2011年6月11日土曜日

コモチマンネングサ いつまで草 (1/2)

Sedum bulbiferum = With little bulbsビルの屋上緑化に用いられるセダムの仲間.セダムは多くの種類が手のかからないグランドカバーとしてホームセンターで売られているが,これは観賞価値は低い野生種.名前は花期に葉腋に不定芽を生じることによる.これが落ちて根付く.セダムというと乾燥に強く乾いたところが好きとのイメージがあるが,これは田のあぜ道にも多く生えていて,湿性地にも繁茂し,稲作と共に入った史前帰化植物と考えられている.全体に黄緑色でややつやがあり,茎は柔らかく多肉質,長い茎で地表を這い,枝分かれする.葯には花粉ができないことが多いので種子ができることもほとんどない.多肉ゆえ引き抜いておいても枯れずに花をさかせる.庭では隣家との境のフェンスの下,やや湿った所に知らぬうちに生えてきた.黄色い花は鮮やかだが,花は小さく,草姿は間延びしているので,退場を願おうかと思っている.

佐竹ら編『日本の野草 草本』(1982), 平凡社 にはこの植物の属するマンネングサ属,マンネングサ亜族には亜種・変種を含めて15種が日本に野生で見られると記載されている.

生育地も海岸から高山,乾燥地から渓流脇まで広い.冬でも枯れず,抜いてもなかなか枯れないので,「イツマデグサ」と呼ばれていた.

清少納言『枕草子 第六七段』の「草は」の項で
「あやふ草は岸の額に生ふらんも、實にたのもしげなくあはれなり。いつまで草は生ふる處いとはかなくあはれなり。岸の額よりもこれはくづれやすげなり。まことの石灰などには、えおひずやあらんと思ふぞわろき。」と記した.

この「いつまで草」は,摘んでも枯れないところから,マルバマンネングサではないかと 湯浅浩史 東京農業大学 短期大学部・環境緑地学科教授はいう.

これには異論もあって,橋本治『桃尻語訳 枕草子(上)』 1987 年 河出書房新社では,「危険草(あやうぐさ)は崖っぷちに生えてるっていうのもさ、なるほど、心配だわよね。いつまで草は、もうさァ、はかなくっていいのよねェ。(ガケっぷちよりもこっちのが崩れやすいんじゃないの? 「ホントの漆喰壁なんかには絶対生えてなんか来ないんだろうなァ」って思うとダサイけどさ)〔註‥〝いつまで草〞っていうのは壁に生えるっていうの〕」と訳し,挿絵では「いつまで草」は「キズタ」だとしている.
また,『大庭みな子の枕草子』 2001 年 講談社では「あやう草*は、岸の額ぎわに生えるとか、あやうい感じをそう名づけたものか。いつまで草*は岸の額よりあやうげな石灰の地に生えるとか、ほんとうの石灰の壁に生えるというわけでもなく、いつまでもつかと思われるはかなさ。」と訳し注で「あやう草、いつまで草、ことなし草は不詳。」としている.

では江戸時代はどう呼ばれていたのか,その時代の百科事典や園芸書を見てみよう.(続く)

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