2010年5月24日月曜日

番外編 わら人形遊び

わら人形遊びの正体
スイートアリッサムの項で記した,バルセロナでみた不思議な行事.「スペイン探偵団」の掲示板にした質問に対してセビリアに滞在中の池田さん(HP http://mrikeda.blog99.fc2.com/)からご丁寧な回答を頂いた.コメントを抜粋引用すると,

この遊びは,主に19世紀に女性たちが,思う限りの悪口雑言を言いながら歌いながら行った「(男性の)藁人形を毛布で放り上げる胴上げ」 (manteo del pelele) 由来で,古い,人間や犬を毛布で放り上げる悪戯が,カーニバルの行事に変わったもの様です.

中丸 明氏の「スペインを読む事典」(278頁)に pelele について以下のように書かれていますが、これを読むとスペインでのこの習慣の意味が分るような気がします。

『ドン・キホーテ』前篇17章で、主人公ドン・キホーテは、遍歴の騎士たるものは宿賃を払う義務はない、とさっさと出発してしまう。貧乏クジを引いたのがサンチョ・パンサだ。宿の亭主と同宿の男たちはサンチョを裏庭に引きずり出すと、毛布の真ん中にころがし、その端をしっかりつかんで、カーニバルのときに犬を投げ上げて楽しむように、彼を宙高く毛布(ケット)上げにしたのである。
 カーニバルになると人々は家の出窓に藁人形を吊るす。この人形をペレーレという。「デクノ坊」とか「役立たず」の意味もある。女房の尻に敷かれている男もペレーレだ。
藁人形を毛布上げにする風習は、ゴヤも『あやつり人形』という作品に残している。
 毛布上げされるのは藁人形だけではない。犬も猫もさんざんな目にあう。ロバの尻尾に藁人形をくくりつけ、火をつけて追いまわすといったこともやる。
 この、ペレーレを宙高く上げる遊びをスポーツ遊戯に取り込んだのが、フランス人のリュー・トランポリンだ。ペレーレに始まったトランポリンが、第二次大戦中、米空軍によって操縦士の適正テストに使われていたと知ったら、サンチョは仰天するだろう。

マドリッドの Pozuelo de Alarcón での行事の動画が以下のサイトで見られ,最後に伝統にのっとり?藁人形は燃やされてしまいます。
YouTube - Manteo del Pelele - La Poza ( http://www.youtube.com/watch?v=F4FK_j817yA&feature=player_embedded )

池田さん,ありがとうございます.こんなときにつくづく w.w.w. のありがたさが実感できる.



という事で,行事のオリジンは,かなり残酷な,リンチの要素も含む遊びであった事が分かり,ゴヤが《女の妄》として取り上げた訳も理解できそう.使っている毛布の図柄や,上げているのが子供の様に見えるのにも意味があるのだろうか.
上は,ドン・キホーテの従者サンチョ・パンサがケット上げされる場面の挿絵,ゴヤの《わら人形遊び》(1791-92),銅版画集『妄』より《女の妄》(1746-1828)のイメージ.

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