2011年3月5日土曜日

ヤマトタマムシ

Chrysochroa fulgidissima庭にフクジュソウ,クロッカス,ヒヤシンスなどが咲いているが,私にとって春の訪れを告げるのは,地面から覗く仔ウサギの耳のような(日本)サクラソウの芽.毎年,今年は出てくれるかなと気をもんでいるが,昨年は夏の猛暑と体調を崩したため水遣りが十分ではなかったので,今年の芽はことのほか嬉しい.
暖かった日に周りの草取りをしていたら,きらきらと輝くものが枯葉の間に.風で飛んできたお菓子の包み紙かと思ってよく見たら,タマムシの遺骸.死後相当経っているのか,頭と中身,ほとんどの足は失われているが,外骨格の大部分は原型をとどめ,その輝きはまるで宝石のよう.

標本で見たことはあったが,手にとって眺めるのは初めて.日光を受ける方向によって色を微妙に変えながらきらめく.腹部は背部ほど表面の構造が複雑ではないためか,つるっとした陰影の少ない金属光沢の青緑色.一本残った足も,その先端部まで輝いている.

こんなに目に付く色では鳥に見つかりやすく,食べられるのではと心配だが,「鳥は、『色が変わる物』を怖がる性質があるため、この虫が持つ金属光沢は鳥を寄せ付けない。」とのこと.そういえば,鳥除けのためベランダにCDをぶら下げていたり,畑や田んぼで金属光沢のテープを張っていたりするのは,鳥のそのような性質を利用したのだと聞いた.目立っても,嫌がられて食べられなければ,それでいいのだ.オオゴマダラの蛹やモルフォチョウもそれを利用しているのであろうか.

タマムシといえば玉虫厨子.教科書の写真では高さ60cmぐらいかなというイメージだったので,法隆寺で実物を見た時は大きいのにびっくり.そのうえ,ずっとタマムシの羽は下部の半球状の部分にはめ込まれているとばかり思っていたが,再現された玉虫厨子の写真を見ると,宮殿部の透かし彫りの飾金具の下に敷き詰められていた. 2008 年に岐阜県高山市の造園業中田金太さんが私費を投じて作製したこの復刻版には,タマムシの羽6622枚が使われたとの事.

思わぬ春の贈り物,今年はいいことあるかな.でも残骸なので中くらいかも.

0 件のコメント: