2011年8月22日月曜日

バジル メボウキ (2) 羅勒 江戸本草書,大和本草,和漢三才図会,本草綱目啓蒙,

Ocimum basilicum 現在イタリアンのスパイスとしての価値が高いが,日本には江戸時代に中国から渡来したといわれていて(出典不明),薬用植物としての価値が高かった.

中国での呼び名「羅勒-らろく」がそのまま使われ,香草や野菜として用いられたほか,種を目にはいった塵を採るのに使ったので「目箒(めはばき,めぼうき)」とも言われた.種子はグルコマンナンを多く含むため、水分を含むと乾燥状態の約30倍に膨張し、ゼリー状の物質で覆われる,それが塵を吸着して目を傷めずに塵が取れるという仕組み.しかし,Wikiの英語版・中国語版では「目箒」の効果については言及していない.
東南アジアやアフガニスタンでは、水に浸した種子をデザートや飲み物にするとのこと.また中国では種子を「明列子」と呼び,水を加え膨張させて摂食すると,満腹感を与え,腸の蠕動を刺激するダイエット食品として売っている.

江戸時代の文献には以下の様にある.

〇貝原益軒『大和本草』 (1709)巻之九 草之五 雑草類
羅勒(メバハキ)として「---實ヲ目ニ入レハ目ノアカヲトル他ノ物ハ少ニテモ目ニ入レハイタム是ハイタマス ---」(左図,中村学園)

〇寺島良安『和漢三才図会』(1713頃) 葷草類
羅勒(らろく) 蘭香 香菜 瞖子草(えいしそう) (右図)
『本草綱目』(菜部葷菜類羅勒[集解])に次のように言う。羅勒はあちこちにある。三月に棗(なつめ)の葉の生え出るときをまって種(う)えると生える。そうでなければ生えない。いつも魚腥水(うおのあらいしる)・米泔水(こめのしろみず)・泥溝水(みぞのどろみす)をそそいでやると、香りが出て茂る。糞水(こえ)をやるとよくない。三種あって、一種は紫蘇の葉に似ている。一種は葉大きく、二十歩内に香りが漂う。一種は生菜とすることができるものである。餞饉の年には飢えを救うのに用いるとよい。子の大きさは蚤ぐらいで、褐色で光らない。七月に子を収穫する。
羅勒子(らろくし) 乾いた子を用いて目の腎(かすみ)や塵が目に入ったのを治す。三、五顆(つぶ)を目の中にそっと入れる。しばらくすると湿り脹(ふく)れて、塵と一緒に出てくる。目はちょっとの塵が入ってもころころするのに、この子なら三、五顆入れても何のさまたげにもならないのは一つの不思議である。(現代語訳,島田勇男ら,1987年)

〇小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1803-1806) 巻之二十二
羅勒 メバゝキ 蘭香菜 蘇芳
野生ナシ。種ヲ伝へ種ユ。四月棗葉初テ出ル時、地二下シテ即生ズ。苗長ジテ一尺余二至ル。方茎、枝葉、皆両対ス。葉ハ爵状(イヌコウジュ)葉二似テ、浅緑色、香気アリ。枝梢ゴト二六七寸ノ穂ヲ出シ、葉上ゴトニ茎ヲ周リテ花ヲ生ズ。紫蘇花二似テ、白色。後萼ゴト二四子アリ。熟シテ黒色。秋深二至テ苗根共二枯。其子至テ小サク、車前(オホバコ)子ノ如シ。水ヲ見レバ即外二白脂ヲ纏フテ一分余ノ大サニナル。故ニ目中ニ入テ痛マズ、能塵ヲ粘シテ出。故ニ、メバヽキト云。

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