2012年6月14日木曜日

ツタンカーメンのエンドウ(3) 莢の色素 構造決定文献



名古屋大学大学院情報科学研究科の吉田久美先生からの回答の中に「可能なら、一度入手して分析し、また結果をお知らせできればと思います。」とのコメントがあったので,色の濃い莢を選んで約 50 個を送付したところ,直ぐに分析の結果が速報で届いた.多波長検出器付きHPLCの分析結果から比較的単純なアントシアニンであろうとの知見と,先行文献のコピーが送られてきた.

先行文献は,南九州大の寺原先生を筆頭筆者とするグループの報文で,N. Terahara et. al., ”New Anthocyanins from Purple pods of pea (Pisum spp)”, Biosci. Biotechnol. Biochem., 64 (12), 2569-2574 (2000) であった.
寺原先生たちは,いわゆる「ツタンカーメンのエンドウ」の莢,約 1 kg 15% の酢酸溶液で抽出し,8 個のアントシアニン系化合物のピーク(P1 – P8)を含むこの液を,イオン交換樹脂で精製し,更に preparative ODS-HPLC で4個の画分に分離した.濃縮後 TFA に溶かし,エーテルを加えて得られた沈殿を乾燥したところ,純度の高いアントシアニンの TFA 塩を二種,P1 (1, 52mg) P6 (2, 52 mg) を得た.
それぞれを2N HCl で加水分解し,アグリコン部分と糖部分 TLCで,また,アシル基を GC で分析して, 1 delphidine 3-xylosylgalactoside-5-acetylglucoseide であり,2 はその脱アセチル体であることを見出し,NMR NOE HMBC の手法を用いて,その構造を確認した(左図).
更に,中性溶液中での安定性を,食品の着色剤として使われているシソの色素( Malonylsisonin )や Cyanidine 3-glucoside と比較し,前者と後者の中間の性能を持つ事,また,抗酸化性は BHT (Butylhydroxy toluene) には劣るものの,カテキンやα-トコフェロールより優れている事を見出し,健康的な食品着色剤としての可能性を指摘した.

ということで,残念ながら,新たなアントシアニン系化合物をツタンカーメンのエンドウの莢から見出す可能性はなくなったものの,吉田先生に送付したエンドウの豆の方は,豆ご飯として研究室の学生さん達のお腹に納まったとのことで,お役に立てて幸いだった.

既に茎は枯れ,相当数の種が得られたが,サヤエンドウとしての利用法はないので,来年も育てようかどうしようか,思案中.

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