Pittosporum tobira年の暮れにはトベラの枝を門扉に挿して,邪鬼を祓う風習があった.
日本(本州岩手県新潟県以南・四国・九州・琉球)・朝鮮・中国(江蘇・浙江・福建・廣東)・台湾の海岸に分布する,常緑の灌木.潮風に強いので都会のスモッグにも耐性があり,シャリンバイと共に,都心の公園や交通量の多い幹線道路のグリーンベルトの植え込みにも使われる.(画像撮影 2007年5月ひたち海浜公園)
春咲く花は小さいながら甘い良い香りがして,西欧ではその香りがオレンジの花に似ているとして, “Japanese mock orange 日本オレンジもどき” という名前で呼ばれ,海岸近くの公園や庭園に植えられている.2006年4月に訪れた米国ノースカロライナの海岸では花をつけた大きな繁みを見たし,カリフォルニアでも海岸に植えられていると同行した友人が言っていた.
葉や茎,根には悪臭があり,また,葉を燃やすとはぜて燃えるので,その音と臭気で鬼を祓うと考えたのか,むかし節分や除夜に,この木の枝を門扉に挿して魔よけとしたことから,扉の木(とびらのき)と言われ,それがトベラになったとされている.
深江輔仁『本草和名』(918頃) 石南草に「和名止比良乃岐」と,源順『倭名類聚抄』(934頃) 石楠草に「和名止比良乃木、俗云佐久奈無佐」とある.
江戸時代に下ると伊藤伊兵衛の園芸書,『花壇地錦抄』(1695)巻三「冬木之分 笹のるい」に,「とべら 木 葉ハしやくなんげのごとく花ハミるかいなし」また,同書の「草木植作様伊呂波分」には「植替二三月時分」とあり,庭園樹として栽培されているが花は鑑賞価値が低いとされていたこと,石南草・石楠草と呼ばれていたのは葉がシャクナゲに似ているからということが分かる.
貝原益軒『大和本草』 (1709) の『諸品図(中)』(1715?)には,「除夕(除夜)ニ国俗此木ノ枝ヲ扉ニ挟テ来年疫鬼ノフセギトス 故ニトヒラノ木ト云 葉ハ臭味共ニアシ(悪し) 花ノ香ヨシ 葉ノ中ノ筋ハ白シ」とある(上図).
また寺島良安『和漢三才図会』(1713頃)の巻第八十二 香木類には(右図)
「扉木 とべら とびらのき
正字未詳〔『和名抄』(草木部木類)では、石楠草の三字を用いている〕
俗に止比良乃木(とびらのき)という。いま止閉良(とべら)という。
△思うに、この樹は山中に多い。現今では、人家の庭園でもこれを植えている。樹葉の状は楊梅に似ていて臭い香がある。伝えによれば、除夜にこの樹を門扉に挿すとよく疫鬼を避けることができる。それで扉木という、という。四月に小白花を開き、実は四、五顆(つぶ)ずつ群がって結生する。青色でやや熟すると自然に裂ける。中に赤色の子があって、水木犀(もつこく)(香木類)の子に似ているが大きい。
牛病を治す。 葉を擦り揉み、塩を少しばかり加えまぜ、これを与えるとよい。」(現代語訳 島田勇雄,竹島淳夫,樋口元巳訳注,平凡社-東洋文庫)とある.
放射線鬼や増税鬼もこれで防げればよいのだが.
Test
8 年前