2012年8月15日水曜日

ヨウシュヤマゴボウ (1/2) poke-weed,原産地では若葉を食用に エルヴィスも唄う

Phytolacca americnana

道ばたや林の裾など,やや日陰になる場所を好む大型の多年性帰化植物.明治初めに原産地北アメリカから鑑賞用として渡来.高さ2㍍にも達し,大きな濃緑色の葉と紅色を帯びた茎が特徴だが,この時期にはまるで梅鉢紋のように整った形をした可憐な花が房をなして咲いている.花弁はなくて,ガクが花弁のように見える.やがて,濃い紅紫色の果実が房をなして垂れ下がり,房の根本の実は熟しているのに,先端部には白い小さな花が咲いている事も多い.もっと寒くなると全草が真っ赤に紅葉し,ますます目立つ.

米国での一般名は poke-weed. "Poke" は, Native american の「血」の意味の "poka" に由来し,これは実の汁の色が鮮やかな赤紫色だから.いかにも毒々しい実や茎だが,その通り全草にトリテルペン系の有毒成分フィトラクシン類を含み,大量に食すると下痢・腹痛・吐き気がもたらされ,痙攣後,死に至ることもあるとか.

一方有毒な植物は薬用植物でもあり,アメリカ原住民や初期の入植者の間では,痔疾から頭痛まで何にでも用いた.

このような毒性にも関わらず,原産地では葉を野菜として利用していた.若葉を塩水で2回(10分と5分)ゆでこぼして,毒性成分を抜くと,ホウレンソウに似た食味のサラダ菜として利用できたらしく,米国では缶詰として市販されていた.

また,1968年には,Tony Joe White が "Poke Salad Annie" という,この野草を摘んでは夕食の足しにする貧しい南部の少女とその家族を題材にした歌を発表し,この曲は1969年のビルボード誌で一時 8 位になった.エルヴィス・プレスリーの歌うこの歌はユーチューブで聴くことができる (http://www.youtube.com/watch?v=FOzaVpgeHJg)

南部では地域興しに " Poke Sallet Festival " を開催している町があり(テネシー州ゲイズンボロ,ケンタッキー州ハーラン)," Poke Sallet Queen" のパレードや Blue Grass の演奏会,そして," Poke Sallet " やヨウシュヤマゴボウの葉を使った料理のふるまいが呼び物とされている.

一方東洋では,漢方薬になっている.大きな根を乾燥させたものを,在来種のヤマゴボウ(中国原産,茎は緑色,果序は直立,紅葉せず)の根と区別せず「商陸(ショウリク)」と呼んで,利尿剤として用いる.適応症は水腫・脚気・リュウマチ・腎臓炎などだそうだが,毒性が強いので,民間での利用は避けた方がよいとのこと.

日本に生育するヤマゴボウ属の植物は,西日本原産のマルミノヤマゴボウ,中国原産のヤマゴボウと,このヨウシュヤマゴボウの三種.花の色と花序・果序の向きで見分けがつく.

なお,観光地でよく売っている漬け物のヤマゴボウはキク科モリアザミの根.これと誤認してヨウシュヤマゴボウの根を食べ中毒する事故が絶えないそうだ.ご用心.

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