Saxifraga stolonifera (Syn.
S. sarmentosa)
花,三月咲.真ん中より蕨のごとく出て,花形,雪のごとし.葩(はなびら)三枚は小さく,二枚は大にして長し.花色.白.葉の形丸く,雪輪のもやうのごとくにして,あつし.葉のうら,若葉は本紅,古はは薄紅也.表に薄白き筋有.根下より長き蔓出て,先に,めがい生ず.地に根ををろす.」と,花のつくりや葉の模様,繁殖法など,よく観察されていて,簡明にして詳しい(左図,NDL).
葉を煠、水に浸し、塩またハ味噌・醤油に調、食べし。」と,飢饉時の調理法が紹介されている(右図).
(* 明和8 (1771) 年に『民間備荒録』と対になる書物として建部清庵によって草稿が書かれたが、果たせないまま世を去ったため清庵の死後、杉田玄白の次男杉田立卿により天保4年(1833)に刊行された。(明和8年刊行の『民間備荒録』の巻末には、「『備荒録草木図』一冊 未刻」と予告されている。)『民間備荒録』が理論的な書として書かれているのに対し、この書では実践の書として多くの人が読めるよう全体にわたって振り仮名がつけられている。内容は、104種の植物をとりあげ、実際の植物と見分けがつけられるよう詳細な図のもとに名称と可食部、調理方法を簡単に記述する。)
★小野蘭山『本草綱目啓蒙』 巻之十六 草之九 石草類 (1803-1806)には,「虎耳草 ユキノシタ キジンサウ筑前 イドバス泉州 キンギンサウ石州 イハカゾラ上野 イハブキ越前 〔一名〕金糸荷葉(汝南圃史)(中略)
梅園草木花譜 NDL |
★岡林清達・水谷豊文『物品識名』(1809
跋)には「ユキノシタ 虎耳草 金絲荷葉 汝南圃史」とある.
★毛利梅園(1798 – 1851)『梅園草木花譜』夏之部 一(1825 序,図 1820 – 1849)には,
「綿●(糸+系)艸(ユキノシタ)蔵記 又 虎耳草ハ ユキモヨウ 別種
「綿●(糸+系)艸(ユキノシタ)蔵記 又 虎耳草ハ ユキモヨウ 別種
増補多識編石草類ニ曰 虎耳草 和名 今按ニ 土羅乃美美(トラノミミ) 増補異名 石荷葉(セキカヨウ) 和漢三才図会石草類曰 虎耳草(ユキノシタ) 石荷葉 俗云 雪下莫(ユキノシタ)」と美しい写生図と共にある(左上図, NDL).
人家庭際に多く栽う 葉ハ円くして浅き鋸歯あり 茎葉共に紅色 又紅色の毛茸阿り 夏月茎を抽て花あり 白色三辧ハ小く二辧ハ大なり 後三尖ある蒴を結ぶ 根の傍紅色の長鬚を生じ末地に落つ 根を貼して苗を生ず」と,果実の記述もある(右図 NDL).
★加地井高茂 [編]『薬品手引草』下ノ七(1843) には,「虎耳(コジ)草 ゆきのした」とある.
草状啓蒙詳之衆亦通知.故ニ略之.萼披針上ノ五辧.ソノ二辧ハ長大ニシテ白色.三辧ハ短小ニシテ本ニクリコミアリ.白色ニシテ紅暈四ノ紅点(正しくは,黙の犬の代わりに占)二ノ黄点アリ.子室柯子状ニ顆並位シ.●(里+頁)柱ヲナシ●(里+頁)絻ニ開反.雄蕊十二ニシテ葯淡紅色.綻テ白粉ヲ吐ク.ソノ大辧間ニアル一茎ハ.徴扁大ナルモノ多シ.子室ノ前面ニ黄色帯緑色ノ蜜鱗アツテソノ本ヲ被ヒ.後面ハ然ラズシテ子室直ニ可見」 附全花郭大圖
按ユキノシタ.大文字サウノ類ミナ サキシフラガ ノ属ニ不外レトモ.未得的當種名」と,花や果実のつくりの記述はより詳しくなり,属名はリンネが命名したラテン名を正しく当てている(左図, NDL).
ユキノシタ (3/5) 耳の疾患への薬効伝承,方言,畸人草,キジンソウ
ユキノシタ(1/5) 本草綱目,丹方鑑源,多識編,訓蒙圖彙,和刻 本草綱目,花譜,大和本草,和漢三才図会
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