2012年10月17日水曜日

ツルボ(2/3) 広益地錦抄,花彙,物類品隲,本草綱目啓蒙

Scilla scilloides
 伊藤伊兵衛『広益地錦抄』(1719) には,「綿棗児(つるぼ) 田野に多く宿根より生ス 根も葉も山慈姑(サンシコ,注アマナ)のことく 春生夏藤いろなる穂のことくに花さく たかさ四五寸のおきなさうの花のごとく 根は多くしげりて畑のさまたげとなる俗にウシウロウと云」と,春に芽を出し夏に穂状の薄紫の花を咲かせる.畑の強雑草となっているので「ウシウロウ」と呼ばれている.と記している.「ウシウロウ」が畑の作物がツルボのため取れず貧窮して「牛売ろう」になったのであろうか?また,花が「おきなさうの花」に似ているというのは,色も形もオキナグサとは異なるので,「おきなさう」はオキナグサとは異なる植物であろう.同人の『花壇地錦抄』(1695)△草花秋之部には,「白頭草(おきなさう)(初)花うすむらさき葉ハせきせうのことく春は葉色白シ」とあり,おきなさうが秋に咲く薄紫の花をつけて,更に葉がセキショウ(Acorus gramineus)に似て細く線状ならば,これは春に花が咲いて,葉がいくつかに分れるオキナグサとは異なる.当てはまりそうなのはヤブラン?


小野蘭山『花彙』(NDL)

 小野蘭山『花彙』(1765) には,「綿棗児(メンソウジ)俗名サンダイグサ、又名スルボ, 近道諸山及ヒ処々原野ニ多ク生ス 苗葉冬ヲ凌(シノキ)テ凋(シボ)マス 夏ニ入テ高サ三五寸 葉韮葉(ララノハ)ニ似テヒロク六七月葉中茎ヲヌキ穂ヲ出シ傘子(カラカサ)状(ナリ)ノ如シ 又青箱穂(ノケイトウノホ)ニ似テ 細小淡紅花ヲ開ク 根 獨頭 蒜(ニンニク)ニ類ス 一名石棗兒」とあり,図は「緜棗児」と「綿」と同音同義の「緜」を使っているが,特徴をよく捉えている(左図).

 一方,平賀源内『物類品隲』(1763)には,直接的なツルボの記載は無いものの,巻之三,草部には「貝母 初生綿棗児(ツルボ)ノゴトク長シテ後山丹(ヒメユリ)ニ似タリ 杪ニ至テ細緑絲ヲ出シテ左右二廻旋ス 花百合ニ類シテ黄白色ニ紫点アリ ○漢種上品享保中種子ヲ伝フ」とバイモの芽がツルボに似ているとある.
 また,小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1803-1806) にも,ツルボそのものへの言及はないが, 巻之九 草之二 山草類下には「山慈姑 アマナ トウロウバナ トウロン ムギクワヰ (中略) ステツボウ(筑前) カタスミラ(肥前) スミラ(同上) ツルボ(丹波) ウグヒス(摂州)
大葉、小葉アリ。土地ノ肥瘠ニヨル。別種ニアラズ。大葉ハ長サ三尺許、水仙葉ノ如シ。花モ大ナリ。小葉ハ二三寸許、綿棗児(サンダイガサ)葉ノ如シ.花モ小ナリ。」と,ツルボが葉の基準になっていることをうかがわせ,本草家の間では,よく知られていた事がわかる.このアマナの地方名とされている「スミラ」はまた,ツルボの地方名でもある.

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