2017年5月22日月曜日

アマナ-(4-2)中国文献-2 金燈花 三才圖會,花史左編,秘伝花鏡,植物名實圖考

 Amana edulis

前記事に示したように,陳藏器(681757) 撰『本草拾遺』(739)の「山慈菰」,及び李時珍『本草綱目』(1590) の「山慈姑」で,「金燈花」が別名とされている.この「金燈花」の記述が 『三才圖會』には絵入りで,『秘伝花鏡』には添付図とやや詳しい栽培法が,『植物名實圖考』には,図と短い記述が載っている.これらの三図ではそれぞれ異なる植物であり,到底「アマナ」とは思えない.

★明王圻 (1592-1612) 纂集『三才圖會 全百六卷』萬暦371609)序刊
中国,明代の図解百科事典。王圻(おうき)の著。1607(万暦35)の序をもつ。王圻の子王思義の続集とあわせ106巻。天地人の三才,つまりこの世界の事物を,天文,地理,人物,時令,宮室,器用,身体,衣服,人事,儀制,珍宝,文史,鳥獣,草木の14門に分け,図絵を添えて簡略に説明する.中国では低く評価されがちだが,日本では寺島良安の『和漢三才図会』の手本となった.

三才圖會 第百六巻 草木十二
金燈花
金燈花 一名忽地笑 有二種 花開一簇五朶 金燈色 紅銀燈色 白」(左図 NDL)

明の★王路『花史左編』(1617完成) 花の形状・変異・栽培法・病害虫・月別の園芸作業・園芸用具などについて記すと共に,花にまつわる故事や名園・名勝を収録する.文学色が濃く,一般の園芸書とは趣を異にする.ヒマワリが丈菊の名で記載されている(ヒマワリ (2/4) 丈菊 天蓋花 迎陽花 日向葵 日廻り.花史左編,花壇綱目,訓蒙図彙,花壇地錦抄,草花絵前集,大和本草,廻国奇観,花木真写,滑稽雑談,絵本野山草)

この花史左編巻之四 には「金燈花
花關一簇五朶金燈色紅銀燈色白皆蒲生分種開
時無葉花完發葉如水仙」とある.

★陳淏子 (1612 - ?) 著『秘伝花鏡』(1688
淏子は浙江省杭州の人,字は扶揺,号は西湖花隠翁.経歴は知られていない.晩年杭州の西湖の湖畔に住み多くの花草果木を育てた.1688年,77歳の時に『花鏡』を著した.『花鏡』は花譜,園芸技術の解説書である.魚や亀,ヒキガエルの飼育法も含まれている.日本に伝わり,平賀源内が校正し1773年に『重刻秘伝花鏡』を刊行した.
参考図はNDLの源内版より.

秘伝花鏡 巻之五 花草類攷
金燈花
金燈一名山慈菰 冬月生葉似車前草 三月中枯
卽慈菰 深秋獨莖直上 末分數枝 一簇五朶 正紅色
光焔如金燈 叉有黄金燈 粉紅紫碧五色者 銀燈色
●(禾の下に几)莖透出卽花俗呼爲惣地笑 花後發葉似水仙
皆蒲生 須分種 性喜隂肥 卽栽於屋脚墻根 無風露
處亦活」とあり,『花史左編』の記述と重なる.
図だけから見るとヒガンバナの類かと思われるが不明.源内は『重刻秘伝花鏡』で,多くの植物に和名を付記しているが,この項は無記で,源内も考定できなかったと思われる.

さらに前記事で引用した★呉其濬 (1789-1847)『植物名實圖考』の「第二十六巻羣芳類」に,「金燈」の項があり,
金燈
金燈 
 細莖●嫩葉如萬壽菊而細開五小辧黄花圓扁頭有
小缺如三葉酸葉」

と葉がマリーゴールドの様に細裂し,細い茎の先に,黄色でその先がカタバミの葉のように凹んだ五つの篇圓の花弁が着く植物が金燈だとし,上記の二種とも「アマナ」とも異なる植物が記録されている.(圖は Internet Archive より引用)

結局「金燈花」が何なのか,中国でも統一した認識はなかったようだ.

アマナ-(4-1) 中国文献 山慈姑, 老鴉辧 本草拾遺,本草綱目,頭註国訳本草綱目,植物名實圖考

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