2012年1月7日土曜日

フリティラリア・メレアグリス (1/2) - オスカー・ワイルド,名の由来

1978年英国ケンブリッジ,キングスカレジのフェローズガーデン
Fritillaria meleagris

The thrush’s heart beat, and the daisies grow,
And the wan snowdrop sighing for the sun 
On sunless days in winter, we shall know
By whom the silver gossamer is spun, 
Who paints the diapered fritillaries,
On what wide wings from shivering pine to pine the eagle flies.

from “Panthea” [1890] by Oscar Fingal O'Flahertie Wills Wilde (1854 – 1900)

鵜(つぐみ)の心臓の鼓動や雛菊の生長や
冬の日光(ひのめ)のない頃を太陽に向うて
色青ざめた雪待草(ゆきのはな)の嗟嘆(なげ)くのをきくことがあるのだから。
銀いろの蜘蛛(くも)の綱(い)を紡(つむ)ぐものを
地紋ある貝母(ばいも)を彩るものを
広い翼で揺れてゐる松から松へと翔(と)ぶ鷲を知ってゐるから。

講談社文芸文庫『ワイルド全詩 現代日本の翻訳』 訳 日夏耿之介(1995)

渡英前から,佐藤達夫元人事院総裁の写真集などでその特異な色と模様に魅せられ,是非見てみたいと思っていた花.普段は入れないキングスカレジのフェローズガーデンの一般公開日に,その庭でただ一本のこの花に遭遇した(撮影 1978年4月).興奮しながら撮ったので,ぶれているのはそのため.乱獲のため,英国でも野生の花は殆ど見られないそうだ.庭園ではポピュラーとのことであったが,それ以降は見ることが出来なかった.

属名のフリティラリアはフリティルス(fritillus)というサイコロを入れる箱の形 and/or その模様に,種小名のメレアグリスはホロホロチョウ(Numida meleagris)の細かな斑入り模様に由来している.

特異な花の模様と咲き方で多くの名前で呼ばれているが,英国で一番親しまれている名前は Snake's Head(ヘビの頭)と Snake's head Fritillary(ヘビの頭のフリティラリ)で,その色が毒々しいこと,開花する前のつぼみの形がヘビの頭に似ていることからきたものであろう.
また,Checkered Daffodil (市松水仙), Chess Flower (チェス盤の花), Guinea-hen Flower (ホロホロチョウの花)という名はその花弁の模様から,またLazarus Bell (ラザロの鈴)とか Leopard's Lily (ヒョウのユリ)と言う名もあって,これらは Leper's Bell (レプラ患者の鈴)や Leper's Lily (レプラ患者のユリ)から派生した名前で,ハンセン氏病患者が持つ警告の鈴にかたちが似ていて,またその花弁の模様がこの病気を連想させるのだろう.
その他,形や頭を下げて咲く姿から Sullen Lady (不機嫌な夫人),Drooping Tulip (頭を下げたチューリップ),Deith Bell (死の鈴) ,Turkey eggs(トルコの卵),Madam Ugry(醜女),Widow Veil (未亡人のヴェール),Snake flower (ヘビの花),Toad's head (ヒキガエルの頭),Weeping Willow (シダレヤナギ)や,フリティラリアを短くしたFrits(フリッツ),Frorechaps(フローチヤップ),Frocups(フロカップ),Frog-cup(カエルのコップ)とも呼ばれる.

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