2011年7月15日金曜日

ギンセンカ(2/2)増補地錦抄,大和本草,絵本野山草

Hibiscus trionum

江戸時代の園芸書には度々取り上げられているが,今では殆ど一般には見ることの出来ない花の一つ.金銭花(ゴジカ)が金朱色なのに対して白いので,銀銭花(ギンセンカ),あるいは,早朝に咲いて直ぐしぼんでしまうため朝露草(ちょうろそう)と名づけられた.
慶応大学 磯野 直秀によれば,日本に入ってきたのは英国と略同じ15世紀以前と思われ,明応1年(1492)の『山科家礼紀』に宮中での立花に使用との記事があり,また延宝1年(1673)に狩野常信が写生して,『常信写生図巻13』にその図が残っている.江戸時代には多くの園芸書に記載され,広く愛されていたことが分かる.特にはかない花が賞されていたようだ.

伊藤伊兵衛『増補地錦抄』(1695) 巻之七 朝露草(てうろさう) 花形草立共木綿の木に似て花うすしろく花中くろべに色朝にひらき夕にしぼむ其つき成花叉朝にひらきさかり久敷物なり(左図)

貝原益軒『大和本草 巻之七 草之三』 (1709)
銀銭花 花鏡農圃六書等ノノセタリ午時紅ノ花白キ也茎葉少異レリ京都北野ニアリ北野ニテモ銀銭花ト云 金銀共ニ好花ナリ何レモ冬ハ根枯ル春實ヲマキテ生ス金銭花ハ多ク銀銭花ハ少シ也
貝原益軒『大和本草諸品図上』(1709)(左図内右下)

橘保国『絵本野山草』(1755)
銀銭花 朝露草ともいふ はなのかたち、かうそ(注トロロアオイ)のことく、花は秋葵(かうぞ)(注トロロアオイ)より小し。いろ、白青きうるみ色。花、底黒べにのきほひあり。葉、五つ出、三つて有。葉のきれ、西瓜(すいくは)の葉に似たり。長一二尺ばかり。えだもあり。朝にひらき、ゆふべにしぼむ。その次なるはな、又朝にひらく。秋葵の類也。又金銭花(注ゴジカ)に似たり。六七月まで、はなさく。 (右図)

我が家の庭には 1997 年に現れて,2年ほどコボレダネで生育したが,その後消えた.最初葉を見た時は,捨てた種から出たスイカの若菜かと思ったが,中国*でも,また『絵本野山草』でも同じように感じているのを見て興味深かった.蕾や,花の終わった後の膨んで縞の入った実の形もスイカに似ている.長年維持するのは難しいようで, Gerard が「毎年自分の庭では咲いている」と自慢するのが分かる.
現在でもわずかに野生化したものが見られるが,お茶花などに好まれるなど珍しさもあり,苗や種が園芸店で販売されることもあるようだ.

*中国では野西瓜苗と呼ばれ,別名は香鈴草、小秋葵、打瓜花、山西瓜秧.中国全土で雑草化している.

ギンセンカ(1/2) Geralde, Parkinson, Curtis

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