カエデの園芸種は江戸時代に観葉植物として,秋の鮮やかな紅葉のみならず,新芽の色や,葉の形,斑入りなど世界に類のない発展を遂げた.
中尾佐助氏は「花と木の文化史」(岩波新書)の「日本の花の歴史」の項で「落葉樹ではカエデの改良がすばらしい。日本には紅葉する樹木は多いが、栽培下で多数の品種ができたのはカエデ類だけであろう。日本のカエデの栽培品種は珍しくも多くの異なった種からとりだされている。(中略)そのほとんどは枝変りから選択されており、交配はない。元禄の頃からモミジ品種が区別されており、江戸時代にジリジリと品種数が増加し、明治、大正、昭和までなかなかよく保存されてきた。」と記している.
江戸時代の園芸書伊藤伊兵衛らの『花壇地錦抄』(1695),『増補地錦抄』(1695)『広益地錦抄』(1719)『地錦抄附録』(1733)には,トウカエデやイタヤカエデのような園芸種以外も含まれるが,115種の「かえで」が記載されている.

例えば
唐織 葉形ほそく切込すかし春の出葉よりべに紫色見事にむらさきの中に本紅のとび入りふかはりもありてふだんながめよし秋の色も又すくれてよし
国久
そめそめて見るにそあかぬ唐錦
名にも立田のみねのもみちは
(そめそめて見るにぞあかぬ唐錦名にも立田のみねのもみぢば)
これらの園芸種名と本歌は一覧表はカエデのHPとして有名な林田 甫氏のhttp://homepage2.nifty.com/chigyoraku/Cvname-1.htmlで見ることが出来る.

またシーボルトも持って帰ったようで,下にしめした1870年発行のMorren (ベルギー)の”L'ILLUSTRATION HORTICOLE, REVUE MENSUELLE, DES SERRES ET DES JARDINS”の図譜にはシーボルトの名前が見え,また彼の「Flora Japonica(1835-1870)」のカエデ属の項にはイロハモミジはじめ9種のカエデ類が記載されている.

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