2011年1月10日月曜日

Pierre-Joseph Redoute “Le Roses”, second octavo edition (1) ルドゥテ『バラ図譜』オクタヴォ-第二版 (1) Rosa Rubiginosa Aculeatissima

Rosa Rubiginosa Aculeatissima

 最も有名な花の肖像画家 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ Pierre-Joseph Redoute (1759 - 1840)は,南ネーデルラント出身のベルギーの画家.18世紀後半にパリに移り,植物学の基本を学び,ルイ16世王妃マリー=アントワネットの博物蒐集室付画家の称号を得た.
 その後,フランス革命を生き延び,ナポレオン皇妃ジョゼフィーヌ等の庇護を受けながら,『花のラファエロ』『バラのレンブラント』と称される程,ユリやバラなどを描いた美しいボタニカルアートを残している.

 ルドューテはいくつかの植物図譜を著したが,その中でもジョゼフィーヌがあつめたマルメゾン城のバラを描いた「バラ図譜(Les Roses)」フォリオ判(二折判)は最高傑作といわれる.「バラ図譜」はジョゼフィーヌの死後の1817年から1824年にかけて全3巻に分けて出版された.これには169種のバラが精密に描かれ,芸術的価値が高いだけではなく,植物学上も重要な資料となっている.

 「バラ図譜」オクターヴォ版(八つ折判)はフォリオ版の出版後,サイズを小さくして出された普及版で,少なくとも3回出版されている.オクタヴォ版各版の出版年と収録図数は下記のとおり.
Le Roses 第一版 NYPL
初版 1824年(-26年) 160図
2版 1828年-30年(29年) 180図(181図,182図の記録もあり)
3版 1835年 183図(180図の記録もあり)

LES ROESバラ図譜[普及版]河出書房新社 (2012) 岐阜県立国際園芸アカデミー学長 上田善弘氏による解説 ルドゥーテ『バラ図譜』について によれば 
『バラ図譜』と植物画技法
『バラ図譜』は、181724年にかけて30分冊で初版のフォリオ判(2つ折判)がパリのフィルマン・デイド一により刊行された。その後出版社を変え、新版として182426年にかけて小さいサイズのオクタヴオ判(8つ折判)の初版が刊行され、1828年に第2版、1835年に第3版が、内容はそれぞれ若干異なるものの、同じサイズで刊行されている。フォリオ判の初版には、バラの絵169枚とバラの花輪の口絵、計170枚の原画がルドゥーテによって描かれ、パリ・リンネ学会会員の植物学者クロード=アントワーヌ・トリーによる解説が添えられている。これらの図版のすべてのバラが現存するわけではないので、その当時のバラを知る貴重な記録となっている。ルドゥーテは植物学的に精密度の高い植物画を措いたと同時に、イギリスで開発された高度な銅版画法である、ステイツプル・エングレーヴィング(点刻彫版)を改良し植物画に応用した。通常の銅版画技法が線で描く線刻であるのに対し、細かな点の集合である点描により表現する技法である。大変手間の掛かる作業ではあるが、銅版画に特有の硬い輪郭線がなくなり、柔らかい微妙な陰影を出すことができるため、植物の質感も感じられるような、より自然に近い姿を表現できるようになった。すべての図版の下には名前が記されており、左端に原画を描いたルドゥーテ、真ん中には摺り師であるレモン、右端にはそれぞれ担当した彫り師の名が印刷されている。各パートで一流の職人が集まって腕をふるい、制作されたのである。さらに『バラ図譜』は多色刷りの印刷の上から、水彩絵の具で手彩色が施されている。ほとんど黒を用いずに印刷されたのち、一枚ずつ丁寧に着彩することにより、植物画の芸術性を一段と高めた。しかしながら、オクタヴオ判の第2版と第3版に関しては制作の手が抜かれ、黒一色で印刷した上に着彩されたものが多く、質が劣り、全く違った印象のものに仕上がっている

ここに掲げた図版はオクタヴォ版の第2版.Rosa Rubiginosa Aculeatissima; Rosier rubigineux tres epineux [Rosa rubiginosa L. var. umbellata] の図譜.2009年10月に e-Bay のオークションで 38.89 ドルで落札した.

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