
中村惕斎『訓蒙圖彙(キンモウズイ)』(初版1666)には図(左図)が載り,伊藤伊兵衛『花壇地錦抄』(1695)に「草花春之分 金銭花(きんせんくわ)四季ニ花咲 花形名のごとし又金盞花(キンセンクワ)共書よし」とあり,また「草木植作様伊呂波分(いろはわけ) きんせんくわ 植替何時成共種も毎月蒔ハ年中花たへず合肥よし」とあり,育てやすく,年中花が見られるとしている.
貝原益軒『花譜』(1694)には「金盞花 和俗きんせん花と称す.春の初より花咲く.色黄金のごとく,かたちさかづきのごとくなる故に,名づく.子の形は蟲に似たり.実をとりて逐時まけば,四時常に花あり.故に長春花ともいふ.本草綱目湿草部に,葉を食す,毒なしとあり.」と記されている.

△思うに、盞〔音はサン〕とは杯のことである。花の形のことである。近頃では白花のものもあって珍重される。俗にこれを金銭花(次出)というのは間違いである。」(現代語訳 島田・竹島・樋口,島田勇雄,竹島淳夫,樋口元巳訳注,平凡社-東洋文庫) とある(右図).
さらに,小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1803-1806)の巻之十一 草之四 隰草類 上には,「金盞草 キンセンクハ トコナツバナ フダンバナ トキシラズ ケイセイクハン(如州)アリヤケ(摂州),コガネグサ 〔一名〕常春花 長春菊(花疏) 回回菊(三才図会) 金盞児 萵苣花
家二栽テ瓶花二供ス。葉細長ニシテ尖ラズ。鼠麹草(ハハコグサ)ノ葉二似テ、大ニシテ白色ヲ帯。初メ地二就テ叢生ス。取テ食料ニ供ス。春月茎ヲ抽ヅ。高サ六七寸、枝頭ゴトニ花ヲ開。久シク相続ク。形単弁ノ菊花二似テ、小サク、正開セズ。常二盞子様ヲナス。紅黄色亦淡黄色ノ者アリ。花後実ヲ結ブ。其形屈曲シテ虫ノ状ニ似タリ。蘇頌、変生一小虫ト云ハ、非ナルコト時珍弁ゼリ。本邦ニテ和名金銭花ト云ハ誤ナリ。唐山ニテ銭ト云ハ満開シタルモノヲ云。金盞草ノ花ハ半開ニッチ盞ノ如シ。故二金盞花ノ名アリ。午時花、旋覆花(注 オグルマ)ハ、正シク開ク。故二金銭花ノ名アリ。」とあるが,『和漢三才図会』や『本草綱目』と同様種子が蟲のようだといっているのは,その特徴をうまく捉えていると興味深い.また,ゴジカと混同しないようにとしきりに注意を促しているのは,逆にゴジカが江戸時代広く栽培されていた事を示すと考えられる.

一方, シーボルトが日本から持ち帰った腊葉コレクションに「金盞草」の標がついた標本があり(左図,牧野標本館),これは C. officinalis と同定されていて,江戸時代にはトウキンセンカが栽培されていた証拠とされている.
なお,現代中国での薬効は「利尿,發汗,興奮,緩下,通經。 又治腸痔下血不止。降血壓」とある.
0 件のコメント:
コメントを投稿