庭の木に営巣していたキジバト,孵化したのだが,残念ながら雛は二羽とも猛禽類に食べられてしまったようだ(目撃証言はないが).
1.タマゴは二個.親鳥に比べると大きめかなと思う白い卵(親鳥の交代時に撮影)が見られた(前記事).
2.親の羽の下がもぞもぞと動き,親はのどから吐き出したピジョンミルクという,半消化物を与えている様子.(上図,親鳥の羽の下にひな鳥の羽が見える)
3.その二日後には巣は空っぽになっていて,親鳥もいなかった.家内はノスリのような猛禽類が近くの電線にとまっていたのを見たとのこと.
親鳥はいったん空の巣に帰ってきたが,二羽で悲しそうに鳴きながら東の空に去っていった.親鳥の交代時に食べられたのではないかと思う.成長を楽しみにしていたのに残念であった.
江戸時代にもハト類,特にキジバトの本草食物としての評価は高く,またその行動や泣き声の特長もよく観察されていた.特に巣の様子は目を引いたようで,粗末な巣にも,雨のとき水がたまらないから良いのだとも評されている.
★貝原益軒『大和本草』 (1709)
本邦四品アリ。斑鳩(ツチクレバト)・トシヨリコヒ・山バト・鴿(イヘバト)ナリ。ツチクレバトハ斑鳩ナリ。山バトハ青●(隹+鳥=スイ)(あおばと)ト云。トシヨリコヒハ腹毛淡白、背毛淡灰色、ツバサノ端黒シ。筑紫方言ヨサフジバト
本草ヲ考ルニ、斑鳩性甚ヨシ。虚ヲ禰フ。殊ニ久病ノ人老人ヲ養ナフ。青●(隹+鳥)モ性ヨシ。鴿ハ補益ノ功ヨリ悪瘡疥癬外治ノ能多シ。鳩四品トモニイヅレモ性ヨシ。斑鳩・トシヨリコヒ・山バト、些三品共二下血ヲ能トドム。塩ニ蔵シテ尤効アリ。味曽ニテ煮テ時々空腹ニ食ス。甚効アリ。是脾胃ヲ補フ故ナリ。
★寺島良安『和漢三才図会 林禽類』(1713頃),現代語訳 島田・竹島・樋口訳注,平凡社-東洋文庫
斑鳩(はと,パンキュウ)
『本草綱目』(禽部、林禽類、斑鳩)に次のようにいう。斑鳩は状が小さくて灰色のもの、および大きくて梨花点のように斑になったものは善くなかない〔いまでいう壌(つちくれ)鳩、雉鳩の類〕。ただ項(うなじ)の下が斑で連珠のようになったものは声は大きくてよく鳴く。これを媒(おとり)にして鳩をおびきよせるとよい〔いまでいう八幡鳩、数珠懸(じゅずかけ)である〕。
鳩の本性は愨孝(すなお)であるが巣をつくるのは下手である。わずかに数茎を架けただけの巣なので、往々にして卵が堕ちる。雨が降りそうになると雄は雌を追い出し、晴れると雌を呼び返す。それで、鷦鷯(みそさざい)は巣をつくるのが巧みだが、そのためかえって巣は危く、鳩は巣をつくるのが拙(へた)で、そのためかえって安全である、とか、あるいは雄は晴を呼び、雌は雨を呼ぶ、とかいう、と。
肉〔甘、平〕 目をはっきりさせたり、陰陽を助けたり、久しい病による虚損を治すことを主(つかさど)る。また気を補い、唆せてのどにつかえないようにさせる。△ 思うに、斑鳩には数種あって、俗に壌(つちくれ)鳩、八幡鳩、南京鳩という。
壌鳩〔豆知久礼波止〕 鳩類の中の最も大きいもので、常に山林に棲んでいて人家には近づかない。頭・背は灰黒色に赤斑の彪(ふ)が相交っていて錦のようである。胸・腹は柿赤色、觜(くちばし)は蒼、脚は淡赤色、尾の本は灰色で末(さき)は黒、鳴き声は短い。味はよい。九州の産が最も佳(よ)く、食べて薬となるのはこれである。(以下略)
空になった粗末な巣 |
斑鳩 ジユヅカケバト ジユヅバト ハチマンバト トシヨリコイ
斑鳩ヲ、イカルガト訓ズルハ非ナリ。播州ニ斑鳩寺アリ。イカルガ寺ト読。又地名ニモ斑鳩アリ。然レドモ、イカルガハ斑鳩ノ訓ニ非ズ。桑鳲ノ古名ナリ。又ツチクレバトト訓ズル説アリ。亦非ナリ。斑鳩ハ市中へハ稀ニ来ル。山村ニハ此鳥多クシテ、鴿(イヘバト)ハナシ。ソノ形状鴿ニ同ジクシテ微小サク、羽色数十品アルコトモ鴿ニ異ナラズ。皆頸項二白斑文アリ。数珠ヲ挂(かけ)タル状ニ似タリ。鳴声トシヨリコイト云ガ如シ。京ニテ鳩(キジバト)ヲ、トシヨリコイト云。同名ナリ。然レドモ其声ニ小異アリ。鳩ハ声濁リテ、トシヨリコイコイト鳴。九州ニテ与総次コイコイト鳴ト聞テ、与総次バトト呼。奥州ニテハ、テテイポウポウカ、アポウポウト鳴ト聞ユ。皆後コイコイト重ネ鳴。斑鳩ハ声高クスミテ、トシヨリコイトノミ鳴テ、コイコイト重ネズ。凡鳩鴿形同ケレドモ、鳩類ハ皆巣ヲ木ニ構フ。鴿類ハ巣ヲ堂塔ノ簷(ひさし)或ハ土庫中ニ構フ。
と鳩と鴿とは形はよく似ているが,住む場所が異なるとしている.
現代中国でも鳩(もともと野生のハト)と家鳩(カワラバト・ドバト)との区別は漢字の上でされていて,キジバトは山斑鳩,ドバトは原鴿で表されている (from Wikipedia China).
山斑鸠(学名:Streptopelia orientalis)是鸠鸽科斑鸠属的一种中等体型的鸟,也叫山鸠、金背鳩、金背斑鸠、麒麟斑、麒麟鸠、雉鸠、棕背斑鸠、东方斑鸠、绿斑鸠、山鸽子、花翼、大花鸽、大花斑。
原鸽(學名:Columba livia),又名野鸽子、野鸽、脖鸽。为人类所驯化的原鸽被称为家鸽。
キジバト (1/3) 仲のよいご夫婦
キジバト(2/3) 古事記,日本書紀,和名類聚抄,本朝食鑑