2010年5月28日金曜日

セイヨウノコギリソウ

Achillea millefolium

Thou pretty herb of Venus’s-tree,
Thy true name it is Yarrow;
Now who my bosom friend must be,
Pray tell thou me to-morrow.
-Northall, 113

英名は“Yarrow”,学名のAchilleaは、ギリシャの英雄アキレスに因む.トロイ戦争の時、敵将Priamの婿Telephusがアキレスの槍で傷を負ったとき,Telephusは「アキレスがその傷を治す」との神託をうけ,アキレスに治療を依頼した.アキレスは自分の槍のさびを削り取り,そのくずから生いでたノコギリソウでその傷を治したという.また,これとは別にアキレスが治したのは部下の傷だったという話も伝わっている.いずれにせよ,古くから傷の万能薬とされ,戦傷とのゆかりから「戦争」の象徴ともされている.millefoliumとは「美しい葉」のスカンジナビア語由来とか.

葉はもむといい香りがして,いかにも薬草として効果がありそう.10年ほど前に頂いてから,地下茎を伸ばしてどんどん勢力範囲を広げている.葉は美しく,花も人目を引くがその生命力にはあきれ気味.

薬草としてか,観賞用としてか,5万年以上前のネアンデルタール人の身近に存在していたと考えられている.
イラクのシャニダールで発見されたネアンデルタール人の住居の洞窟で,埋葬されたと思われる人骨の周りから,何種類かの植物の花粉がまとまって発見された.その場所は洞窟の入り口から遠いので,風等の自然の力で集まったのではなく,死者を悼むために,一緒に埋めたなのものだと考えられている.その花粉の一つとしてノコギリソウの花粉が同定された.他の植物もマオウを除いて美しい花をつけ,またいくつかは現在でもハーブや食用として使われているので,呪術的な意味があったのかも知れない.

図は数年前地元の自然観察会の講話に使ったスライド.

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