Helianthus annuus
1:Chrysanthemum Creticum. 2: Chrysanthemum Peruvianum (BHL/The Getty Research Institute) |
1904年リプリント版 (BHL) |
この書には一ページ大の,囲みの中に多くの植物を描き込んだ木版画がのせてある.その何点かはドイツ人画家クリストファー・スウィッツァー(Christopher Switzer, f 1810)によるオリジナルの図だが,多くの図版は,マティアス・デ・ロベル,カロルス・クルシウスの著作や,クリスピン・ファン・ドゥ・パスの『花の園』(Hortus Floridus)の図版をコピーしたもので,しかも粗雑な彫り方で,添付されているすばらしい説明文にそぐわない.
この書は当時の国王,チャールズ一世(Charles I, 1600 – 1649, 在位:1625 - 1649)の皇后で,園芸の愛好者ヘンリエッタ・マリア・オブ・フランス (Henrietta
Maria of France, 1609 –1669) に献呈され,その後彼はチャールズ一世のお抱え植物学者となった.
パーキンソンは,彼自身が海外から導入した花卉,彼がはじめて記録した野生由来の庭園植物など,多数の庭園用観賞植物に言及した最初の人であった.
パーキンソンは『太陽の園』の記事で,ヒマワリはこの堂々たる華麗な花は,イギリスでは,すっかりおなじみになっている植物だとし,また数種の品種(小型種や叢生種),およびジェラードと同じく,全草からテレピン油の香りがすると述べている.一方調理して食べられないことはないが,自分には強すぎるとも言っている.
★Paradisi
in sole paradisus terrestris, by John Parkinson.
295 The Garden of pleasant Flowers.
CHAP.
LXII.
Chrysanthemum. Corne
Marigold.
キク,麦畑のキンセンカ
A Lthough the sorts of Corne Marigolds,
which are many, are fitter for another then this worke, and for a Catholicke
Garden of Simples, then this of Pleasure and Delight for faire Flowers; yet give
me leave to bring in a couple : the one for a corner or by-place, the other for
your choisest, or under a defenced wall, in regard of his statelinesse.
何種もの麦畑のキンセンカ(Corn Marigold)があるが,この「美しい花の喜びと輝き」の本よりは,他の著作やカソリック教会の薬草園に適している.しかし,ここに二種を述べるのをお許し願いたい.一つは(庭の)隅や目立たない場所でもよいが,もう一つはその堂々とした姿からして,あなたがぜひ選ぶべき花であり,柵で守るべき花でもある.
1. Chrysanthemum Creticum. Corne Marigold of
Candy.
Sibthrop, Flora Graeca (1837) BHL/LNM |
1.
クレタ島のキク,クレタの麦畑のキンセンカ(シュンギクChrysanthemum coronarium)
この美しい花冠のキクは,多くの部分で二フィートほどの一本立ちの茎を持ち,全ての節から翼のある,裂けて,切れ目が入って多くの部分に分かれ,更に数多くの部分や葉片に分かれた葉がでる.花は鱗(総苞片)に覆われた頭(総苞)から開き,10-12 枚ほどの,美しいが薄黄色で,花弁の根元ではより色の薄い大きな花弁(舌状花)よりなる.中心部には黄色い糸くず(筒状花の蘂か?)に円形に囲まれ,どちらも他の Corne Marigold より大きく,良い香りがする.種は白っぽいか褐色で,根は毎年枯れる.
2.
Chrysanthemum Peruvianum, siue Flos Solis.
The
golden flower of Peru, or the Flower of the Sunne.
ペルーのキク,つまり太陽の花
ペルーの黄金花,あるいは太陽の花
BHL/MoBot |
この美しく堂々とした植物は,最近ではみんなに親しまれている.背の高いのや低いの(夫々茎が枝がなく一本立ちの,多くの枝を出すもの.種が白いの,黒いの.葉の形や花の形が違わなくても大きなもの,小さなもの)と多くの種類がある.(種を播くと)最初にカボチャのように双葉を出し,続いて二枚或は四枚の葉がその上に出てきて,全ての方向に種々の距離で葉を次々と天辺までつける,太い茎を成長させる.時々は,また場所にもよるが,7,8,10フィートになる茎には,幹や茎から数多くの大きな ribbed な foot-stalke には,非常に大きく,下(茎に近い方)が広く,先端は尖った丸く硬く毛の多いくすんだ緑色の,下を向きかげんの葉をつける.幹の頂上には一つの巨大で幅の広い(大きな直径の)花をつけ,これは太陽に向かって頭を傾ける.緑の鱗(総苞片)に覆われた花頭(総苞)からは,大きな一重のキンセンカに似ているが,糸くず狀の,短い花の head そっくりな,中央の黄色い花盤の周りを,多くの長い黄色い花弁が縁どっている.その一つ一つの下には,どんなアザミの種よりは大きいが,ウリ類の種に幾分か似ているが,それほどは大きくなく,それよりは丸い種が,びっしりと奇妙な方式で配列されている.だから種がとれてしまうと,(種の抜けた)空所やへこみは蜂の巣そっくりに見える.種は場所によって(ことなるが)暑い地方では真っ黒や真っ白で巨大あるいは大きいが,当所ではそれほど大きく,黒くも白くもないが,時折は黒あるいは灰色がかかっている.
Some sort riseth not up halfe the height that
others doe, and some againe beare but one stemme or stalke, with a flower at
the toppe thereof; and others two or three, or more small branches, with every
one his flower at the end ; and some so full of branches from the very ground
almost, that I have accounted threescore branches round about the middle stalke
of one plant, the lowest neare two yards long, others above them a yard and a
halfe, or a yard long, with every one his flower thereon ; but all smaller then
those that beare but one or two flowers, and lesser also for the most part then
the flower on the middle stalke it selfe.
何種類かは他の半分ほどの草丈で,幾種類かは,その頂きに一つの花をつける一本立ちの幹や茎を有している.他のは,2-3本,もしくはそれ以上の小さな枝を出し,その頂き全てに花をつける.他に,地面すれすれから多くの枝をいっぱいに出すものもあり,私は一本の植物で中心の茎から周りに,低いのは半ヤード,高いのは一ヤード程で,夫々に花をつけた,60本もの枝が出ているのを見たことがある.しかし,何れの花も,一個あるいは二個のみの花をつけるものよりは小さかったし,殆ど全ての部分が,中心の茎についた花よりも少なかった.
The whole plant, and every part thereof above
ground hath a strong resinous sent of Turpentine, and the heads and middle
parts of the flowers doe oftentimes (and sometimes the joynts of the stalke
where the leaves stand) sweat out a most fine thin & cleare Rossin or
Turpentine, but in small quantity, and as it were in drops, in the heate and
dry time of the year, so like both in colour, smell, and taste unto cleare
Venice Turpentine, that it cannot be knowne from it : the roote is strongly fastened
in the ground by some greater roots branching out, and a number of small strings,
which growe not deepe, but keepe under the upper crust of the earth, and desireth
much moisture, yet dyeth every yeare with the first frosts, and must be new sowne
in the beginning of the Spring.
全植物体,そして地上部の全ての部分にはテレピン樹脂の強い香りがする.しばしば花の
Head(総苞)も中心部も(そして時々は葉の出ている莖の節も),たいへん細かく希薄で透明な樹脂やテレピン油を少量ではあるが分泌し,一年の暑い時期には液滴となる.色も匂いも味も透明なヴェネツィア-テレピンにとてもよく似ているので,それと区別することはできない.根は,地面に太い根を分岐して強固に張っていて,多数の鬚根が,深くはないが地面の表面をしっかりと捕まえ,多くの水分を求めている.しかし,最初の霜がおりると枯れてしまうので,春の始めに新たに種を播かねばならない.
The
Place.
Their places are set downe in their titles,
the one to come out of Candy, the other out
of Peru, a Province in the West Indies.
原産地:それぞれの項目名にある.一つはクレタ島,もう一つは西インド(アメリカ大陸)のペルーという地方である.
The
Time.
The first
flowreth in June, the other later, as not untill August, and sometimes so late,
that the early frosts taking it, never suffer it to come to ripeness.
花期:一番目は六月に花が咲く.もう一つは遅れるが八月までには咲くが,時々はもっと遅れるので,早く霜が降りると,完熟できない.
The
Names.
The first hath his name in his title. The second,
besides the names set downe, is called of some Planta maxima, Flos maximus, Sol Indianus, but the most usuall with
us is, Flos Solis: The Sunne Flower,
or Flower of the Sunne.
名称:一番目は項目名に名がある(クレタ島由来).二番目は記した名前以外に,最大植物(Planta maxima),最大花(,Flos maximus),インドの太陽(Sol Indianus)とも呼ばれるが,我々にとって最も普通なのは,太陽花(Flos Solis ; The Sunne Flower,),太陽の花( Flower of the
Sunne)である.
The
Vertues.
There is no use of either in Physicke with us,
but that sometimes the heads of the Sunne Flower are dressed, and eaten as
Hartichokes are, and are accounted of some to be good meate, but they are too strong
for my taste.
有用性:我々には,医用での利用法はない.しかし,時々ヒマワリの花頭は調理されアーティチョークと同様に食される.ある人にはおいしい料理だと評価されるが,私の味覚には強すぎる.
パーキンソンはこの書に取り上げることのできなかった植物を,彼の業績の集大成ともいうべき『植物の劇場 “Theatrum Botanicum”』(1640) に記載した.この書では自分の栽培記録とさまざまな資料をもとに,独自の分類法に基づき,約 3,800 の植物を 1. Sweet smelling plant, 2. Purging
Plant, 3. Venemous, Sleepy, and Hurtfull Plants, and their Counter poysens, 4.
Saxifraes, or Breaksone Plants. - - 17.
Strange and Outlandish Plants の 17 の “Classe or Tribes” にカテゴライズして記述している.挿画は,プランタン社の木版を借りたものか,コピーしたものと思われ,Gerard-Johnson の『本草書』(1633,1636)と同一のものが多い.下にそれぞれの書の Chrysanthemum Creticum (シュンギク)の図を示す.
なお,この『植物の劇場』にヒマワリの記述は見出せなかった.が,表紙のイラストの中にはヒマワリの圖がある.
なお,この『植物の劇場』にヒマワリの記述は見出せなかった.が,表紙のイラストの中にはヒマワリの圖がある.
C. Clusius "Rariorum plantarum" (1601), Gerard+Johnson "The Helball" (1636), Parkinson "Theatrum Botanicum" (1640) BHL/MoBot/HATI |