2024年6月21日金曜日

ムギセンノウ (4) 15世紀-2 ヴィトゥス・アウスラッサー『本草書』" Macer de viribus herbarum"

Agrostemma githago

小麦などの麦類の悪性雑草として長く欧米の農家を苦しめていたナデシコ科の一年草.小麦と同調して生育し,全草有毒.特にその黒い種子がパンに入ると,その味を損なうので,嫌われていて,聖書に出てくる「ドクムギ」の一つとも考定されていた.


  15世紀から,本草書には図と共に頻繁に取りあげられているが, 花弁の外に長い苞片が飛び出しているという特徴がよく分かる図が掲載されている本草書の嚆矢は,★ヴィトゥス・アウスラッサー (Vitus Auslasser) Macer de viribus herbarum (Macer de viribus herbarum. Herbarius depictus per fratrem Vitum Auslasser de Fumpp prope Swaz mo)" (1479) である.本書には,様式化されてはいるが,写生されたと思われる多くの薬草の図が収められている.これらの手書きの図の作者はエアハルト・レーヴィーク (Erhard Reewiijk, Erhard Reuwich, 1445 in Utrecht - 1505 in Mainz) だという資料もある.
 
記述文の部も添えられていて,それも見ることが出来るが,解読はできなかった.

この書には,約 200 種の薬草の図が掲げられているが,その 136 番には美しいムギセンノウの図を正確な彩色とともに見ることが出来る.名称としてラテン名の Zyzaniaと,ドイツ語の名称 Raden及び Prawn korn pluemの三種が記載され,花辧から突出した苞片,莖・対生する細い葉・苞の(細毛による)緑灰色の色相,花辧の模様などから,一目でムギセンノウと分かる.

著者の15世紀に活動したヴィート・アウスラッサーとも呼ばれるヴィトゥス・アウスラッサー (Auslasser, Vitus, 生没年不詳) は,現在のチロル州シュヴァーツ近くのフォンプ出身で,ミュンヘン近郊のエーベルスベルクにある聖セバスティアン修道院 (https://de.wikipedia.org/wiki/St._Sebastian_(Ebersberg)) のベネディクト会修道士であった(冒頭図,左部の Title page に,Herbarius iste depictus est per fratrem Vitum Auslasser de fůmpp prope Swacz monachum professum prespiterum monasterii sancti Sebastiani in Ebersperg Anno d[omi]ni 1479. とある).
 
また,図を描いたとされるエアハルト・レーヴィーク (Erhard Reewiijk, Erhard Reuwich, 1445 in Utrecht - 1505 in Mainz) は,後述する『ドイツ本草』(German Herbarius, Herbarius zu Teutsch, 1485)や,『健康の庭園』(Ortus Sanitatis, 1491) の木版画など,多くの書籍の挿絵を担当したと推察されるオランダ出身の有力なイラストレーターであった (https://en.wikipedia.org/wiki/Erhard_Reuwich)

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