2014年3月7日金曜日

スノードロップ (5/10) 英国,シェークスピア?,ウィリアム・ターナー,ヘンリー・ライト”A niewe Herball 『新本草書』”(1578)

Galantha niveris
"Snowdrop Fairy" by  Cicely Mary Barker (1930's)
スノードロップを春一番の花として愛している英国でも,この花はかつてあまりよく知られていなかったようだ.多くの花や植物を著作に載せているチョーサーもシェイクスピアも Snowdrop について何も言っていない.たとえ知っていたとしても,「球根スミレ」(bulbous Violet)という無粋な名前の花について詩人が語ること期待できない.
「球根スミレ」とは,シェイクスピアの時代,英国の本草家ライトとジェラード,園芸家パーキンソンが,スノードロップに用いていた名前である.ジョンソンが 1633 年にジェラードの『本草書』の改訂版を出して,その中で,「英国ではこの植物を「球根スミレ」などと呼んでいるが,何人かはスノードロップ(Snowdrop)とも呼んでいる(In English we may call it the bulbous Violet; or after the Duch name, Somer sottekens; that is Sommer fooles, and Druyfkens. Some call them also Snow drops.)」と書くまで,その名は「球根スミレ」であった.一方,O. E. D. が “snowdrop” の初出として挙げている1664年の例よりも,Johnson のこの記録のほうが30年以上も古い.

花は下を向いて咲くので,snowdrop の花は文学的にはしばしば形容詞,nodding(うなだれている)を冠する.シェイクスピアの作品にはどこにも‘snowdrop’の語は見えていないが, A Midsummer Night's Dream: Act 2, Scene 1 の妖精の王 OBERON の台詞
  249   I know a bank where the wild thyme blows,
  250   Where oxlips and the nodding violet grows,
  251   Quite over-canopied with luscious woodbine,
  252   With sweet musk-roses and with eglantine:

私は野生のたちじゃこう草の花が咲く堤を知っている.
そこにはくりんざくらや、うなだれたすみれが育ち
じゃこうばらや、赤い野ばらに彩られた
甘い香のするすいかずらにすっぽりと覆われている.

の “the nodding violet” が‘snowdrop’との説もあるが,5月と言う劇の季節には合わない.

古い英国の本草書に‘snowdrop’が如何に取り上げられてきたか,

イギリスの自生植物のうち 238 種類を同定し,記載し,イギリス植物学の父とも言われるウィリアム・ターナー (William Turner, 1508 - 68)の “A new herball 『新本草書』”(1551 – 1568)には,"Bulbous Violet","Viola alba"  などの名でも,スノードロップの記事は無い.

ヘンリー・ライト(Henry Lyte, 1529 - 1607)”A niewe Herball  『新本草書』”(1578)
サマセット州の良家に生まれた.祖先はイギリス史の黎明期にまでさかのぼる古い家系である.ライトの『新本草書』(1578)は,ドドエンスがフラマン語で著わした『本草書』(1554)を,クルシウスがフランス語訳したものの重訳である.しかし自分自身が集めたものとドドネウスが提供した新材料によるていねいな増補版といえる.16世紀の英語のため,現在とはスペリングが異なるが,英文は出来るだけそのまま,和訳は現代英語に変換したのちにしたが,誤りがあるかもしれない..

          Of Theophrastus Violet / or the white Bulbue Violet.
            テオフラストスのスミレ あるいは 球根スミレ

*The Kindes.
There be three sortes of Leucoion, two small, and the thirde is bigger: whereof the flowers of the first lesse kind is three leaved, and the flowers of the latter kinde is sixe leaved.
種類
三種のリューコインがあり,そのうち二つは小型,三番目は大型である.最初の小型の二種の花の花弁は三枚で,後者の花弁は六枚である.

Leucoium bulbosum triphillum & c.
Leucoium bulbosum hexaphillum & c.

*The Description.
The first kinde of Leucoium bulbosum, bearth two or three narrowe leaves, a short stemme, and upon it a little faire and pleasant flower growing soorth of a little long huske upon a small stemme hanging downewards, with three white leaves, amongth which also three appeare three other little green leaves.
記述
球根性リューコインの最初の種は2-3枚の細い葉があり,短い茎の上に小さな美しく好ましい花を下を向く小さな茎の上のやや長めの外皮のfoorthに着ける.その花には三枚の花弁があり,その内には他に三枚のちょっと緑色の花弁が見える.

*The Place.
These kinde of Violets do grewe in shdowy places, and lowe woodes standing near onto waters in Italy and Germanie, they growe not in this Countrie, but in certaine gardens.
生育場所
これらのスミレのイタリアやドイツの陰地や水辺に近い低木の林に自生するが,わが英国では自生せず,いくつかの庭にあるだけである.

*The Tyme.
They begin to springs in Februarie, and peelde their seede in Aprill, and in May the stalke with his leaves dothe bannith cleane away, but the roote remayneth in the grounde like yellow Crowe bells or bastarde Narcissus.
But the thirde kinde floweth not with the other twayne, but long after in April.
開花時期
二月に芽を出し,4月に種子を結ぶ.五月には葉も茎もきれいに消えてなくなるが,根は “yellow Crowe bells” や “bastarde Narcissus (Narcissus pseudonarcissus (ラッパズイセン))” のように地中に残る.
しかし三番目の種は他の二種と同じ時期にではなくずっと後4月に咲く

*The Names.
These pleasant flowers are nowe accounted for a kinde of violettes, which Theophraste calleth in Greke ####, thet is to say in Latine, Vola alba. Therfore it is now called Leucoin, or Viola alba Theophrasti: We may call it in Englishe, White Bulbus violet, Narcissus violet, and Theophrastus White Violet: in Frenche, Violette blance, in high Douch, Weiss hornungs blumen: in base Flamainge Witte Sprockel Bloemen, Soomersottenkens, and Witte Tijdeloofen.
名称
これらの好ましい花は,テオフラテスがシロスミレと呼んではいるがスミレの仲間ではない.それ故現在ではリュウコイン,あるいはテオフラテスのスミレと呼ばれている.我々は英語で,球根白スミレ,スイセンスミレ及びテオフラテスの白スミレと呼んでもよいであろう.

*The Nature.
The temperament and vertures of thes flowers are not yet knowne.
性質
この植物の気質や美徳(薬効,使い道)はまだ知られていない

とあり,スノードロップ,ハルザキスノーフレーク,スノーフレークを紹介し,スミレの仲間ではないので「シロスミレ」と言う名は好ましくなく,英語で  White Bulbus violet, Narcissus violet, and Theophrastus White Violet がよかろうと提案しているが,まだスノードロップの名は出てこない.また,英国では野生では見ることが出来ず,庭園で栽培されているのみとしている.形状や生育の季節変化の観察も鋭い.

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