Althaea rosea (3)
白き指に紅のにじみてなまめけるにほやかさもて咲く葵かな 木下利玄
花の形や色や模様の変異は多いが,葉の形もいろいろで,五角形に近いものからとんぼ型まで.特に米国から渡来のは複雑な形をしているようだ.
(承前)
☆「大和本草」貝原益軒 宝永6年(1709)
蜀葵 からあふい 花として淡紅,浅紅,紫,黒,白,一重,八重があるが,鮮紅が観賞用には最もよい.茎皮から縄や布が造れ,茎を焼いて灰とすると火種が長持ちする.と記載.
☆「和漢三才図会」寺島良安1713年頃
蜀葵 からあふい 「大和本草」より詳しく,薬効にも言及.枕草子の「からあふひ、日の影にしたがひてかたぶくこそ、草木といふべくもあらぬ心なれ」を引用.他に葵類としては葵(フユアオイ),錦葵(ゼニアオイ),兎葵(ウスベニアオイ?),黄蜀葵(トロロアオイ)龍葵(イヌホオズキ)が記載されている.
☆「広益地錦抄」伊藤伊兵衛 1719年
巻之四 薬種
「蜀葵 しょくき 今花壇にうゆる大あふいのことなり 花はいろいろ品あれ共薬種にハ紅白花さくを用ト云 花のさかり久しく下より段段花ひらき末までさきてのほる俗にいふ此花末迄さきてのぼり極る時節梅雨の終わりなりといふ 茎を水にひたしてかわをさりてタイマツにしてよく火をとほるなり」.
巻之八 花木草花
「立葵 たちあおい 根は芋に似てほそ長く丸し叉欝金草の根のごとく初春に葉を出す五六寸ほどの小草なり葉形あふひの葉に似て茎に三葉ツツ出る葉のうへに花さくはなの董三数あり色青し叉うへに花三出にさくはなの色白し二月すへよりひらくきれいなる草たちなり小鉢に植てよし」(図は左)
☆「地錦抄附録」四世伊藤伊兵衛 1733年
記述なし
と園芸書に記載が多く,江戸時代に非常に広く栽培され,珍重されていたことが分かる.またこの時点では立葵は図にあるオオバナノエンレイソウをそう呼んでいた可能性があると思われる.