2015年2月3日火曜日

ヤブミョウガ-5/8 ツンベルク,属名の由来,学名,Nov. Gen. Pl.,Flora Japonica,Icones plantarum Japonicarum,泰西本草名疏,Pollia condensata,構造色,擬態

Pollia japonica
2015年2月
日本で発見したヤブミョウガに基づいて “Pollia (ヤブミョウガ属)” を新たに立て,ヤブミョウガに現在も有効な学名 Pollia japonicaをつけたのはリンネの使徒の一人,ツンベルク(Carl Peter Thunberg, 1743-1828) であった.彼は江戸時代中期,1775-1776年の足掛け2年間,オランダ商館付医師として長崎出島に赴任し,17764月には商館長に従って江戸参府を果たし徳川家治に謁見した.短い江戸滞在期間中に,吉雄耕牛・桂川甫周・中川淳庵らの蘭学者を指導した.帰国後の1781年にはリンネの後を継いでウプサラ大学の学長を務めた.多くの日本の植物に学名を付け発表し,日本植物学の父とよばれている.

彼は  “Nova genera plantarum...” (1781-1801) Vol. 1, 13 (1781), に最初に Pollia及び Pollia japonicaを記載し(左図及び下図,左),また 『日本植物誌』 (Flora Japonica): 138 (1784) にもPollia japonicaを記載した(下図,中).

さらに,”Icones plantarum Japonicarum :quas in insulis Japonicis annis 1775 et 1776 collegit et descripsit. DECAS TERTIA” (1794) に,単色ながら精密な実をつけたヤブミョウガの銅版画を収載した(左下図).これらが,ヤブミョウガを最初に欧州に紹介した文献となった.

この属名 Polliaは,ツンベルクのアフリカ・アジアでの植物探索旅行のスポンサーになった,アムステルダムの有力な市民で東インド会社の重鎮 Jan van der Poll Pietersz (1726-1781) に感謝の意をこめて献名したと,“Nova genera plantarum...” Polliaの項に,“NOMEN in honorem Patroni Summi, J. van der POLL, Consulis Amsterdamensium meritissimi.” と記されている(左上図赤下線部).

ツンベルクの『日本植物誌』中の植物(ラテン名)に該当する和名を,シーボルトの指導の下,記述した伊藤圭介訳述『泰西本草名疏』(1829)には,「POLLIA JAPONICA. TH.  ヤブメウガ 杜若」とあり,命名後 50 年ほどたってヤブミョウガの学名(ラテン名)が里帰りした(右上図右 NDL)

その後,ヤブミョウガ属の植物は,アジア及びアフリカで数多く,オーストラリアや中米でも少数発見され,Wikipedia-E では,交配種を含めて 21 種が数えられる.
その中でも興味深い種は,西アフリカのアンゴラ原産の Pollia condensata で,白や帯桃色の花をつけた後,穂状に金属光沢をおびた青い丸い実をみっちりと着ける.この実の表面を透明で滑らかなキューティクルが覆い,鏡のように光りを反射してきらきらと輝く(右図,*1).

植物の青い色としては最も輝いているといわれるこの美しい青い色は,色素によるものではなく,タマムシ(左下図)やカワセミ,モルフォ蝶などに見られる「構造色 Structural colorationであると,英国ケンブリッジのキャベンディッシュ研究所の S. Vignolinia 達が発表した*1

彼女らの研究によると,透明な表皮の下にある,少しずつずれた複数のセルロースで出来た層が,「ブラッグ反射 Bragg reflection」によって,日光の中の青い波長の光を強めて反射する (multilayer interference) ために,この実の金属的な青い光沢が発生すると,電子顕微鏡などを用いての微細構造の解析結果から結論付けている.

そのうえで,この光沢と色が鳥をひきつけ,その「求愛行動 mating displays」の際の装飾に使われる.一方でこの植物の実はまったく栄養分を含んでいないが,同じ地域に産するアカネ科の Psychotria peduncularisの実(左図,from Flora of Zimbabwe)にそっくりなので,この実に擬態して,栄養分を溜め込むという余分なエネルギーを使わずに,鳥に食べて貰う種子撒布戦略をとっている可能性もある.また,同様の構造色を放つ昆虫や鳥類との「収斂進化 convergent evolution」の一例であろうとも言っている.

日本産の「ヤブミョウガ」の実も,長い期間日光に暴露しておいても殆んど色あせず,P. condensataほどではないが,金属光沢を帯びる(冒頭画像).また,表皮をつぶして紙に擦り付けても青い色は移らない.このことから,「ヤブミョウガ」の実の色も P. condensataと同様の構造色ではないかと考えられるが,そのような研究はまだないようだ.

熟した「ヤブミョウガ P. japonica」の実にも栄養となるような物質は含まれておらず(左図),P. condensataから類推すると,ヤブランやジャノヒゲの実に擬態しているのではないか,また,構造色ゆえに長期間色あせず,乏しい光りの中でも反射光で目を惹くので,食料が不足している冬季に鳥の目を惹き,食べて貰う戦略ではと思われる.

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