難,黄疸,肝臓病,排尿困難などに薬効がある.これにはまた結石を砕き,下痢を止める効果があり,毒獣に咬まれたとき,胃の出血などにも効くが,これらの目的にはブドウ酒とともに服用する.また月経血を排出し,浄化を促す.吐血を止める作用もある.
生のままで塗ると,毒獣の咬み傷によく,脱毛症を治し,瘰癧を散らす.ライムギとともに用いると,フケや頭部膿疱疹をきれいに取り去る.ラグヌム(Ladanum)(3)およびギンバイカ油,スフイヌム,ユリ香油,あるいはオエシュプム(Oesypum「ラノリン」)およびブドウ酒と混合したものは,脱毛を抑える.煎じ汁を,ライムギおよびブドウ酒とともにすり込んでも同じ薬効がある.餌に混ぜニワトリやウズラに与えると闘争心を高める.ヒツジのために牧場に植えられることもある.この植物は,日陰地や湿地,じめじめした土手,泉のまわりなどに生育する.
(1)ウラボシ科クジャクシダ属の常緑シダ.世界の熱帯から温帯にかけて広く分布する.
(2)オシダ科のシダ.
(3)ハンニチバナ科キストス属の植物.
Callitrichon(l),Trichomanes,Ebenotrichon(2),Argion,Coriandrum aquaticum などと呼ばれる.エジプト人はEpier,ローマ人はCincinnalis(3)と呼ぶ.Terrae Capillus(4),Supercilium terrae(5)とも呼ばれる.ダキア人はPhithophthethelaと呼ぶ.
(1)美しい髪(ギ),(2)黒檀の如き黒髪(ギ),(3)縮れた髪(ラ),(4)大地の髪,(5)大地の眉(ラ)」とある.
先行のテオプクトスに比べると,育毛以外にも配合剤の薬効が大きく拡がり,また,鳥類に与えると喧嘩っ早くなると,不思議な薬効も追加されている.また,後によく使われる名前「ビーナスの髪(Capillus veneris)」はないが,特徴的な黒いつややかな細い茎に着目して,「黒檀の如き黒髪」「大地の髪」や「大地の眉」などの異名があるとされた.
古代ローマの著名な博物学者,プリニウス(Gaius Plinius Secundus, 22 / 23 – 79)『博物誌 “Naturalis historia”』 (77 -)
羅甸:based on Karl Friedrich Theodor Mayhoff (1875‑1906)'s Teubner v. (1906) of “Lacus Curtius” ad litteras mittendas Bill
Thayer. Pliny, ed. Mayhoff (1875–1906) Naturalis Historia (5 vols). Leipzig:
Teubner
英訳:H. Rackham “Pliny Natural History” The Loeb Classical
Library (1949)
和訳:大槻真一郎編『プリニウス博物誌 植物薬剤篇』八坂書房 (1994)
プリニウスの著作で唯一現存しているのが,自然と芸術についての百科全書的な37巻の大著「博物誌」である.ローマ皇帝ティトゥスへの献辞の中で彼自身がのべているように,この書物には,100人の著者によるおよそ2000巻の本からえらびだした2万の重要な事項が収録されている.最初の10巻は77年に発表され,残りは彼の死後おそらく小プリニウスによって公刊された.この百科全書がとりあげている分野は,天文学,地理学,民族学,人類学,人体生理学,動物学,植物学,園芸,医学と医薬,鉱物学と冶金,美術にまでおよび,余談にも美術史上,貴重な話がふくまれている.この書には何カ所かに Adiantum が記述されているが,主な二カ所を以下に引用する.
BOOK XXI.
羅甸:lx. Differentia foliorum et hic quae in
arboribus, brevitate pediculi ac longitudine, angustiis ipsius folii,
amplitudine, iam vero angulis, incisuris, odore, flore. diuturnior hic
quibusdam per partes florentibus, ut ocimo, heliotropio, aphacae, onochili.
multis inter haec aeterna folia, sicut quibusdam arborum, inprimisque
heliotropio, adianto, polio.
英譯:LX. The leaves of these plants differ
as do the leaves of trees : in shortness or length of stalk, in the narrowness
of the leaf itself, in its size, and further in the corners, and indentations ;
smell and blossom differ also. The blossom lasts longer on some of them, which
flower one part at a time, on ocimum for example, and on heliotropium, aphace
and onochilis. Many of these plants, like certain trees, have leaves that never
die, the chief being heliotropium, adiantum,
hulwort.
和訳:六〇 葉のいろいろ
…樹木において葉の違いがあるように、これらの植物にもその違いがある。葉柄の長短、葉そのものの狭さや広さ、そのうえ葉の角、縁のぎざぎざ、匂い、花といった点でも違いがある。花が一部分ずつ咲いていく場合には、より長く咲いていられる。例えば、メボウキ(バジル)、ヘリオトロピウム(キダチルリソウ属)、アファケ、オノキリス(オノケリス。ムラサキ科)がそうである。そのなかで多くのものは、いくつかの樹木のように、葉が枯れない。おもにヘリオトロピウム、アディアントウム(ワラビ科シダの類)、ポリウム(シソ科ニガクサ属)がそうである。
BOOK XXII.
羅甸:xxx Aliud adianto
miraculum: aestate viret, bruma non marcescit, aquas respuit, perfusum mersumve
sicco simile est — tanta dissociatio deprehenditur —, unde et nomen a Graecis
alioqui frutici topiario. quidam callitrichon vocant, alii polytrichon,
utrumque ab effectu. tinguit enim capillum et ad hoc decoquitur in vino cum
semine apii adiecto oleo copioso, ut crispum densumque faciat; et defluere
autem prohibet.
duo genera eius: candidius et nigrum
breviusque. id, quod maius est, polytrichon, aliqui trichomanes vocant. utrique
ramuli nigro colore nitent, foliis felicis, ex quibus inferiora aspera ac fusca
sunt, omnia autem contrariis pediculis, densa ex adverso inter se, radix mula.
umbrosas petras parietumque aspergines ac fontium maxime specus sequitur et
saxa manantia, quod miremur, cum aquas non sentiat.
calculos e corpore mire pellit
frangitque, utique nigrum, qua de causa potius quam quod in saxis nasceretur a
nostris saxifragum appellatum crediderim. bibitur e vino quantum terni
decerpsere digit. urinam cient, serpentium et araneorum venenis resistunt, in
vino decocti alvum sistunt. capitis dolores corona ex his sedat. contra
scolopendrae morsus inlinuntur, crebro auferendi, ne perurant; hoc et in
alopeciis. strumas discutiunt furfuresque in facie et capitis manantia ulcera.
decoctum ex his prodest suspiriosis et
iocineri et lieni et felle subfusis et hydropicis. stranguriae inlinuntur et
renibus cum absinthio. secundas cient et menstrua. sanguinem sistunt ex aceto
aut rubi suco poti. infantes quoque exulcerati perunguuntur ex iis cum rosaceo
et vino. — (Virus folii in urina pueri inpubis tritum quidem cum aphronitro et
inlitum ventri mulierum, ne rugosus fiat, praestare dicitur.) — perdices et
gallinaceos pugnaciores fieri putant in cibum eorum additis, pecorique esse utilissimos.
英訳:BOOK XXII.
Maidenhair.
XXX. Maidenhair
too is remarkable, but in other ways. It is green in summer without fading in winter
; it rejects water; sprinkled or dipped it is just like a dry plant—so great is
the antipathy manifested—whence too comes the name given by the Greeks a
to what in other respects is a shrub for ornamental gardens. Some call it
lovely hair c or thick hair,d both names being derived
from its properties. For it dyes the hair, for which purpose a decoction is
made in wine with celery seed added and plenty of oil, in order to make it grow
curly and thick ; moreover it prevents hair from falling out.
There are two kinds : one is whiter
than the other, which is dark and shorter. The larger kind, thick hair, is
called by some trichomanes. e Both have sprigs of a shiny black,
with leaves like those of fern, of which the lower are rough and tawny, but all
grow from opposite footstalks, close set and facing each other ; there is no
root. It is mostly found on shaded rocks, walls wet with spray, especially the grottoes
of fountains, and on boulders streaming with water—strange places for a plant
that is unaffected by water ! a It is remarkably good for expelling
stones from the bladder, breaking them up, the dark kind does so at any rate.
This, I am inclined to believe, is the reason why it is called saxifrage b
(stone-breaker) rather than because it grows on stones. It is taken in wine,
the dose being what can be plucked with three fingers. Diuretic, the
maidenhairs c counteract the venom of snakes and spiders ; a
decoction in wine checks looseness of the bowels ; a chaplet made out of them
relieves headache. An application of them is good for scolopendra stings,
though it must be taken off repeatedly for fear of burns. The same treatment applies
to fox-mange also. They disperse serofulous sores, scurf on the face and
running sores on the head.
A decoction of them is beneficial for
asthma, liver, spleen, violent biliousness and dropsy. With wormwood an
application of them is used in strangury and to help the kidneys. They promote the afterbirth and menstruation. Taken in
vinegar or blackberry juice they check haemorrhage. Sore places too on babies
are treated by an ointment of maiden- hair with rose oil, wine being applied
first.d The leaves steeped in the urine of a
boy e not yet adolescent. if they be pounded with saltpetre and applied
to the abdomen of women, prevent the formation of wrinkles. It is
thought that partridges and cockerels become better
fighters if maidenhair be added to their food, and it is very good for
cattle.
The slimy juice of the leaves added to
the urine . . . and beaten up with saltpetre." But rinus tritum is strange.
b: αδιαντον, “water proof”
c: καλλιτριcον.
d: παλνιτριcον.
e: Perhaps
child of either sex is meant.
和訳:III 草本類の薬効
三〇 アディアントゥム
62 アディアントゥムにも珍しいことがある。夏は緑色で冬にも色が褪せず、水をはじき、水をふりかけても、水に浸しても乾いたままのようである。このように水に対して明らかな反発性があるので、ほかの点では庭園向きのこの灌木にギリシア人はアディアントゥム (「防水草」の意)という名をつけたのである。またカリトリコン(「美髪草」の意)とかポリユトリコン(「豊かな髪」の意)とか呼ぶ人もいるが、どちらもその特性に由来している。これで髪を染めるからである。このためにはアピウムの種子と一緒にブドウ酒で煮て、油をたっぷり加える。すると濃い巻き毛の髪になり、しかも脱毛を防止する。
63 その種類は二つで白いものと黒くて短いものがある。大きいほうはポリユトリコンといい、トリコマネス(「乱れ髪」の意)と呼ぶ人もいる。どちらの若枝も光沢のある黒色で、葉はシダのようで下の方の葉はざらざらしていて暗褐色であるが、どれも相対する葉柄から生じており密集しながら向かい合っている。根はない。日陰の岩や水しぶきで湿った壁、とくに泉のある洞窟、水の流れ落ちる岩盤に見られる。水を全く苦にしないのは驚くべきことである。これは結石を見事に砕いて体外に出す。少なくとも黒いものはそうである。岩盤の上に生えているからというよりは、むしろこの理由からサクシフラグム(「岩砕き」の意)と名づけられているのではないかと思う。三本の指でつまんだ分だけブドウ酒に入れて飲む。排尿を促し、ヘビやクモの毒に効き、ブドウ酒に入れて煮ると下痢を止める。これで作った葉環は頭痛を鎮める。ムカデに唆まれた時にはこれを貼るが、炎症を起こさないようにたびたびはがさなければならない。脱毛症の場合も同様である。腺踵や顔の粃糠疹、頭部の滲出性潰瘍を散らす。
65 この煎じ汁は喘息、肝臓、脾臓、胆汁過多、水腫に有効である。ニガヨモギと一緒に貼ると有痛性排尿困難、腎臓に効く。後産と月経を促す。酢かキイチゴの汁に入れて飲むと出血を止める。幼児の腫れ物にはまずブドウ酒を塗り、それからこれとバラ油を混ぜたものを擦り込む。葉はまだ髭の生えない少年の尿に浸し、ソーダを加えて潰したものを婦人の腹に塗るとしわがでるのを防ぐといわれている。ヤマウズラや若いオシドリの餌に加えると闘争力が増し、家畜にも非常によいといわれている。」とある.
★アプレイウス・プラトニクスによる5世紀に著された『本草書(Herbarium)』は,1481年に『アプレイウス・プラトニクスの本草書(Herbarium Apulei Platonici)』の名で出版された.初期のラテン語本草書で後世にもっとも影響を与えたものが,このアプレイウスの本草書である.この人物は,アプレイウス・パルパルス,アプレイウス・プラトニクス(Apuleii Platonici),あるいは『黄金のロバ』(Golden
Ass)の著者
Apuleius of Madaura (124–170 CE) と区別するために偽アプレイウス(Pseudo-Apuleius)として知られている.
この本草書は大プリニウス,テオプラストスの著書や,四〇〇年ごろのギリシャ資料を寄せ集めた,さして重要ではない医学処方箋集である.知られている限りでもっとも古いその写本は現在ライデンにあり,七世紀のもので,おそらくフランス南部で書かれたものであろう.東方の『ウィーン古写本』の図と同様に,イタリアからライン地方にかけての西ヨーロッパの画家たちに,以後,幾世代にもわたって材料を提供してきたのである.印刷機の発明後すぐの時代で,印刷の恩恵にもあずかり,”世界最古の印刷されたハーブの本”として成功した.ディオスコリデスの『薬物誌』も六世紀前半にはラテン語に翻訳されたので,この二つの著作が暗黒時代のヨーロッパでは,植物に関する知識の重要なテキストとなったのであった.
偽アプレイウスの
“Herbarium Appulei Platonici” の適切なテキストは見いだせなかったので,写本や木版本の図を示す.
Ⓐ.Gonzaga, Francesco
/ Julius <Papst, II.>: Herbarium Apuleii Platonici, mit Widmungsbrief des
Autors an Kardinal Francesco Gonzaga bzw. an Kardinal Giuliano della Rovere,
[Rom], [ca. 1481/82]
“καλλιτριcον.” (lovely hair)
Ⓑ. Pseudo-Antonius
Musa, De herba vettonica liber; Pseudo-Apuleius Platonicus, Herbarium or De
medicaminibus herbarum liber, imperfect
Date: Early 15th
Century
“NOMEN HERBAE
POLYTTRICUM. (Names of the herb polyttricum)
A græcis dict
(The Greeks call it) Adiaton.
Alii (others) Polyttricu.
Alii (others) Tricuman.
Alii (others) Euentricon.
Alii (others) Itteres.
Aegyptus (The Egyptian [call it]) Etlim.
Romani (The Romans [call it]) Cincinnalis.
Alii Terre
capillos. Alii Stupcillium terræ
Nascitur in parientinis & humerosis locis. (It grows in ??? & ??? areas.)
AD COLIDOLOREM.
Herba Polyttricu q habet ramulos qsi seta porci
na eius folia cotrita cu piperis gran. ix. & sem. co
riandri gran. ix. cotrita simul cu uino optimo da
bis bibere introeunti in balneu. facir et ad capil/
los mulieru nuturiendo.”
続く