蜘蛛の類は稲や農作物の害虫を捕食することから,古くから敬されていたが,特にジョロウグモは,その獰猛さと美しさのギャップからか,恐れをも持って見られていた.そのため,妖怪の一種,美しい女「絡新婦」の姿に化けることが出来るとされていて,鳥山石燕の「画図百鬼夜行」(最下図)では,火を吹く子蜘蛛達を操る蜘蛛女の姿で描かれている.
寺島良安『和漢三才図会』(1713頃)
絡新婦 斑蜘蛛(まだらぐも)[俗に女郎蜘蛛という〕
『本草綱目』(虫部、卵生類、蜘蛛〔集解〕)に次のようにいう。赤斑色の蜘蛛を絡新婦という。昔、張延賞という人があり、斑蜘妹に頭の上を咬まれた。一晩すると二つの赤脈が項の下を繰り心臓の前まではい、頭面は数斗ほどに腫れ、ほとんど救いようのない様子であった。ある人が大藍汁に麝香・雄黄を入れ、そこへ一匹の蜘蛛を取って投げ入れると、化して水となった。これを咬まれた処に点じると、二日して悉く愈えた。また、蜘蛛に咬まれて全身に瘡ができた場合は、好い酒を飲み、酔がまわると、虫は肉中で小米のようになって自ら出てくる、という。
△思うに、絡新婦とは俗に女郎蜘妹と称するものである。黄・黒・緑・赤の斑が美しいが・かえって醜い。毒が最も甚だしいせいである。形は蜘蛛より長く、細い腰、尖った尻に手足は長くて黒い。糸は黐(トリモチ)のように粘くて黄色を帯びており、樹枝や家の檐(のき)に網をはる。人が捕らえて打つと脆(もろ)くつぶれて血を出して死ぬ。他の蜘蛛は血を持っていない。尻は尖りその二カ所は動揺するにつれてぴかぴかと光る。けれども螢火のように鮮やかではない。老いたものはよく火を生じる。闇夜、あるいは微雨の中でたまたまこれを見ることがあるが、大きさは小さい碗ぐらいで、円くて徽青色を帯び、ゆっくりと動き、それほど遠くまで行かず、また家の檐よりも高いところへは行かない。鵁鶄(ゴイサギ)の火は遅速高低さまざまで、この点が鳥と虫とのちがいである。『西陽雑姐』(巻十四諾皐記上)に、深山に車輪ぐらいの大きさの蜘蛛がいて、よく人や動物を食べる、とある。(現代語訳 島田・竹島・樋口)
小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1803-1806) 巻之三十六 虫之二 卵生類 下
蜘蛛 〔集解〕絡新婦ハ、ジヨロウグモ(京) ジヤウログモ(同上) ジヤウラグモ(筑後) テラグモ(和州) ハタオリグモ(予州) コガネグモ(琉球) 此蛛ハ身瘠長ク一寸許、黄色ニシテ黒青赤斑アリテ美ハシ。足ニモ黒黄斑アリ。庭樹ノ間二巣ヲハリ、昼夜ムシヲ取食フ。其糸黄色ニシテ甚ツヨシ。
中国では「棒络新妇(=婦)」又「络新妇」或いは「橫帶人面蜘蛛」と呼ばれ「身体颜色美丽(=麗)」とされている.ただ,『维基百科』における記事は多くない
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