2010年9月23日木曜日

タマスダレ

Zephyranthes candida 南米(アルゼンチン・ウルグアイ・パラグアイ・チリ)原産のヒガンバナ科.John Lindley により1823年に Amaryllis candida と記載されたが,1826年に William Herbert によって現在の名前になった.日本には明治初め(ca.1870)に渡来.中国では、全草を薬用にするそうだが,アルカロイド(リコリン)を含むため,葉をニラなどと、鱗茎の部分をノビルと間違えての誤食は,おう吐、けいれんなどを引き起こす.
属名は、ギリシャ語の西風の神(Zephyros)と花(anthos)から.なぜ,Herbert がこの属名をつけたのかは不明.

日本では「東風吹かばにほひをこせよ梅花 主なしとて春を忘るな」と東から吹く風が春をもたらすのに対して,地中海人にとって、樹に花を咲かせ実りをもたらす春の風は,西から吹く風である.

多産な畑は生命に溢れ、暖かな西風のそよぎに
野はその胸をひらき、しっとりとした湿り気がすべてを満たす。
若草は新生の太陽に安んじてその身を委ね、
葡萄の若枝は、南風の襲来も、また、烈しい北風に
空を追われてくる嵐をも恐れることなく、
勢いよく芽をふき、ことごとく菓を広げる。
わたしは思う、世界が生まれつつあったときも、
毎日、このような陽が輝き、このような情景が見られたのだと。
その時は春であった。

ウェルギリウス(紀元前70年- 紀元前19年)『農耕詩』II. 330-338

Then the boon earth yields increase, and the fields
Unlock their bosoms to the warm west winds;
Soft moisture spreads o'er all things, and the blades
Face the new suns, and safely trust them now;
The vine-shoot, fearless of the rising south,
Or mighty north winds driving rain from heaven,
Bursts into bud, and every leaf unfolds.
Even so, methinks, when Earth to being sprang,
Dawned the first days, and such the course they held;

Publius Vergilius Maro (BC70 – BC19) “Georgics”II. 330-338
From “The Project Gutenberg EBook of The Georgics, by Virgil” http://www.gutenberg.org/ebooks/232



ルネッサンス期のイタリアの画家サンドロ・ボッティチェリの傑作『ビーナスの誕生』では,西風の神ゼピュロスは,貝殻のうえに立つビーナスを岸へと吹き送り,ゼピュロスの妻,花の女神フローラは,誕生を祝って春の花をその風に載せて撒き散らしている.

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