Nandina domestica
江戸時代の本草書・園芸書での記事(1)
貝原益軒『大和本草』 (1709),巻之十一,園木に「南天燭」として「本草灌木類ニノセタリ.移シ植ルニ活キ易移シ?年花ツホミヲ盡折厺ヘシ.然ズバ木衰フ.肥壌ノ地ニ植ヘ時々糞ヲ施セハ栄ヘ美ハシク実多シ.綱目ニ載タル沉括カ筆談ノ説當レリ」とあり,移植しやすく,多肥により観賞価値がより高く成長する事を記した(左図).
寺島良安『和漢三才図会』(1713頃),灌木類「南天燭(なんてん,ナンテンチョツ)」の項に,いくつかの漢名を挙げた上(右下図),
「『本草綱目』(木部潅木類南燭〔集解〕)に次のようにいう。
南燭は木であるが草に似ている。それで草木の王と称する。人家では多く門や塀のそばの庭に植えている。この木はなかなか大きくなりにくい。はじめ生え出てから三、四年は状は(とうな)のようで、また梔子(くちなし)にもよく似ている。二、三十年で大株になる。葉は対生しない。此禦(さんばん,沈丁花の類)に似ていて光沢があり滑らかである。
味は酸っぱい。冬にもめげず凋まず,枝・茎は徴紫。大きなもので高さ四、五尺。大へんに肥えて脆く推(くだけ)折れやすい。七月に小白花を開き、実は群がって結ぶ。生(わかい)のは青く,九月に熟すると紫色になる。内に細子があって味は甘酸っぱい。小児はこれを食べる。汁を取って米を浸し、烏飯(道術家の食物という)を作って食べる。身体によい。これを青精飯という。あるいは子は丹のように赤いともいう。
枝・葉〔苦酸、渋〕 泄(げり)を止め、睡(ねむけ)を除き、筋を強くし、気力を益す。長らく服用しつづければ、長生きし餓えることはなくなる。
子〔酸甘〕 筋骨を強くし、気力を益し・精を固くし、顔色はつやつやする。」
と薬効が大であることを記し,更に,
「△思うに、南天燭〔俗に南天という〕は『画譜』には闌天竹(らんてんちく)とある。葉は大へん竹に似ていて、子がなり穂が出来る。丹砂のような紅色で、いつまでも色はあせない。これを庭に植えて火災を防ぐ。大へん効験がある。また糖蜜に入れて食用に供するともいう。
元来、山中に産するものであるから、湿を悪む性質がある。肥料には茶の煎滓(いりかす)を用いたり、米の泔水(とぎしる)を注いでもよい。子を播いてよく芽生える。子は朱赤色。皮を剥ぐと内は白く、大豆の肉のようで二片に分かれる。まだ紫色で内に細子のあるものは見たことがない。
近頃、子の白い南燭があって、珍とされている。一般に、南燭の葉を饙飯(こわめし)に敷いたり、檜の葉を饅頭に敷いたりして人に贈るが、これはいずれも無毒だからである。だいたい、この樹は大きくなりにくいとはいうが、山陽の地などには大木があり、作州や土州の山には長二丈余、太さ周一尺二、三寸のものがある。枕に作り、俗に「邯鄲の枕」という〔邯鄲の枕の事については中華の巻を見よ〕。希有の物なのでそう称するのである。遠州の一の宮(小国神社)は満山これ南天で、実の盛りのときは大へん美しい。」(現代語訳 島田・竹島・樋口,平凡社-東洋文庫)
と,多くの記事がある.前半の「実は熟すると紫色になる」の記事は『本草綱目』の引用だろうが違和感がある.後半には良安の観察も組み入れられ,シロミナンテンが現れた事や当時の使用法や伝承が記されていて興味深い.
ナンテン (1/4) 特異な花,出雲風土記・明月記
ナンテン (3/4) 花壇地錦抄・増補地錦抄・本草綱目啓蒙・廻国奇観
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