2015年10月10日土曜日

クサレダマ-6 基本種 セイヨウクサレダマ-5,タベルナモンタヌス『新修草木誌 ”Neuwe Kreuterbuch” 』,リシマキア・ジャガイモ

Lysimachia vulgaris 
Neuwe Kreuterbuch
1731版 表紙
タベルナモンタヌス(Tabernaemontanus, 1525 - 1590)とも呼ばれるヤコブス・テオドルス(ヤコブ・ディートリッヒ,Jacobus Theodorus (Jakob Dietrich))は,外科医で初期の植物学者・薬草家であり,「ドイツの植物学の父」と呼ばれる.その図入りの『新修草木誌 ”Neuwe Kreuterbuch” 』(1581)及び,2255個もの木版画が掲載されている ”Eicones Plantarum”1590)は,彼の生涯をかけた植物学研究と医療行為の結実であった.

英国のジョン・ジェラードのよく知られている “Herball”1597)に使われている図の多くは,タベルナモンタヌスへの謝辞もなしに,その著作の版木から印刷したものだが,この人自身もそれらの図版のデザインを, Dodoens, Fuchs, de l'Obel 等の先行の本草書から拝借していた.

『新修草木誌』は17世紀を通じてドイツ語圏で度々復刻され,学生たちのよい教科書として広く採用された.彼のラテン語の名前(Tabernaemontanus)は彼の故郷の町,Palatinate Bergzabernの翻訳(文字通り「タベルナ山のある」)である.

タベルナモンタヌス は,ルネッサンス期の植物学のパイオニア,ヒエロニムス・ボックの弟子としてキャリアを始め,その頃の慣例に従い,ドイツ貴族の侍医を次々と務めた. 1549年には彼は Nassau-Weilburg の伯爵フェリペ3世の侍医となり,後には Speyer の司教 Marquard von Hattstein の侍医となった.その後,彼はドイツ帝国自由都市ヴォルムスの町の外科医を務めた.
彼はハイデルベルクで医師として,人生の最後の数十年を過ごし,三回結婚し18人の子供を残したと伝えられる.

彼の名は,フランスの植物学者シャルル・プリュミエ (Charles Plumier, 1646– 1704) が ”Nova plantarum Americanarum genera” (1703) で献名し(左図,BHL/Biblioteca Digital del Real Jardin Botanico de Madrid.),リンネが ”Genera plantarum” (1737) で採用した,亜熱帯原産の美しい花をつける灌木,キョウチクトウ科の Tabernaemontana属(サンユウカ属)に残されている.

図は,1731年版の『新修草木誌』より,リシマキア類の図で,[ ] 内は,前二記事のジェラルドの書での名称
I.             Lysimachia purple I,:[L. spicata, Spiked Willow herbe.] Lythrum Salicaria, L.(エゾミソハギ)
II.           Lysimachia II. Lutea,:[Lysimachia lutea Yellow Willow herbe.] Lysimachia vulgaris, L. (セイヨウクサレダマ)
III.         Lysimachia monor III, : No illustration in Gerald’s
IV.          Lysimcchia IV. siliquosa I.,[L. silicuosa Codded Willow herbe.] Epilobium hirsutum, L. (オオアカバナ)


V.            Lysimachia V. siloquosa II, : [Lysimachia syluarica, Wood Willowe herbe.]
VI.          Lysimachia VI. siloquosa III, : [Lysimachia campesiris, Wilde Willowe herbe.]
VII.        Lysimachia VII. siloquosa IV: [Chamoenerium Willow herbe with flowers like the Rose Bay.] Epilobium angustifolium, L. (ヤナギラン)

そのうち二番目の Lysimachia II. Lutea が,Gerald の書では "The first kinde of Willow herbe" つまり真のセイヨウクサレダマの挿絵として使われている.

またタベルナモンタヌス1585年に最古と思われるジャガイモの植物学的記述を残したとされているので,1731年版の『新修草木誌』より Papas Indorum の圖を示した.

なお,”Neuwe Kreuterbuch”1731)も”Eicones Plantarum” 1590) も著者名で検索すれば BHL経由で閲覧・DL できる

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