2022年12月17日土曜日

ガーンジー・リリー,ダイヤモンド・リリー (4)  ジャック・ バルレリエ,アントワーヌ・ド・ジュシュー

 Nerine sarniensis


ガーンジー・リリーは,17世紀の欧州本土で広く栽培されていたと思われる.フランスでは,前記事のように,パリの庭園で見られたが,他にもイタリアで栽培されていたと可能性が高い.フランス人のバルレリエが 1673 年以前に,多分イタリアで描いた図が,ジュシューが 1714 年に出版した書に収載されている.

ドミニコ会士でフランスの植物学者でもあるジャック・バルレリエ(Jacques Barrelier, 1606 - 1673)は,医師の資格を取ったのち,聖職者として23年間ローマに滞在し,ローマに植物園を作った.ローマで『世界の庭園』("Hortus Mundi" または "Orbis Botanicus")の執筆を行い,出版のために多数の銅版図を製作した.この本はバルレリエが1672年,パリに戻ったのち早く病没した(1673)ことにより完成することはなかった.原稿は火災で焼失し,銅板のみが残されたが,30年後に,フランス人の医師・植物学者アントワーヌ・ド・ジュシュー (Antoine de Jussieu, 1686 - 1758) が,この銅板図を用いて,記述文を追加し,『フランス,スペイン,イタリアの植物図譜』(”Icones Plantarum per Galliam, Hispaniam et Italiam observatæ”, 1714)を出版した.この書には324のフランス,スペインの植物図と1932のイタリアの植物図が記述され,それまで知られていなかった数百種の植物が含まれている.

この書にジュシューが,”788. Lilio-Narcissus Indicus , polyanthes , coccineus , minor Barr. Icon. 126. Narcissus Japonicus , rutilo flore Corn. 158.” と記している,バルレリエが描いたガーンジー・リリーの図 (No. 126) がある.どの国で栽培されていたのを描いたかは見い出せなかったが,図の番号が 126 と若い事,フランスやスペインで観察した植物にはその旨のコメントがある事から,イタリアで描いた図と思われる.温暖なローマなどの地では,寒冷なイングランドよりは育てやすかったのではないか.ジュシューは,「印度百合水仙,多花性,血赤色,小型」「バルレリエの図,126」「日本スイセン,赤花」と記し,コルチニの “Canadensium plantarum” (1635) の図 (p. 158) を参照文献にした.
 Barrelier, Jacques (1606 – 1673), Antoine de Jussieu (1686 - 1758). ”Icones Plantarum per Galliam, Hispaniam et Italiam observatæ” (1714 ) 

788. Lily-Narcissus Indicus, polyanthes, crimson, minor Barr. Icon. 126. Narcissus Japonicus, red flower Corn. 158

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