2012年5月10日木曜日

八重咲きヤブイチゲ(俗称ヤエザキイチリンソウ)-2 Gerald, Parkinson


Anemone nemorosa '‘Flora Pleno’


Alice Margaret Coats の “Flowers and their histories” (1956, 1968) (左図)のアネモネの項,には
「森林に生えている種或いはカーペット状に拡がる種類はますます重要性を増している.英国原産の Wood anemone (Anemone nemorosa,ヤブイチゲ) は変異種の多い種で,その多くの庭園種は野生種から集められた.ジェラルドは紫・薄赤・白い八重咲きの変種を育てていた.現在は約一ダースの種類が庭で育てられている.その中にはオックスフォードの植物園でロビンソンによって発見された青い花をつける A. n. robisoniana があるが,名はアイルランドからもたらしたご婦人の名前をつけるべきであろう.もっと美しいのはシェプトン・マレットのジェームス・アレンの庭からの,青色の A. n. allenii 種で,その繊細な美しさに勝る花はない.花の形の整った白い半八重の花をつける 'Vestal' は allenii 種と同様,世紀の変わり目(19-20c)頃から栽培されるようになり,バーデン・バーデンのマックス・ライトリッヒによって,広められた.」と記されている.

参考画像,左より Anemone nemorosa robisoniana, A. n. allenii, A. n. 'Vestal'

そこで古い英国本草書をネットで見たところ,
ジェラルドの『本草書』( 1597 )には,Anemone nemorum flo, pleno albo. The double white wood Anemone について“庭用の種類の一つとして,緋色のと同様な完全八重型の白花種があり,私はその一つを私のよき友,ロンドン在住の尊敬すべき商人の Mc Iohm Franquevill から貰った.”(左図,左)としるしている.
また Parkinson の『太陽の園、地上の園』( 1629 )にはAnemone siluestris flora pleno albo. The double white wilde Windflower という植物が記載されていて,挿図(左図,右)を見るといずれもヤエヤマブキのような完全八重の花をつけるようだ.パーキンソンはこの植物について「(一重の種に比べて)葉はやや大きく,花は大変厚くて八重であるが小さく,香りが少ない.開花後5-6日後の満開時には真っ白になり,やがて紫色を帯びるが内側より外側の方が色が濃い,他の八重の花と同様に種を着けない(中央部に小さな head を持つが).」と記している.

本来からするとこの白八重種が ‘Alba pleno’ あるいは 'Flora pleno'  の名前でいいと思うのだが,年月と共に絶えてしまい,新たに現れた丁子咲きが僭称をしたのだろうか.Setton 8 さんの調査によると,白い八重種(丁子咲き種)として 'Alba Plena', 'Flore Pleno', 'Vestal' は一応,別の園芸品種のようだが,詳しい区別は分からず,多くの画像を見ないと判別できないとのこと.

少ないながら画像を見る限り,庭に咲いている白八重は真ん中の部分が小さいことから,'Vestal' ではなさそう.

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