2010年5月16日日曜日

エビネ

Calanthe discolor sp.
日本原産のラン類の中では鑑賞性の高い花を持つ種の一つ.古くから栽培されていたが,江戸時代に育種・鑑賞された,いわゆる「古典園芸植物」ではない.

17世紀末に出版された園芸書『花壇綱目』にはエビネの栽培法が記されている.また,『花譜』に簡単な記述,『大和本草 諸品図』には可愛らしい図(左)が載っている.
一方,『和漢三歳図会』では藜蘆(りろ,ホソバシュロソウ)と同じ項に記載され,毒草類に分類されている(中村学園のHPより引用).


60年代末からの山野草ブームの一つとして70年代後半にエビネブームが起き,各地で展覧会が開かれ,雑誌が発刊され,古典園芸植物や東洋ランに倣ってたくさんの品種が命名された.その中には高額で取引されたものもあったが,エビネ属はウイルスに侵されると観賞価値が著しく下がり,東洋ランのように投機対象にできるほどの栽培安定性は無かった.ウイルス防除の煩雑さに疲れた趣味家が次々と撤退し,このブームは十年を待たずして終焉.現在では山野草の中の一ジャンルとして安定した位置にあるとの事.

それでも愛好者は多いと見え,近くのホームセンターでは一年に一度,多数のエビネ類を展示・即売しているが,その中にはかなり高価な株もある.そこで「庭用エビネ」として安価で売られていたのを購入.適地を求めて3度ほど移植を行っているので,ご機嫌は良くない.

おまけは Curtis Botanical Magazine 1888年のキエビネ Calanthe striata の図譜(石版手彩色).

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