2010年5月15日土曜日

カンアオイ(寒葵)

Asarum nipponicumご近所の方から頂いてもう10年以上.裏の通路脇に生存していたが,ほとんど気にもしていなかった.このブログを書き始め,はたと「カンアオイの花は」と葉をかき分けてみたら,結構な数の花を見つけた.開花期は秋から初冬にかけてなので,形状は留めているものの,既に実になっているものと思われ,切ってみたらスミレの種のような種がぎっしりと詰まっていた.花よりは葉の方が観賞価値が高い.我が家の庭でも2種類の葉の模様の個体が見られた(写真右下).葉を切るとカンファー様の香りがする.

地面すれすれに咲くこの花の”花粉媒介者”としては,小形のナメクジ・カタツムリ,ヤスデや小形のムカデが挙げられていたが,日本産のタマノカンアオイと,アメリカ産のフタバアオイの仲間で別々に,花が腐蝕臭を出してキノコバエを呼んで花粉を運ばせているという研究が発表された.キノコバエは豪州の地面の下で咲くラン(アンダーグラウンドオーキッド)の”花粉媒介者”であると言われている.
成熟した種はその場で落ちて発芽するので,自然界での分布を拡げる速度は遅く,従って地域的な進化や変異は非常に大きいと考えられ,多くの変種が認識されていたが,最近の遺伝子解析で必ずしもそうではないとの知見がでているそうだ.

中国ではウスバサイシンの仲間の根と根茎を乾燥したものを「サイシン(細辛)」,カンアオイの仲間の根と根茎を乾燥したものを「土細辛」とよび薬にし,日本でも漢方薬として使われることがある.

日本では,江戸時代に”斑入り青軸”のカンアオイを珍重して「細辛」とよび,色々な変異種が愛玩された.現在も江戸時代からの品種が栽培され,その後に発見された品種を加えた「細辛銘鑑」(番付)が愛好家の間で作られている.

おまけは Curtis Botanical Magazine (英) 1840年のタイリンアオイの図譜(石版手彩色).

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