2012年6月19日火曜日

ミノムシ オオミノガ(の蓑虫)(2)大和本草・北原白秋・レッドリスト,避債蛾

Eumeta japonica

みのむし、みのむし、ちちろむし、/枯つ葉みのきて、また雨だ。/むしつてみてやろ袋みの。
かはいいひきだし、マツチ箱。/はだかのみのむしいれておこ、/毛糸のくづでもかぶつてろ。
みのあめ、みのきろ、ちちろむし、/みどりや桃いろ、袋みの、/祭のゆめでもみてねてろ。
「みのむし」北原白秋『赤い鳥』15(1) pp34-35, (1925) 

一昨日の午後,庭のミノムシが姿を消した.誘拐されたのか,落ちたのか,と心配していたら,同じ木の50㌢ほど離れた枝に元気な姿を見せた.枝伝いか一辺下に下りて上がって来たのだろうが,その歩行距離3mほど.蓑をかついでの移動は結構な労働であろうに.小雨なら,食事を続けるが,雨粒が大きくなると蓑の口を閉じる(上図右下).

蓑虫を詩情豊かな昆虫として,また子供の遊び相手としてみるのは日本だけのようで,欧米や中国では樹木の葉を食い荒らす害虫としてしか考えていないようだ.

貝原益軒『大和本草』 (1709) の第十四巻 陸蟲 蟲之下では,「結草蟲」を「草の葉を折って巣窟とする虫」と定義し,「一名木螺,一名蓑衣丈人」と言われていて,その一種として「蓑虫」を挙げ,「○蓑虫は口より絲を出し木の葉を綴りて巣とし木の枝に附いて下り垂れる.○一種蓑虫に似て木の枝に附かず.地に這い行く.或いは身を轉して行く時あり.蓑虫は首尾小なり.これは首尾同じ大きさなり.」とある(左図,藤田学園).

このように古くから親しまれていたミノムシだが,このオオミノガのミノムシは1990年代後半から西日本では激減している.そのため,以下の 8 県ではレッドリストに載っていて,保護が必要な生物とされている.
 神奈川県 絶滅危惧II(VU),滋賀県 要注目種,兵庫県 要注目種,山口県 絶滅危惧ⅠA類(CR),徳島県 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN),高知県 準絶滅危惧(NT),福岡県 絶滅危惧Ⅱ類(VU),宮崎県 絶滅危惧ⅠB類(EN-r,g).
指定カテゴリについては環境省(1997)のRDBカテゴリhttp://jpnrdb.com/rdb_category.html)を参照.

原因は,オオミノガにのみ寄生する外来種のオオミノガヤドリバエ (Nealsomyia rufella) で,このハエはオオミノガの終令幼虫を見つけると,摂食中の葉に産卵し,卵は葉と共に摂食され.咀嚼時に破壊されなかった卵はオオミノガの消化器に達し,体内で孵化する.寄生率は九州に近くなるほど高いので,オオミノガヤドリバエは中国大陸から侵入したと考えられている.

英語名は “bagworm moths”,ドイツ語名は “Sackträger”,中国語名は「蓑蛾,蓑衣蟲」といずれも幼虫の巣の形状に由来するが,中国名の一つ(日本で名の一つでもある)「避債蛾」は字面から言うと借金から逃げ出した蛾になる.いわくがありそうなので調べたが分からない.
ミノムシ(1) 和歌・俳句・和漢三才図会はこちら.

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